あらすじ
『付添い屋・六平太』に続く新シリーズ!
香坂又十郎は、石見国、浜岡藩城下に妻の万寿栄と暮らしている。お役目は、市中警護、犯罪の取り締まりや犯人の逮捕に奔走する奉行所の町廻り同心頭である。田宮神剣流の使い手であり、御前試合で十人抜きを果たした剣の腕を買われ、斬首刑の執行も行っていた。
浜岡藩は、海に恵まれた土地でもある。漁師の勘吉と釣りに出かけた又十郎は、外海の岩場で脇腹に切り傷のある水主の死体を見つける。浜で検分を行っていたところ、大目付の下知により、死体は持ち去られてしまった。又十郎の義弟兵藤数馬は、水主の死について不信を抱いていた。数馬によれば、水主の正体は、公儀の密偵ではないかというのだ。後日、当然城内に呼ばれた又十郎は、謀反を企んで出奔した藩士を討ち取るよう命じられる。追うべき藩士の名は、兵藤数馬であった――。追討をしくじれば、罪は縁戚にも及ぶという。又十郎の重く孤独な追跡行が始まる!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
新シリーズは、冒頭から丁寧に主人公の人となりを、丁寧に描いてゆく。
妻にも仕事にも真摯に向き合い、剣を愛し、釣りを愛し、人を愛する主人公を魅力的に描く。
ところが読み進めてゆくと、事もあろうに、どう見ても悪役側にその運命を翻弄されてゆく。
国元で正義を貫く奉行所でお頭として働くその人が、自分たちに反対する勢力を削ぎ落とすという殺し屋として働かされることになるのだ。
すでに主人公に魅力を感じている読者である我々は気を揉むばかり。。。。
期待大のシリーズ第1巻。
Posted by ブクログ
暗く重くて、爽快感が無い読後感。
西国の藩の奉行所同心頭として働く香坂又十郎は、剣道場の師範代であり、藩の試合で10人抜きをした腕利き。妻と幸せに暮らしていたのに、妻の弟が藩の謀反を企んでいるとして討手に選ばれる。妻にも詳細を言えず、また命ずる側からも詳細を聞かされず。
主人公のやり切れない思いが、読んでいて伝わってくる。後半の江戸で義弟に会うまで、それが続く。義弟を助ける良い手段は無いのかと思ったが、非情にも・・
藩命を全うしたのに、それでまた脅されて理不尽な命令が続く。主人公に明るい未来は来るのだろうか?