【感想・ネタバレ】語り継ぐこの国のかたちのレビュー

あらすじ

ベストセラー『昭和史』の著者が長年考え続けた思索の集大成。
無謀な戦争へと至るあやまちの系譜。
明治から現代につづく激動の時代をひたむきに生き抜いた人々のすがた。
歴史のなかに残された、未来への手がかりをさぐる。
困難な時代に立ち帰るべき原点。

*電子版では、内容の一部を収録しておりません。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の過去に起こった戦争。
それをただ単に
過去の事象として見ていくのではなく
それらを きちんと教訓としていくべきであると
著者は語っている。

戦争中は 戦果が悪いのにも関わらず
不都合な事実は上に伝えない。
他国の武器の向上を知りつつも
改善しなかった。
敵が自動式銃を使っていたのに
日本は旧式の銃だった。
それは 三八式銃の玉が沢山作ってしまっていたから。
(そんな理由で?!)
戦車など 敵は厚い鉄板だけど日本はぺらぺら。
当時の偉い人達は そういう他国の情報など
知らなかったというのではなく
知っていたのに 無視して今までの事に固辞していった。
更に 底知れぬ 無責任さ。
精神論で勝てるだろうと 思っていた上層部。
そして計画が失敗しても 責任を取らされず
忘れたころに また 参謀に戻るという状況。

こういうのを読んでいくと 今と変わらないじゃないですか。。

本書の中に ジャーナリストの 石橋湛山(いしばしたんざん)さんの事が書かれていました。私は知らない人でしたけど 東洋経済新報社の方で 正しい事をキチンという 凄い人だったようです。

昭和の前の 大正10年ころに書いた論文では 植民地を手放そうというものだったそうです。もし日本がそういう事をすれば ヨーロッパ諸国は驚くだろうし 弱小国は喜ぶ事だったし 自由主義国家 日本という 立場が確立できたでしょう。
日清戦争後 皆がもろ手をあげて 喜んでいた時に こういう風に将来を見据えた事を言えた人は 凄いですね。
現在にもいて欲しい人ですね。

作家の小泉信三さんの事も書かれていました。
この方も私は知りませんでしたが 凄い人のようですね。
フェアプレーについて 公明正大に勝つために全力を尽くし 勝った時には奢らず負けた時は粛々と負ける。そういう事を 若い人に伝えていた人だったようです。
著者が ボート選手だったから 特に伝えたのかもしれませんが。

最後に この本のタイトルである 語り継ぐこの国のかたちについて
司馬遼太郎さんの言葉などを混ぜて書かれていました。
戦争が始まったのは 憲法の解釈を変えて軍が突っ走ってしまった。
そして今この日本も危ない方向へ進んでいるのではと お二人は憂いています。
昔ながらの良い日本にと。。。
美しい日本の風景をもうこれ以上壊さない。
トトロの時代を懐かしく思うだけではなく 自然を大切にして
家族を大切にしていた あの時代に・・・・

半藤さんのような方が どんどん 亡くなってしまって
私たちは 誰の背中を見て行けばよいのでしょうか?
将来 こういう書籍が読めなくなうような 世の中にならない事を願います。

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2022年01月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

タイトルを見て違和感を感じたのだが、やはり司馬遼太郎著「この国のかたち」を引き継ぐという意味が込められていた。
本書を読むことで、なぜ著者が昭和史にこだわってこられたのかを理解することができた。そして、今の政治に対するメディアの在り方が非常に悪く、信念を通すメディアの登場を切に期待する。また、今の時代はSNSを通して誰でも発信することができる時代であるため、自分でも知識を高めて、この国が将来どうあるべきかを真剣に考えて発信していきたいと思う。

さて本書であるが、エッセイ風に明治、大正、昭和と歴史とともに語り継がれている。前半では明治天皇の和歌を通して日露戦争を振り返る。その後の太平洋戦争までは参謀本部を通してなぜ暴走してしまったのかが記されている。
そして第二部では陸奥宗光による信念を貫くために死を賭した外交、軍部が力をつけていく中でもメディアとして真実を伝えるために戦い続けた石橋湛山、小泉信三を取り上げ、現在のメディアの不甲斐なさを嘆かれている。
最後には、子供や孫たちに日本の原風景である自然を残すことの重要性を宮崎駿氏「となりのトトロ」を取り上げて主張されている。

また、私は多くの司馬遼太郎ファンと同様に彼の歴史小説は全て読破したが、今の日本のベースとなった昭和史の作品がないことに非常に不思議でもあり残念でもあったが、その謎がやっと解けた。司馬遼太郎氏が昭和史を書くために参謀本部、その中でもノモンハン事件に注目して、様々な調査をしていたにも関わらず、最後まで小説を書かなかったという事実が記されている。
そして昭和史をより理解するために、半藤一利氏の小説をこれから読んでみたいと思う。

0
2019年07月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

第二次世界大戦へといたる日本人の「過ち」の半藤一利なりの捉え方。

15歳のときに8月15日の終戦をむかえた半藤にとっては、いろいろな命題がある。
・薩長がつくり薩長が滅ぼした
・統帥権の問題は、帝国憲法制定の前から埋め込まれていた
・日本人固有の心性として、根拠なき自己過信、驕慢な無知、そして底知れぬ無責任という3つがあった
・海大、陸大の軍人の育て方に問題
・もともともっていた指揮官のイメージと参謀の関係が問題だった
・明治天皇は、対外的な問題をよく理解していた。昭和天皇には、情報がよく入らなかった
・第二次大戦で死んだ軍人のほとんどは餓死だった


後半は、陸奥宗光を通じて、外交上の取り組みがどのように厳しいものだったか、また、石橋湛山を通じて、小日本主義といった当時のおかしな日本の精神のあり方に対する反発心の例も示している。メディアや知識人のありかたとしては、小泉信三の名前も上がっている。ある種の「気概」や「気骨」といったものだが、日本人の弱さというのは、とどのつまり、自らを相対化できないということではないか。

そして、まさに題名にもなっている「この国のかたち」。これが「国体」に対応した概念であることは指摘されて初めて気がついた。天皇を中心とする政治秩序を国のありかたと同一視するのはやや無理があるというのが率直な印象だが、それくらい第二次大戦当時の考え方として「国体」というのが何にも増して重視されていたというのは驚くべきことだ。

司馬遼太郎が晩年に希望をもつとすれば国民が自然をこれ以上破壊しないという一点だと述べていたようだが、そのあたりは、確かに期待してよいのではないか。

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2021年08月07日

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