【感想・ネタバレ】江藤淳と大江健三郎 ──戦後日本の政治と文学のレビュー

あらすじ

大江健三郎と江藤淳は、戦後文学史の宿命の敵同士として知られた。同時期に華々しく文壇に登場した二人は、何を考え、何を書き、それぞれどれだけの文学的達成をなしえたのか。また、進歩的文化人=左翼の大江と、保守派文化人=右翼であった江藤の言動から1950年代以降の日本の文壇・論壇とは一体どのようなものだったのかを浮き彫りにする。決定版ダブル伝記。

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Posted by ブクログ

江藤淳と大江健三郎は、小谷野にとって若い時からのアイドル。本書は、その2人を時系列に沿って追いかける。そこには、焼けるようなファン熱が感じられる(ストーカー的な執着という言い方もできるが)。ゴシップも満載。江藤と大江を知っているなら、100%楽しめる。
江藤と大江という2本の大樹、その対比と交錯、そして彼らをとりまくさまざまな人々。その人間模様がなんともおもしろい。もちろん、ゴシップの火の粉は、これらの人々にも降りかかる。
おそらく小谷野は最初は2人を対等に書くつもりだったのだろう。けれど、江藤については、初期や中期の評価は芳しいものだったのに対し、書き進めるにつれて、後期はそうではなくなっていった。それには、奇矯な行動や言動が目立つようにもなったことも関係している。地の「おぼっちゃま」が露出し始めたということなのかもしれない。(なお、後年の江藤の行状については、平山周吉『江藤淳は甦る』や今野浩『工学部ヒラノ教授』が参考になる。)
一方、大江については、小谷野は、彼の言動や行動の矛盾点を突きはするものの、老いてもアイドルはアイドルのままだ。(大江を褒めた佐藤優を牽制するような一文もあり、ファンならではの嫉妬の心理も垣間見えて微笑ましい。)
このゴシップ好きなファンの労作。当の2人は、どう読むだろうか。大江はたぶん苦笑。江藤は……生きていたら激昂だな。

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2025年05月08日

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