あらすじ
教科書や通史は退屈だという人へ。東京大学史料編纂所教授が教える、新しい歴史の愉しみ方。たった漢字一字から歴史の森に分け入る、新感覚・日本史講義。日本史はまだまだ奥深い。
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いやー,わたしは面白かった。こういう切り口の本は,とても読みやすくて,ニホンの歴史を縦に眺めることが出来る。
ます,印象的だったのが,「それが史実かどうかばかり突き止めようとしての仕方がない」というような著者の姿勢である。
青砥藤綱が本当に引付衆のひとりだったのかわからないし,そもそも彼が実在したのかどうかもわからないのですが,しかしこうした逸話が伝わったということは,当時の幕府に「銭の信用を維持することが大事」という意識があったことを示しています。(本文,p19)
もしも鎖国がなかったと考えるなら,ペリーがやってきたときに,あれだけ日本人が驚いたり,世界情勢にいかに対応するかという問題意識を持つことはなかったでしょう。(本文,p247)
まさに,歴史の見方考え方を教えてくれる本である。
あと,つけ加えておきたいのが,ヘーゲルの「自由の相互承認」についてもふれられていたことだ。それは,自分の師匠・石井進氏の歴史の見方考え方を紹介する場面でのこと。
そうした自由の相互承認を通じて,つまりお互いの権利を認め合うことによって,人が暮らす自由な空間が広がっていく。その概念と,石井先生の言う中世の拠点理論は,重なっているように感じます。(本文,p178)
細菌,苫野一徳先生の本を読んで,ちょうどこの考え方に触れていたところなので,同じ言葉が出てきてビックリした。つながっているなあ。
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新書を乱発している本郷先生の最新作。10のテーマに基づき日本史が語られます。それぞれ興味深いのですが、他と重なる話が多いのが気になるところ。そろそろ一休みのタイミングでは?
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歴史を学ぶとは、考え続けること。
歴史は繰り返すということで学ぶのではなく、歴史を学ぶことで選択肢を増やすことができる、とハラーリも書いてたと思います。
いい本でした。
Posted by ブクログ
漢字一文字のお題から、本郷さんが日本史のあれこれを教えてくれる本。お題は順に、信血恨法貧戦拠三知異の10章。歴史が好きならどの章も面白い。
個人的に血の葛西清重の話、法の法よりも権力が強い日本社会、貧の東西格差問題、知の最澄空海のとこが興味深くて面白かった。コテンラジオ聞いているから最澄空海の話は解像度高い状態で読めました。
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ある一文字をテーマにとって、著者が歴史で語り尽くすといった形式の一冊です。あちこちに話題が飛び、そのお話が勉強になるものだから、とても楽しい読書体験となりました。
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うーん、今まで信じてきた歴史が、実は違った…なんて。
よくあることですけど。
既に起こったことなのに、後世の研究で過去が変わるということが面白い。
今年の大河、どうなるんでしょう。
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実証的な歴史の専門家が、たまには自分の思ったことを好きなように喋りたい、ということでできた本なのだろう。様々な角度から歴史を見直してみることの面白さが味わえる。ただこうした本の性質上、ずいぶん脇の甘い発言も多い印象。
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教科書の欄外にあるような豆知識ではなく、太字になっているようなメジャーな人物、事件の見方を変えてくれる。歴史を学ぶとはどういうことか、考えさせてくれる良書。
冷静に、分析的に、特に戦争関連について考える
「乾いた目」という表現が何回か出てくるのが印象に残った。
Posted by ブクログ
歴史とはもちろん、過去を知る学問ではあるだろう。でも来し方を知り、考えることが行く末を思うことにつながるということを深く考えさせてくれた一冊だと思う。面白かったねぇ。歴史って、知識とか教養という面で意味があると、漠然とながらどこかで思っていた気がする。本書を読むと、それをいかに生かすか、日常の仕事への姿勢を考えるか、大きく助けになる存在であるように感じた。
日本では、知の巨人が生まれなかった、とか、世襲の生ぬるさがあってはいるだろうけれど・・・なんてあたり、いろいろ考えさせられたね。今ある身の回りから、ここまでやったら、もういいだろう、なんてことは通用しないんじゃないか、と思えたね。俺自身、世襲で今の仕事やってるけどさ(苦笑)。ここから先、自分がどこに、どこまで進めるか。考えさせられるだけ、強い刺激になったと思う。
Posted by ブクログ
本書は、河出書房新社の藤崎氏から一字の題を出してもらって、著者がほぼ即興で話を展開するやりかた。いわば落語の三題噺のように客席から『お題』を出してもらい、それを取り込んで即席で話を展開するのと同じ手法で、本の編集をしたそうである。
著者曰く、「一つのことをひたすら追い求める、という緊迫感には欠けるが、多方面に茫洋と広がる心地よさは演出できたのではないかと自賛している」
<目次>というか、取り上げたテーマは、
「信」「血」「恨」「法」「貧」「戦」「拠」「三」「知」「異」
上記の言葉をテーマに話が多岐に渡り展開していくのが、これまでにない歴史の切口として面白い。
特に「異」に関しては、著者の主張が熱く繰り広げられる。
異とは外国のことであり、古代~中世においては唐・宋等の中国であり、中世戦国においてはキリスト教の欧州の国々であり、幕末においては黒船、戦後においては米国を中心とする連合国である。
異と接触した時にのみ緊張し改革や革命が起こるが、異との接触をしない合間は、平和な世襲制がはびこった「ナアナア的」な中だるみ状態が続く。
また著者は、異との接触の一例として、中国から科挙を取り入れなかったためエリート官僚が育たないで貴族が官僚を兼ね、それが世襲制に繋がり、現代まで影響していると糾弾する。
面白い話として、哲学者のコジューヴが、パリの高等研究実習院で、「人間の歴史は日本の歴史を見ればわかる」と講義している。
どういう意味かと言うと、日本の歴史を見れば人類の歩みがわかる。なぜかというと、日本は異との戦争がない。つまり侵略されたことがほとんどない。だから「人間が侵略されずに、自然状態のまま進化していくとどうなるか」ということを知るためには、日本の歴史が貴重な例になる。「世界が学ぶべき日本史の価値はそこにある」
ただ、著者は言う。「しかしその反面、激烈な歴史はない。日本では虐殺のようなことは起きず、むしろ貴族社会のように非常にぬるい歴史がある。これは私が繰り返し言ってきたことですが、そのために日本社会では、才能の抜擢があまり見られないで、世襲制が幅を利かせている」と、世襲制には手厳しい。
以前に読んだ丸谷才一と山崎正和との対話した「日本史を読む」では、「日本と中国との関係、というより関係の不在の歴史であった。関係より関係の不在が、より多く日本を作ってきた」とその不在が日本文化の形成に非情に良かったと評価している。
皆さんはどちらの考え方に共鳴しますか?
Posted by ブクログ
日本史学の入門書的なものはいろいろ最近出ていますが
ちょっと今までのものとは毛色に違ったもので、面白く思いました。
日本の国というものがいつぐらいに固まったのか?
権力の形がみえてきたのがいつごろか?
平安時代や戦国時代の地方政権については幼稚で
発展性のない政権であるとの認識も、なんとなくわかる
感じもします。
総体的には面白く読めました
Posted by ブクログ
売れっ子の中世史研究者による歴史エッセイ的な本。学術的な検証は置いておき、「考えたこと」をつらつらと記している。あえて批判する気は無いし、こういう本もあっていいかなと思う。