あらすじ
ペリー来航から倒幕、維新へと歴史は一直線に繋がっていたわけではない。繋いだのは大久保利通がいたからだ。大久保の前に立ちふさがったのが怪物・徳川慶喜だった。板倉勝静、原市之進を片腕として幕末の十年を振り回す。この三人に何度も叩きのめされる大久保。そして、最後の敵は皮肉にも盟友・西郷隆盛だった。大久保が西郷を殺してまでもやり遂げたこととは? 幕末の動乱から明治国家の成立まで――「未来への意思」を貫いた男の真実を描く快作!
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Posted by ブクログ
現代においてもどうしても坂本龍馬や西郷隆盛といった、ある程度の自由闊達さと浮世離れした人物を日本人は判官贔屓の感情も混じり好きになってしまうが、外国国家に負けじと後世の国家建築に携わった点においては大久保利通において勝る者はいないのではなかろうかと思わされる一冊であった。
途中徳川慶喜の圧倒的な政治力の下りについては、それに対する大久保という本を成り立たせる構想上致し方ないものではあるが、少し主役を脇に配置しすぎているところがあるのが残念である。
またこの本ではただ一人大久保だけと思われるかもしれないが、私心のないところにおいては西郷隆盛にも無論あり、ベクトルの違う方向となったのは残念と言わざるを得ない。
ただ西郷隆盛に国家構想と建築といったものが見えてこず、まさに現実主義の大久保が戊辰戦争後に核となる必要があった。暗殺で幕を閉じなければどうなっていたのか、こう言った偉人でさえも時の経過により曇ってしまうこともあるのか、それとも早々に世界に冠たる大日本帝国を築けたのか。
今の日本において国のために私心を無くし、ただ国家のために生命を賭する政治家が果たしてどのくらいいるのかと問いたくなる一冊でもある。
Posted by ブクログ
だいたい僕らは、維新のあたりの話で西郷さんが好きになる。
きっとそれは間違いではないのだろうが、怪物慶喜と、誤解されまくりの大久保利通については何も教えてもらわない。
何が本当なのかわからない。
だが、維新から始まった近代日本が、今根本からなくなろうとしているのは間違いない。
もう一度、維新とは何かときちんと学ぶ必要があるのだろう。
倉山先生の、こういう文体の本はちょっと読みづらい。
が、後半、特に利通と西郷さんの、運命的に坂を転がって行くあたりから、ムッチャ目が離せなくなった。