あらすじ
荒れ狂う時代を怒涛のごとく駆け抜け、夢半ばで業火の中にその役割を終えた稀代の武将・織田信長。果たして彼は、反抗するものを根絶やしに追い込んだ魔性の権化だったのか、それとも、民のため、理想の世を切り拓くために命を賭した名将だったのか。没後四百年を経た今、日本史上最も謎多き男の内面的核心に、気鋭の歴史作家が横溢する気迫で挑んだ傑作長篇書き下ろし。
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Posted by ブクログ
ここで描かれる織田信長は情に厚く優しい、世間のイメージとは少し離れた人物。その信長が浅井長政の裏切りをキッカケに鬼へと変わっていく姿を描く。
ポイントは明智光秀との関係だろう。何事も合理的に物事を捉える知将の光秀を信長は気に入り、光秀もまた信長の心の底にある情に惚れ忠臣として仕える。信長が心を鬼にしていく中で、光秀はその変化を憐れみ、心から本当の姿に戻るよう願い、諭す。一方で、信長は天下のために自ら選んで殺した心をグサリと直球で刺す光秀に苛立ちを覚える。光秀の信長への愛情が却って信長を傷つけるという実に皮肉的で悲劇的な関係。その結果が本能寺の変に繋がるという流れも納得できる部分が多い。