感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2019年03月11日
『幽霊が現れたり消えたりするように、わたしにもほかの人間が見えたり見えなかったりする。人々だけでなく、世界の全体が遠のいて、虚空に投げ出されたような心地になる』
夢十夜の第一夜を彷彿とさせるような味わい。柴崎友香が踏み出した新しい境地を伺う思いがする。如何にも主人公の男性であるような男優の写真が少...続きを読むしうるさいような気にもなるけれど、写真が伝えるものは文章が描き出そうとするものを邪魔する訳ではない。一瞬でもなく永遠でもない。そんなふうに写真のフレームに封じ込められたものは、短篇小説の言葉の世界と良く共鳴している。
デビュー以来、作家自身と同じような世代の等身大の主人公を描くことの多かった作家が描いた怪奇譚という種はこんなふうに開花するのか。あるいはアイオワの地で受けた刺激が作家のパレットの色味を広げたのか。百年待った訳ではないけれど、その花の放つ淡い色の力がしんしんと伝わって来る。香りではない。薄い蒼の滲んた白の持つ力。輪郭も曖昧なその色と周囲の空気との交わり。ただただ拡散してゆくだけのこと。そんな小説を柴崎友香はいつの間にか書くようになっていたのだなと、苔の上に座っていた男のように気付く。傑作。
Posted by ブクログ 2018年09月23日
東出さんが古い日本家屋にすみつく幽霊を演じていらっしゃる。とてもよくお似合い。その家に住む家族に向けられるまなざしの温かさと、自分の顔も名前もわからない、その存在のあいまいさから滲み出るような寂しさとが混じり合って、なんとも言えない読後感があった。
Posted by ブクログ 2018年10月21日
とても淡々と進んでいく、東出昌大さんの写真多めの本ですが、好きでした。
今日も東出さんが出演されている落語の番組を見ていたので、一人称のこのお話が東出さんの声で再生されました。
短いお話なのですが、光と不思議な時間の流れがあります。
幽霊の「わたし」のこれからをぼんやりと考えてしまいます。
Posted by ブクログ 2018年10月04日
東出君をモデルとした小説。異色、というが『騙し絵の牙』も同じようなものかと思ってた。まだ読んでないけど。
東出君がとにかく好き。だからぜんぜんいいんだけど、
いまいち、小説と写真がズレている気がする。かっこいいからいいけど。別物感が...かっこいいからいいんだけど。
Posted by ブクログ 2019年12月19日
彼(そもそも男なのか?)にとっては、この家族が引っ越して去っていく間も、言うなればつかのまのことなんでしょう。
古いおうちって本当に少なくなりました。この、本当にいい家が、取り壊されずに、次の人がやってきますように。
Posted by ブクログ 2018年12月12日
文学と俳優さんの写真を合体しており、東出さんの雰囲気と文体がわりとマッチしていました。しかし、写真は写真、小説は小説で分けた方が集中できるかなぁ、と。この世に未練があったのでしょう。家に住みついている幽霊が家の移り変わりを見届け、やがて一番会いたかった人にようやく出会うまでのストーリーはちょっぴり切...続きを読むなかったです。
Posted by ブクログ 2018年09月18日
東出昌大さんの素敵な横顔のカバーを外すと、きれいな赤の表紙。写真も懐かしい昭和の雰囲気で良いです。
自分がだれで、ここがどこで、何をしているのかもわからない主人公。
作品紹介で「ラスト、あなたはその<結末>に、きっと涙する。」と書かれていましたが…
偶然の再会? でも結局誰かわからず、再会も主人公の...続きを読む一方的なもの どうにかなるわけでもなく
これで心残りなく旅立てるということだろうか?
消えていった人たちはどうだったのか、ただ一瞬にして消えていったのか う~ん もう一つ
何かが欲しい。