あらすじ
仙台の大学に通う爽太には秘密があった。9歳のころに海で溺れ、遠い未来――2070年の世界へと時を超えて迷い込んだことがあるのだ。現代に戻ったあとも、未来で助けてくれた女性を忘れられずにいたが、アルバイトがきっかけで知り合った八宮和希という青年に「おれは過去から来た人に会ったことがある」と告げられて…? 出会いと願いを描いた感動作!
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Posted by ブクログ
例えば映画などでは、続編が面白くないことが多いのですが、この小説はどっちも本当に面白かった…! あんなにいっぱい涙腺を刺激されたのは初めてだし、やっぱり阿部暁子さんが書く文章も、キャラクターも大好きです。
登場人物たちは、みんな自分のことだけじゃなくて、ほかの人のことも想える素敵な子たちばっかりで、みんなのその後の物語をもっと見たいと思いました。
同じ言葉でも、その言葉を発した時の登場人物の心情を知ってから見ると、もっと違う深い意味がある言葉に感じられました。
登場人物それぞれが自分の想いを吐き出すところで、どれも理解できるからこそどれが正しいのかが私も分からなくて、ものすごく考えさせられました。いろんな感情に振り回されたけれど、なんだか視野が広がった気がします。
また、爽太たちの未来には希望があるのに対して、時折ちらつく和希の七緒への想いが本当に綺麗なのにとても切なくて、それがすごく残酷で、胸がきゅっと苦しくなります。
謎だった部分が少しずつ繋がっていくごとに、もっと先を読みたいという焦って読み進めようとする気持ちと、隅から隅まで全部の言葉をじっくりと読みたいという気持ちがぶつかって辛かったです。
ちょっとした違和感があるなあと思っていた部分が何気に伏線になっていたりしてびっくりしました。だけど、謎のまま終わった部分もいくつかあるのでちょっぴり残念。
Posted by ブクログ
再々読です
再読する度に胸が締め付けられます
未来の五鈴が幼い爽太にヴァイオリンを優しく教えている時、彼女はどんな想いで彼に向き合っていたのだろうか。少し憂いを帯びた優しい眼差しだったろう。ありがとうとか。今度はわたしが救う番だと記憶がフラッシュバックしたに違いない。
未来の五鈴は高校生の時に大学生の爽太から聴いて救われた演奏を何も知らない爽太に聴かせて、震災孤児で人生のどん底だった爽太の心を救った。未来から戻り大学生になった爽太はヴァイオリンを諦めようか煩悶している高校生の五鈴に、未来で自分の心を救ってもらったのと同じ曲を弾いて聴かせて五鈴の心を救った。そして時が経ち二千三十年の五鈴が…と繰り返す。
俺は入れ替わりで戻ってきたと信じたい
爽太と五鈴には幸せになってほしい
また再読します
Posted by ブクログ
育ての親や姉との関係が修復されるなど、前作よりは主人公の過去の暗さにまだ救いがある点は良かったけど、前作の和希の方が人物として魅力的で、今作でも和希のピアノの能力とか、幹也の変わらぬ乳母っぷりとか、そちらの方により感情移入した。タイムトラベルの真実が判っていくところなど、ストーリーは今作の方が楽しく読めたが、高校生の五鈴と大学生の爽太の出会いから心を結ぶまでのシーンには無理があるため、もう少し丁寧に描いて欲しかった。
Posted by ブクログ
支倉爽太
クラブ「アルファルド」でバイトを始める。ヴァイオリンを弾く。小学三年生の時、行方不明になった。両親は津波にのまれて亡くなった。
尾崎幹也
支倉の一歳年上。クラブ「アルファルド」では二番目に若い。東北で一番有名な難関国立大学に通っている。法学部。
八宮和希
クラブ「アルファルド」のピアニストが退職したため、代わりにピアノを弾いた。幹也の同居人。
西城まどか
爽太の八歳年上。仙台市内のIT系企業で働いている。
日野原圭
爽太と同じ大学。美術室の石膏像みたいな男。チェロを弾く。
早坂千晴
爽太と同じ大学。ヴィオラを弾く。
高泉
室内楽サークルの代表。
林
圭、千晴と四重奏のメンバー。
西城のおばさん
爽太の母のいとこ。爽太を引きとる。
ユウタ
西城のおばさんの息子。爽太と同い年。津波にのみこまれ遺体で見つかった。
西城のおじさん
町立病院の医師。
諏訪五鈴
溺れていた爽太を助ける。
ソノコ
五鈴のヴァイオリンの生徒。
マリエ
魔女っぽい雰囲気の持ち主。「喫茶もかまたり」の店主。
レイモンド・ハウィントン
「喫茶もかまたり」の男性客。市内の小学校の英語の先生。
五鈴の夫
溺れた五鈴を助けるために海に飛び込んだが波にのまれてしまった。
七緒
和希が高校時代に過ごした離島で出会った同い年の女の子。
高津椿
彫刻家。
野木じい
Posted by ブクログ
阿部暁子さんの作品。
仙台の大学に通う支倉 爽太は、人には言えない過去を抱えていました。小学校三年生のとき、溺れたことがきっかけとなり、なんと遠い未来――2070年の世界へ時間を超えて迷い込んでしまったのです。現代に戻った後も、その「未来で助けてくれた女性」のことを忘れられず、大学とアルバイトに明け暮れていました。
あるとき、爽太はアルバイトを通じて知り合った青年の八宮 和希と親しくなります。和希はある日、爽太にこう言います――「おれは、過去から来た人に会ったことがある」。この言葉をきっかけに、爽太の“過去/未来”という時間を超えた記憶と、和希と結びつく“今”の出来事が交錯し始めます。
前作の『どこよりと遠い場所にいる君へ』の続編となります。でもわたしは前作より好きかな。
やっぱりタイムトラベルもののラブロマンスは、時空の旅の果ての後でふたりが結ばれる話が良いです。そして、この話のヒロインである五鈴の気持ちも痛いほど伝わってくるから。
読み終わってからタイトルを味わうと感慨深いです。『また君と出会う未来のために』。