あらすじ
シュレディンガーの本質的な問いかけ「生命とは何か」から始まっていることに心底しびれた。「死」をエントロピーから捉え直した画期的な論考。
――― 福岡伸一氏(『生物を無生物のあいだ』著者)推薦!
死なないように進化しないのはなぜか?
われわれが住む地球にはじつに多様な生態的地位があふれている。自己を増殖しようとする大きな原動力、自らの遺伝子を残すための生殖行為の発展、生き残る術と再生能力に長けた生き物であふれているのに、なぜ誰も、死を避けて長生きする方向には進化しないのか。著者は、人生における死が、わたしたちの想像を超えて色々な形で存在しており、死が進化に影響を与えている証を示していく。宇宙があなたに、死ぬ可能性を付与したというのだ。死は何か信じがたいかたちで自然界に溶け込み、自然界に力を与え、多様性に拍車をかけている。
人類は古代から、飢餓、かんばつ、震災、戦争などを経て、争いのなか生き残ってきたが、大人としてたった2時間しか生きることができない動物もいれば、決まった時間が来たら自ら命をたつ特性を持つものもいる。一方で、何百年もの間生きる動物もいるかと思えば、他者に取り付いて残酷な死に方をさせる寄生虫もいるし、長く健康な人生を送らせるために取り付く寄生虫もいる。死は、自然や進化に与えている影響を明確にしながら、限りある命と照らし合わせて考えなければ、到底その複雑な糸を解きほぐすことはできないだろう。
人類はおそらく、「死」が生物に等しく起こるという事実を認識している、地球史上最初の動物である。生命の不思議は「神」でしか説明できないかもしれない。しかし、生命の可能性や人生の意味を見つけ、自分で選ぶことができるのは、人間の特権である。われわれはその特権をうまく使うことができているだろうか。
本書を読む体験は読者にとって、生き物たちの終末と再生を見極めようとする、壮大かつ楽しい冒険の旅となるであろう。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
体裁はエッセイ風で、専門用語などもほとんど出てこず、とても読み易い。
生き物たちの営みを”死”という観点から改めて俯瞰する枠組みは期待を抱かせるし、イギリスでもゴケグモモドキにまつわるフェイクニュースが伝播したんだ…という話や、腐肉を喰らうコンドルの腸内環境についての説明、最近のアンチエイジングに対するアプローチなどなど、生き物ネタから派生する豆知識を色々と知ることができ、素直に「ほー」と感嘆する。
が、シヴィアな言い方をすると得たものはそれだけ、というか、小さなトピックスを四方山話として積み重ねることに終始し、冒頭で著者がぶち上げた”生き物はなぜ死を免れる方向に進化しなかったのか”という大命題に、結局のところ答えていないことが気に掛かり、本書を通じて貫かれる背骨のようなものが見当たらなかった。
ここは著者に責任があるところではないが、邦題に”動物学者”という言葉を入れる以上、ただの動物好きでは与り知らぬ専門的な見地からの考察をもう少し読みたかった、と切に感じる。
「パラサイト・イヴ」の方がよっぽど興味深くミトコンドリアの働きを紹介していたような。
Posted by ブクログ
最新の科学的知見を、哲学や動物学の議論を交えてわかりやすく紹介……なんてしておらず。
ふわっとした個人エッセイに、毛が生えたような
『身近で解りやすい話題』
だけど、私にとっては、
『死についてより考えが深まったりはしない』
本でした。故に、毒にもならないが薬にもならない星三つ、と評価します。
生についてよく考えるためには、死についてもよく考えねばならないと、自覚的に色々考えてみたことがある人には、向かない内容。
普段の生活で、気持ち悪い生き物は避けて当然、死や病のことなんて考えたくもない、心構えなんてしたくない。
ていうか、仏教に触れたことがない。
そういう人が初めて手に取ってみるには、いいかも知れないと付記しておくにとどめたい。