【感想・ネタバレ】考える日本史のレビュー

あらすじ

教科書や通史は退屈だという人へ。東京大学史料編纂所教授が教える、新しい歴史の愉しみ方。たった漢字一字から歴史の森に分け入る、新感覚・日本史講義。日本史はまだまだ奥深い。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は、河出書房新社の藤崎氏から一字の題を出してもらって、著者がほぼ即興で話を展開するやりかた。いわば落語の三題噺のように客席から『お題』を出してもらい、それを取り込んで即席で話を展開するのと同じ手法で、本の編集をしたそうである。
著者曰く、「一つのことをひたすら追い求める、という緊迫感には欠けるが、多方面に茫洋と広がる心地よさは演出できたのではないかと自賛している」

<目次>というか、取り上げたテーマは、
「信」「血」「恨」「法」「貧」「戦」「拠」「三」「知」「異」
上記の言葉をテーマに話が多岐に渡り展開していくのが、これまでにない歴史の切口として面白い。

特に「異」に関しては、著者の主張が熱く繰り広げられる。
異とは外国のことであり、古代~中世においては唐・宋等の中国であり、中世戦国においてはキリスト教の欧州の国々であり、幕末においては黒船、戦後においては米国を中心とする連合国である。
異と接触した時にのみ緊張し改革や革命が起こるが、異との接触をしない合間は、平和な世襲制がはびこった「ナアナア的」な中だるみ状態が続く。

また著者は、異との接触の一例として、中国から科挙を取り入れなかったためエリート官僚が育たないで貴族が官僚を兼ね、それが世襲制に繋がり、現代まで影響していると糾弾する。

面白い話として、哲学者のコジューヴが、パリの高等研究実習院で、「人間の歴史は日本の歴史を見ればわかる」と講義している。
どういう意味かと言うと、日本の歴史を見れば人類の歩みがわかる。なぜかというと、日本は異との戦争がない。つまり侵略されたことがほとんどない。だから「人間が侵略されずに、自然状態のまま進化していくとどうなるか」ということを知るためには、日本の歴史が貴重な例になる。「世界が学ぶべき日本史の価値はそこにある」

ただ、著者は言う。「しかしその反面、激烈な歴史はない。日本では虐殺のようなことは起きず、むしろ貴族社会のように非常にぬるい歴史がある。これは私が繰り返し言ってきたことですが、そのために日本社会では、才能の抜擢があまり見られないで、世襲制が幅を利かせている」と、世襲制には手厳しい。

以前に読んだ丸谷才一と山崎正和との対話した「日本史を読む」では、「日本と中国との関係、というより関係の不在の歴史であった。関係より関係の不在が、より多く日本を作ってきた」とその不在が日本文化の形成に非情に良かったと評価している。

皆さんはどちらの考え方に共鳴しますか?

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2018年12月31日

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