あらすじ
教育無償化、学力低下、待機児童など、近年の教育の論点は多岐にわたる。だが、公費で一部もしくは全体が運営される学校教育=公教育とはそもそも何のためにあるのか。実際に先進国の中で公教育費が少ない日本には、多くの課題が山積している。本書は、学校とそれを取り巻く環境を歴史的背景や統計などのエビデンスを通して、論じる。そこからは、公教育の経済的意義や社会的役割が見えてくるだろう。
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Posted by ブクログ
「なぜ教育に税金が投入されるのだろうか?」
「社会は教育にどれだけのお金をかけるべきなのだろうか?」
これらは旧来から何度も問われてきた疑問である。
学校の機能不全が叫ばれ、公教育改革が矢継ぎ早に繰り出されている。しかし、そんな中だからこそ、教育の公共的意義について再認識する必要があるのではないか。これが本書のテーマである。
教育が社会の中でどのような機能果たし、あるいは逆に教育制度によって社会がどのような影響を受けてきたのだろうか。また、教育によって期待されることは何で、教育に出来る限界はどこにあるのだろうか。
学校制度の歴史や社会の変化を繙きながら、これまでの、そしてこれからの教育の社会的意義を問うていく。
本書の特徴は、扱っているテーマは古典的ではあるが、比較的新しいデータや実証分析を用いて、現実に基づいた主張を展開しているところである。「べき論」はともすれば独善的な論理展開に陥りがちなところを、事実は事実としてしっかり押さえ、意見は意見として主張しているところが見どころである。
また個人的には、社会科学における量的実証分析の限界をふまえた上で、分析結果との向き合い方や活かし方にも言及があるところに好感を持った。
エビデンスに基づいた主張がされている部分は、筆者の主張への賛成/反対を問わずためになる。新書にしては少々難解ではあるが、教育業界に携わる人だけでなく、学校教育に関心のある保護者などは手に取ってみてもよいかもしれない。
Posted by ブクログ
公教育の目的やコストベネフィットを統計学的な視点や哲学的な視点から解説している。
1番印象に残ったのは、公教育と言うのは、その社会の目的や方向性によってビジョンが変わり方法論も変わるべきだと言うことである。
詰め込み教育からゆとり教育そしてその反動と言う形で現在の日本の教育が動いている中、まずあるべき社会のあり方そして教育というのが非常に効率の良い投資方法であり社会における道徳や倫理観を養うセーフティーネットとなっていることを、エビデンスとともに社会に発信していくことで、教育に予算を費やすことへのコンセンサスをもっと得られるのではないかと感じた。
Posted by ブクログ
最初の方はあまり筆者の論点がわかりづらかった。コストについてはよく分析しており、国立大学入学していないと大学に進学しなかったという分析は見事である。終わりのほうの企業や部活動への意見は皆が考えているような意見であり、それをもっとデータで示すことがこれからの筆者の課題であろう。
Posted by ブクログ
つい最近も経団連が大学教育の改革を求める提言を行った。もっと役に立つ人材を輩出してくれというわけだ。
腹立たしい話だ。経団連は自分たちのために大学が奉仕すべきだとでも思っているらしい。
教育は社会的不平等を解決するためのキーであり、知識水準の上昇こそが社会の発展を促す。これを厳密に検証することはできないらしいが、国際成人力調査と各種経済指標からは、個人の能力はトップだけど、経済は先進国平均を下回る日本の現状が確認できる。
これは、個人の能力を生かせない経済界や労働市場に問題があるのではと考えるのが合理的だ。残念なのは企業側は決してそう考えない。自らが間違っているかもとは思わない。ま、成功者にありがちな自分を信じるってことだけど。これは教育の失敗だな。
Posted by ブクログ
題名の通り、日本の教育について考察された本。教育の格差や社会寄与度などについて統計手法を用いたりして説明している。教育関係者でない方も教養として興味深く読める内容となっている。
Posted by ブクログ
教育の方法を論じるというより、教育を巡る社会学、公共政策の論点について整理した本です。
最近話題になることが増えてきた「エビデンスに基づく政策」という考え方に関しても、基本から問題点まで、丁寧に書かれていました。
少し細かいところに入りこんでいる印象もあり、終盤は飛ばして読みました。とはいえ、これは長く読み続けられる新書になるのではないでしょうか。