あらすじ
「意志が弱い」「怖い」「快楽主義者」「反社会的組織の人」……薬物依存症は、そういったステレオタイプな先入観とともに報道され、語られてきた。しかし、そのイメージは事実なのだろうか? 本書は、薬物依存症にまつわる様々な誤解をとき、その真実に迫る。薬物問題は「ダメ。ゼッタイ。」や自己責任論では解決にならない。痛みを抱え孤立した「人」に向き合い、つながる機会を提供する治療・支援こそが必要なのだ。医療、そして社会はどのようにあるべきか? 薬物依存症を通して探求し、提示する。
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Posted by ブクログ
読んでて本当に胸が苦しくなる。あの甲子園の大スターで、西武時代はキラキラ輝いていた清原が、今はどん底でもがいている。観衆の大歓声を浴びてホームランを打つというのはなかなか経験できない快感なのだろうが、それを失って、彼の繊細な心や「男とはこうあるべき」という理想の高さがあいまって、このような結果を招いてしまったのか。
それでもなお、薬物で逮捕された有名人でここまで人気が高く、同情の声が多いのも彼ならでは。
この本を読んでも、彼を犯罪者として見る気持ちにはならず、正直に胸のうちを語って苦しんでいる姿に、同情や共感の心しか出てこない。
薬物の欲求としっかり向き合いながら、高校野球の指導者として、返り咲いてほしいと願わずにはいられない。
Posted by ブクログ
長年薬物依存症と向き合ってこられた著者の実体験や各種データから論理的に導き出された、依存症患者に対して望まれる対応策などがまとめられている。
この本を読むのと読まないのとでは、以降の依存症患者に対する認識が変わると思う。
長めだが分かりやすいので、薬物に興味を持ち始めるような年齢の子供たちにも読んで貰いたい。
Posted by ブクログ
薬物依存症についての最新の知見を、網羅的にまとめた本。この本で書かれている「薬物依存症」の姿は、一般の理解とはあまりにかけ離れている。著者のインタビューやコラムを読んだことがある自分も、初めて知ることが多かった。例えば、日本で2番目に乱用されている薬物は睡眠薬・抗不安薬で、特に多いのがデパスであるそうだ。自分も処方されていたことがあるよ!薬物依存症は「孤立の病」であり、依存者は人生の痛みを緩和するために薬物を使っているという視点は、目から鱗。自分も含めた社会の側が、認識を更新する必要があると強く感じた。
Posted by ブクログ
我が国の第一人者による一般向け著書であるが、専門家が読んでも十分に読み応えがある。著者の本が優れているのは、臨床現場に即した記述がされており、それが、依存症者の姿をリアルに映し出すと同時に対応の工夫も具体的に考えやすいところである。偏見が強い薬物依存症者の理解に役立つ好著であり、これまで著者が発信してきたことの集大成と思う。最後に、先進国の認識を示して筆を置きたい。「アディクションは孤立の病であり、その対義語はコネクションである」。本書はこの精神であとがきまで貫かれていた。
Posted by ブクログ
薬物依存性についての知識が深まりました。もちろん、自分は違法な薬物は使用したことがないし、アルコールも嗜むくらいしか体内に入れないので、本当の意味で依存症を知ることは出来ないのかもしれませんが、このような本を読むことで依存症の人との関わり方について考えることができます。
Posted by ブクログ
備忘録。
薬物依存症の自己治療仮説。薬物依存症の原因は、「もっと快感を」という正の強化ではなく、苦痛の緩和という負からの脱出にあるというのは、納得感のある仮説。だから、薬に対する規制を強化するだけでは、依存症問題は解決しない。欧米の大麻などの違法薬物取締緩和のベースにある考え方だと思うが、薬物依存が広がってきたら、日本でも緩和の議論が必要になるのかもしれない。
ネズミの楽園の実験。独房のような檻に入れられたネズミ16匹と、仲間と自由に交われる楽園におかれたネズミ16匹。独房ネズミはモルヒネ水を飲み、楽園ネズミは水を飲む。でも、独房ネズミを、楽園に移すと、モルヒネ水じゃなくて、本当の水を飲みはじめる。
社会的動物である人も、孤独に追い詰められて、モノでその孤独を癒そうとする訳ですが、移される楽園があれば、モノで孤独を癒そうという行動が減るかも。確かに、そうかもしれない。
Posted by ブクログ
薬物治療の最前線に立ち続ける医師による薬物依存症についての書籍。主に治療方法に重点を置いているように感じた。
薬物に縁のない人が殆どである日本では、薬物というと反社会的勢力、犯罪というイメージを持つ人が多いと思う。ただこの本を読み、薬物依存症は回復することができるということ、刑罰だけでは効果が薄いこと(再犯率が高い)が分かった。
薬物に関する知見を得るという点では有用な一冊と思う。
Posted by ブクログ
『誰がために医者はいる』や横道誠との往復書簡よりも堅めの自説紹介本でしょうか。個別エピソードに深入りせず,客観性を強めに出している感じ。個人的なエピソードが多い他の著作より無機質でとっつきにくい。医師の新書としてはこれくらいが標準ではあるのだろうけど。
それでも,この人は本当に薬物依存をライフワークにしてきたんだなと思う。こうやって誰も取り組まなかった分野が開拓されていくのだ。
他方で,ここまでせねばならんのか,という気がしてしまったのも事実。患者を目の前にした医師ならば気にならないのかもしれないけど,社会としてどこまで手を差し伸べるのかという問題はあるか。