【感想・ネタバレ】最初の悪い男のレビュー

あらすじ

43歳独身のシェリルは職場の年上男に片思いしながら快適生活を謳歌。運命の赤ん坊との再会を夢みる妄想がちな日々は、衛生観念ゼロ、美人で巨乳で足の臭い上司の娘、クリーが転がりこんできて一変。水と油のふたりの共同生活が臨界点をむかえたとき――。幾重にもからみあった人々の網の目がこの世に紡ぎだした奇跡。待望の初長篇。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

Amazing! と言いたくなった。笑えて切なくてホロッと最後は泣きそうになるエンディング。ページターナーでした。43歳女性が66歳シングル男性に密かに恋してる所から始まるけど日本の恋愛市場ではオワコンの年齢だ。その主人公シェリルの人生がそこからあれよあれよと、ここどこ?私誰?な感じでスピーディーにモノクロからカラフル人生に変わっていく。一番印象に残ったのはやはりsexual fantsies性的妄想やその描写があからさまなんだけど、ちっとも下品ではないとこ。「おりもの」だなと分かるって新鮮だった。おっぱいが垂れてるとか陰毛に白髪とかウケるけどいくつになっても恋してるっていいなと思う。タイトルはクリーの事らしい。本当に素敵な物語だった。

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2019年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

めっちゃネタバレです。

翻訳小説ひさしぶりに読んだけど、読みやすかったなあ。岸本さんの訳、すごく身近な言葉でいい…。「肩がバキバキ」とか「ぜんぜんオッケーです」とかそういう微妙にリアルな言い回し。岸本さんのエッセイも大好きなのでたぶん自分的に肌に合ってるのかも。

んで、これ最初孤独な独身中年女性の狂気、みたいな感じで進んでいくのかとちょっと警戒した。いや杞憂でした。
クリーと同居しはじめて、傍若無人に搾取されるだけだったのが反撃をはじめて、バトルになり、だんだんその関係性が変わって来る、そのあたりでもうぐいぐい話の中に引っ張り込まれる。
主人公がややこしい妄想にとりつかれて、ファック、としか言い様のないことばっかり考えてるあたりもだいぶ突っ走ってるんだけど、でもこれやばいな、と主人公に自覚があるので、どこかちょっと明るい。

クリーが妊娠して、出産のあたりは、ふたりの祈りが本当に切実でうつくしくて胸に迫って来るものがあります。
あたらしい命はどうやったって尊くて、愛そのもののかたち。
なんかこのあたりは印象的な文章があちこちにあって、うぐぐぐ、ってなる。

受精卵は自分が精子と卵子という二つのものだったころの記憶を宿していて、なのに一つのものとして生きていかなければならない永遠の孤独を運命づけられている、なんて、ひりひりするんですよね…。

危機にある赤ん坊に、主人公が、この世界はすばらしいんだよ、だからこっちにおいで、生きろ、生きろ、と呼びかけるとこはここがクライマックスかってくらい、もうシンプルに力強くて心が揺さぶられました。

でもってクリーとシェリルの恋。最初のキスシーンはとてもやさしくてピュアなんだけど、その恋はたぶんはじめから終わりが見えてるんだよねえ。すくなくとも主人公のほうには。
あれだ、神田川の、ただあなたのやさしさがこわかった、的なやつ。現実には破綻するであろう、って予感があるからせつない。
それでも人と人との関係って、一瞬のしあわせであっても一生分の価値があったりもする、一方的なものであってもいい、どんな型にもはまらないオリジナルなものであってもいい、ってことなんかがちゃんと伝わって来るわけで。

運命の子クベルコ(であるジャック)とのやりとりが本当に救い。
スイートポテト、って呼びかけて、あ、根菜だと勘違いされたらいけないな、って思い返すのとか、とてもかわいい。

いやー最後ほんとフィリップとどうにかなるかと思ってそれはなんかいやかも…と思ってたので良かった。

そしてエピローグ。あああ、これが本当でありますように、と祈らずにはいられなかった。

なぜかすごく感想を書きたくなる小説だったなあ。
心斎橋の本屋さんで岸本さんと津村記久子さんの対談イベントがあって、行けなかったんだけどもそこでこの本取り上げられてたってんで読んでみたんですけど。
もっと早く読んでおけばよかったー。

ミランダ・ジュライも岸本さんの翻訳も(絵本以外では)初めて読んだ。
誰にでもオススメではないんだけど、自分的には妙に癖になる感じ。
なんだかとてもいとおしい、と思うような物語でした。

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2019年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すごストーリーだ…

いろんな人間のいろんな面に笑わないで向き合うことが得意なのか…?

フィクションだからアレなんだけど、みんな外面普通でも案外己の「システム」を大事にしながらズレながらヒステリー球かかえて生きてるんだろうな~というちょっとした救いみたいなものをかんじたり

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2023年07月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

同年代の独女には劇薬だ。
こうも赤裸々に語られると、どうにもいたたまれない、それでも読むのを止められない。

今の変わり映えしない生活は居心地良くはあるけど、少し窮屈で退屈。
このまま老いていくのかと思うと、このままで良いのかと不安にもなってくる。
そろそろ何か新しいことを始める時なのかもしれない。

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2020年03月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

netflixのドラマのようにゴクゴクと読んでいけちゃう喉ごしでありながら、しっかりと人間のアブない深淵を覗かせてもくれる一冊。笑い、泣き、慄きました。

個人的に一番キてるな〜と思ったのは、シェリルが玄関でカタツムリ百匹ぶちまけながら自慰にふけってしまうシーン。その後人間同士の関係は驚くべき変化を遂げていくのに、カタツムリは後半に至ってもまだ屋内を這っていたりする。また、クリーが去った後もしばらく彼女の搾乳したミルクがジャックに与えられ続ける描写などもあって、一瞬で変化する物事とマイペースに連続性を保った物事との対比が面白く、もの悲しい。

奇妙な筋立てにリアリティーを与える細かな描写もいちいち印象に残った。「いまやわたしたちはいっしょに救急車に乗り、内側からサイレンを聞いた仲だった」とか、「これは政府が国じゅうの出産中の女たちのために配布した道具だ」とか、本当にそういう経験した人からしか出て来なそうな表現で感心してしまう(馬鹿みたいな感想ですが)。

子育て中の身にとっては、夜中の授乳時に自分の人生の可能性について思いを馳せてしまうシーンが、男であっても共感せずにはいられない。訳者あとがきによると本作は妊娠中から出産の三年後まで執筆されていたようだから、これらのシーンの異様な説得力にも納得できる。

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2019年05月28日

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