【感想・ネタバレ】民主主義の死に方―二極化する政治が招く独裁への道―のレビュー

あらすじ

世界中を混乱させるアメリカのトランプ大統領を誕生させ、各国でポピュリスト政党を台頭させるものとは一体何なのか。欧州と南米の民主主義の崩壊を20年以上研究する米ハーバード大の権威が、世界で静かに進む「合法的な独裁化」の実態を暴き、我々が直面する危機を抉り出す。全米ベストセラー待望の邦訳。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

アメリカを含め、世界各国の民主政治や民主化、そして独裁化の多様な経験を事例として多く引用し、民主主義の持続に必要とされる要素について理論を組み立てている。
制度的側面のみでは民主主義を保つことには十分ではなく、政治に参加するひとびと、政党、組織の間での不文律が大きな役割を果たしていることを論じる。相互的寛容と組織的自制心と概念化されているこれらの暗黙のルールが民主主義を支えるガードレールとして機能すると説明する。
二極化や政党の過激化とは、これらの不文律が四方八方で破られることで問題化し、主流派にも浸透し常態的になることでますます悪化する。
特定の人種や宗教、グループに対して排他的にならず、多様な人々を受け入れる基盤を作ることが、どの政党にも求められる。

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2019年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今、みんなが優しくない。
意見の異なる相手を敵とみなして、相手を叩きのめそうとする。
その背景には、そうしなければ自分のいる場所や、自分自身がないがしろにされる、失われる、そういう気持ちがあるのではないか。

アメリカで民主主義が衰え始めているというのは、
トランプさんが大統領になってからをみている人には、
感覚的に「そうだよね」と同意が得られることだと思う。
しかし本当のところ、アメリカの民主主義の衰退は、
トランプさんが大統領になるかなり前から始まっていた。
そしてそのことの起こりは、
時を経るにしたがってさまざまな人種から支持を集めるようになった民主党に対して、
相変わらず白人キリスト教徒からの支持が中心となっている共産党が危機を覚えたからだという。

彼らが感じている危機には二種類あって、
一つはその勢いが加速して民主党の支持者がどんどん増えると、単純に共産党の支持者が減って票が集められなくなるというもの。
そしてもう一つは、白人キリスト教徒こそがアメリカ人と考えている人たちにしてみれば、アメリカが失われるということだ。

よくテレビのニュースで、「アメリカを取り戻せ」みたいにシュプレヒコールしてるのみていて、不思議に思っていた。
私にとってアメリカは、色んな人種の人たちがいて、貧富の差はあれど、みんなが自由に生きれる国だと思っていたからだ。
実際、ニューヨークをブロードウェイ沿いにずっと歩いて行くと、色んな人に出会って、生活水準もさまざま。
でもみんな誇りを持っていそうに見えた。

でも、アメリカ人の中にはそういう感覚じゃない人もいるのだ。
人種という考え方がとても根強いのだ。
本書を読むと、差別という考えはもう当てはまらないように思った。
自分たちの立場、安全を守ってくれる(と思っている)人種。
なまじ、白人の人は以前は他の人種の人たちよりもデフォルトで優遇されていた時代があったものだからなおたちが悪い。
トランプさんなんてまさにその時代を知っている人だし。

そんなわけで、アメリカの民主主義衰退の背景には、未だ解決されない人種問題が身を潜めている。
それが引き起こす「自分たちを守りたい」と思う気持ちが、相手を叩きのめそうとする行動に変わってしまっているのだ。
本書で繰り返し提言される柔らかいガードレールを揺るがしているのはそんな人の中の気持ちだと思う。
これを読むと、大声で脅迫している政治家たちが、ブルブル震えてキャンキャン吠えている子犬に見えてくる。決して侮れない子犬だけど、ちょっとかわいそう。

日本も、日本の民主主義は何なのかちゃんと考えないといけない。
今の日本は緩やかな独裁と言っても良いのではないかと思えてきた。
ずーっと、自民党の独裁。
国民も特にいいと思ってるわけじゃないけど、誰もイヤだと言わないから続いてる。
日本の野党の人たちは、打倒安倍って言うけど、そこに自分たちのアイデンティティを求めないでほしい。
日本という国を良くする政治家でありたい、という気概をもっと持って欲しい。
その気概があって、きちんと勉強しているなら、対立することを目的にしてはもっと悪くなるだけだということが分かるはずだ。
前に進まなくてはいけない、そこで叩き合ってる暇はない。

アメリカの民主主義が衰退しているのは、ある意味必然だった。
まだ解決していなかった、人種の垣根をどうしていくかということが残っていたからだ。
だから、ここを乗り越えてもっと強い民主主義を作るチャンスでもある、めっちゃ難しいと思うけど。

日本にはきっとまた違う問題がある、日本は日本でオリジナルの課題に自分たちで臨まなければいけない。
それが何かはまだわたしには分からないけど、
でもそれはみんなでやることなんだ。
誰かがやってくれることではない。

政治の場で見えていることは、世の中の縮図でしかないんだ。
下らないな、ダサいなって国や政治のことを思う時、
それは私たちがそうだってことなんだ。

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2019年01月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 自制と寛容の規範は”柔らかいガードレール”として機能していた。
 独裁主義的な自制を欠いた行動(①民主主義的ルールを拒否、②政治的な対立相手の正当性を否定する、③暴力を許容・促進する、④対立相手(メディアを含む)の市民的自由を率先して奪おうとする)に政党や支持者が迎合することで、相互寛容が破られ民主主義が破綻していく。
 ヘンリー・フォードやチャールズ・リンドバーグが民主主義の安全装置(門番)により排除されていたとは驚きだった。

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2019年01月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本来、民主的な制度のうちには「独裁者」が生まれるのを防ぐためのしくみが備わっているはずだ。ところが独裁者は巧妙にその「たが」を外していく。それをサッカーにたとえている部分(p105)が秀逸だ。

審判を抱き込む
 公務員や非党派の当局者をこっそり解雇し、支持者と入れ替える
 裁判所を支配する
 メディアの買収
対戦相手を欠場させる
 対立している相手を操作、逮捕、投獄、訴訟
 実業家を標的にする
 文化人を抑圧する
ルールを変える
 選挙区の変更
 投票の制限
「危機」を訴えてこれらを正当化する

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2019年09月18日

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