【感想・ネタバレ】国宝(下) 花道篇のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

つい夢中になって読んでしまった…

下巻の始まりは最悪だった。
ずっと真面目に孤独に戦ってきた喜久雄をダークヒーローにし、逃げた俊介をたてる作戦。不器用に文句一つ言わずに受け入れる喜久雄…
ただ、源氏がヒットし、ようやく訪れる輝く日々。ただそれも束の間、不幸は次々と降りかかる。
喜久雄の人生、次々と大切な人を失い、険しさばかり。失う度に喜久雄の人生が険しくなるのに、自身が周りを不幸にしているかのような思いを持つ喜久雄。
それでも芸に精進し、誰も届かない域に達した。それは孤独で狂気の域。

もっと続いていても読み続けたかもしれない。彼と彼を取り巻く世界をずっと見続けたかもしれない。眩しさと哀しさ胸が潰されそうになりながら。
読んで良かった。

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2023年11月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ー鳴り止まぬ喝采、この花道はどこまでも続く

〈あらすじ〉
極道の親を持ち、小さい頃に死に別れ、預けられた先で芸を磨くこととなった喜久雄。あっという間に歌舞伎の世界に魅了され、もっと踊りたい、もっと先へ行きたいと思う喜久雄。十代の頃から、栄光と苦渋のある青年期を経て、それでもまだ高みへ。兄弟同然として育った俊介との出会い、別れ、人生の中での紆余曲折があり、歳を重ねる。それでも変わらぬ舞台への熱意。さあ今日も幕があがる。

〈感想〉
すごいものを読んでしまった、、、。というのが背表紙を閉じた後の一番の気持ちです。
まず、独特な語り口調で物語が始まり、読者の私たちは観劇しているような気持ちで喜久雄の人生のページをめくってしまい、全くの未知の世界の歌舞伎にもいつのまにかのめり込んでしまいます。正直、歌舞伎の世界の何たるかが全く分からない人でも面白く読めてしまうのが凄すぎます。
明暗のある、というよりも圧倒的に苦しいことの多かった人生の中で、喜久雄にとって舞うこと芸をすることだけはいつまでも変わらず、こんなにも人は何かに魅せられることがあるのか、と思って羨ましいとは軽々しく言えない程の熱量に恐ろしくもなりました。
そして圧倒的な美。美しさの真髄がここにあるような気がします。

吉野龍田の花紅葉 更科越路の月雪も 夢と覚めては跡もなし

最後の演目と喜久雄とこの詩が信じられないくらいに相まって、言葉にならない気持ちになりました。
激烈なまでの存在感なのに、この人はからっぽなんだ、私たちはそれに魅せられているのか、これは夢なのか、、、。
最後のシーンで、この物語をずっと語り口調で紡いでいたのはもしかして、、、と思ってしまいました。
とにかくすごいものを読んだということです、、。

※上下巻同じ感想です。

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2023年01月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めて読むタイプの本だった。言葉のリズムや表現がすごくきれいで印象に残った。喜久雄が見たい景色を最後に見ることができて本当に良かった。

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2021年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本作のタイトルである「国宝」とは、日本に所在する建造物、美術工芸品、考古および歴史資料などで、歴史的、芸術的価値または学術的価値が高いものに対し国が「重要文化財」に指定したものを称する。

国宝には、「重要文化財」のような歴史的、芸術的な価値があるものの、音楽などの文化や工芸技術に対する「わざ」を「重要無形文化財」としている。
人間国宝は、この「重要無形文化財」に指定されている「わざ」を高度に体得・体現している人物を指し重要無形文化財保持者のこと。

歌舞伎は伝統芸能の「わざ」について審議をされ、本作中では通知書により認定の理由の記載までも記されている。通知書の記載以上に主人公・立花喜久雄(三代目 花井半次郎)が、人間国宝たるにふさわしい熱意と信念、世界観が描写しているため、読者にとっては納得できる評価である。

また、同時に、女形の最高峰としては、五代目坂東玉三郎さんを想像する。
五代目坂東玉三郎さんも東京の料亭の御子息で、梨園出身者ではない。幼い頃から舞踊を習い始め、それが縁で、十四代目守田勘彌の部屋子から養子にそして、14歳で五代目坂東玉三郎を襲名されている。喜久雄同様に厳しい世界を経験し、勝ち得たのであろうと本作を読んだことでその厳しさをより理解することができた気がする。

主人公・立花喜久雄は、長崎の極道の立花組の組長であった父・立花権五郎が愛甲組の若頭・辻村将生により殺された、その辻村のはからいにより大阪の人気歌舞伎役者・二代目花井半二郎のもとで芸を学ぶことになる。

二代目半次郎には実の息子・大垣俊介がおり、いずれ半二郎を襲名する後継者がいた。

ふたりはともに女形として、才能を半次郎に見いだされ、20才の時、花井半弥(俊介)と花井東一郎(喜久雄)として『二人道成寺』に抜擢される。
二代目が喜久雄に三代目花井半二郎を襲名させることで、俊介は元喜久雄の恋人・春江と出て行ってしまう。
梨園出身者でない喜久雄に対する周りからのバッシング、周囲からの嫌がらせにしばらく干された状態となり、満足な芸をすることができず悩まされる。
梨園という閉ざされた世界と芸能界での嫌がらせ、競争、マスコミの誹謗中傷…

そんな中、三友の竹野が芝居小屋で俊介を見出す。喜久雄をおとしめる竹野の戦略により復帰をはたした俊介であったが、両足の壊死という病気により道半ばにして亡くなる。芸能界の華やかさと陰謀を背景に、友情、恋愛、歌舞伎の裏話しを散りばめながら、喜久雄の重要無形文化財保持者となるまでの生涯を楽しむことができる。

最後の喜久雄に怒った結末と「愛想笑い一つできぬ、不器用な役者でございます。我が道しか見えず、多くのお客さま方からお叱りを受けてまいりました。おそらく当代の人気役者としては失格なのでございましょう。しかしそれでも、この歌舞伎座の大屋根から見下ろしておりますと、その不器用な役者の姿が父親の仇を、打とうと、朝礼の最中に駆け出した、あの一途な少年の姿に重なってくるのでございます。」に熱く感じた。

読み応えのあるお勧めの作品であった。

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2020年10月25日

ネタバレ 購入済み

発見がいっぱい

歌舞伎のお話ということで、ワクワクしながら購入しました。
歌舞伎はよく見てる方だと思うのですが、演目や専門用語の説明に新しい発見があり、次の観劇が楽しみになりました。
「阿古屋」は大好きな演目で、読みながら銀座の劇場や歌舞伎座で観た玉三郎丈の艶やかさが甦りました。
役者は商売じゃないんでしょうね。
多くの人に楽しんでもらって、日本の伝統文化として継承されていくことを願ってやみません。

喜久雄贔屓で読み通しましたが、上巻で旦那に稽古を付けてもらう際に「骨で踊る」というのがささりました。
自分もジャンルは違いますが踊りを少しやるので、意識すると踊りが身体に入ってくる気がします。

著者の吉田さんは、長崎出身なのですね。
巻末の一文に胸がつまりました。

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2019年03月15日

ネタバレ 購入済み

秀作

歌舞伎に魅せられ、取り憑かれた主人公が、
嫉妬や裏切り、挫折、血筋との闘いなどありながらも歌舞伎役者として成長、大成していく様子は上下巻をあっという間に読み終わる圧巻のストーリーでした!

自称弁慶の徳ちゃんの優しさと男気がストーリーに暖かさを加えてくれていました。

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2019年03月15日

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