あらすじ
人間の深奥に潜む、弱く、歪んだ心。罪を犯してしまった人間と、それを取り巻く人々の哀しみを描ききった珠玉の5篇。2007年『悪人』、14年『怒り』、そして……犯罪小説の極北、遂に文庫化!
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Posted by ブクログ
有名映画の原作が多くあるので、大衆寄りの作風かなと想像しちゃうけど文学的な仕上がりがこの著者にはあるし、そこにまんまと魅了される。
主人公たちは想像の範囲内で一癖二癖あり、生きていく環境に翻弄されてまさに罪への陥穽に知らず知らずに嵌まる。決して根っからの悪人ではなく、ただボタンの掛け違いが修復不可能なまでに加速しもう後戻りできない最後の一線を超えていってしまう。
特に「百家楽餓鬼」と「白球白蛇伝」がシビれる。
原因は違えどどちらもお金に関係し、堕落していく。しかし、主人公二人とも最初は真っ当な人間といて歩んでいるはずなのに、周りの環境からの外的影響から歯車が徐々に狂い出し堕落していく。そこに劇画的なターニングポイントなんかなく、いつの間にか気づいたらがんじがらめの袋小路。人の破滅というのはいとも簡単に起こるんだなと戦々恐々です。
他のレビューにもあるように、後味は決して良くない。でもそういった結末にこそ、そこに人間の根底にある感情的な、理性では制御できない本質があるのだと思う。ここまで本作品に引き込まれるのだから、一理あるだろう。
Posted by ブクログ
モデルとなった事件
・青田Y字路
栃木小1女児殺害事件
・曼珠姫午睡
首都圏連続不審死事件
・百家楽餓鬼
大王製紙事件
・万屋善次郎
山口連続殺人放火事件
・白球白蛇伝
元千葉ロッテマリーンズ投手強盗殺人事件
清原和博覚せい剤取締法違反
Posted by ブクログ
(以下、直接の感想ではありませんが、触発されている自ツイートを転記(一部訂正有))
真の母数(発生件数)を知ることはできない。
しょせん、
無作為ならざるサンプル(認知件数)でしか社会の問題を知る事は出来んのだ。
そして「認知」という言葉のなんと胡散臭いことか
それが 「楽園(本作を基にして作られた映画)」という映画で切実に得た気づきだ
誰が「悪人」なのか?
誰への「怒り」なのか?
そして誰のための「楽園」なのか?
やはりつながっているな。
Posted by ブクログ
最初の話がすっきりしなかったので、連作かと思いきや、全くの別作品5本が収録されています。
最初の話は犯人がわからない(正確にはとある人物が犯人のように思えるけど違う気もする)ので気になるものの、それ以上に印象深かったのは万屋善次郎。田舎ならではの閉鎖的空間と濃密な関係の中、すれ違いから村八分につながって、本当に救われない。
最後の作品の子どもの涙も相俟って、後味の悪い小説でした。
Posted by ブクログ
現実に起きた犯罪から着想を得て、吉田修一が書いた短編集、といったところでしょうか?
吉田修一自身、この作品を「ワイドショーのような感じ」と表現されておられたようなのですが、この感覚って、角田光代の「三面記事小説」とおんなじだな、と。
で、実は自分は、角田さんの「三面記事小説」のほうを先に読んでガッツーン衝撃受けたクチなので、正直言います。「吉田さん、ゴメン、、、俺、角田さんのヤツの方が、好きだわ、、、」という思いが。どうしても。ある。あるのです。ごめんなさい。
いやもう、この「犯罪小説集」も、もちろん面白い。間違いなく面白い。見事です。見事なんです。でも、ゴメン。どうしても、初めて角田さんの「三面記事小説」を先に読んじゃってるもんだから、あっちの衝撃がデカすぎて、ゴメン。こっちを「あ、角田さんとおんなじだね」って思っちゃってる自分がいるマジごめん。
いやあ、でも、うん。間違いなく面白いです。サスガ流石の吉田修一。って思いは絶対にある。うん。「ホンマこう、、、やれんなあ、、、人間ってヤツはホンマもう、、、やれん。やれんよ、、、」って気持ちになること間違いない。ですので、好きです。この小説。でもホンマにゴメン。個人的には、角田光代の「三面記事小説」の方が、好きです。こんな感想でゴメンやでホンマ、、、