【感想・ネタバレ】消滅世界のレビュー

あらすじ

人工授精で、子供を産むことが常識となった世界。夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、やがて世界から「セックス」も「家族」も消えていく……日本の未来を予言する芥川賞作家の圧倒的衝撃作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

おもしろかったのは間違いない。
でもおもしろさにはいろいろな方向性があると思う。
スカッとする!……いや違うな。ほっこり、でもないし。ヒヤッとする、近いけどこれでもない。この作品が持っているのは、なんと言い表せばいいのかわからないもやもやとしたおもしろさなのだ。

種の繁栄のために人間は繁殖を続けてきた。繁殖の方法は言わずもがなだが、その方法が不健全とされ、別の方法に移行しつつある世界で、疑問を感じながらも順応しているふりをして生きている主人公。その葛藤を眺めているうちに、今私たちが生きる世界が正しいものなのか段々とわからなくなってきた。
劇中で「妻と近親相姦しようとするような変質者」という言葉が出てきて、そのときはちょっと笑ってしまったのだが、話が進むにつれその考え方が私の中でも常識のように根付き始めていることに気づいたときは、恐ろしくて読み続けるのを少し躊躇うほどだった。

終盤の「私たちは全員世界に呪われている」という言葉はまさに青天の霹靂で、
自分が正しいと思おうと思うまいと、世界の変容に我々は抗うことはできず、
それを拒否する人間は自動的に排除されるという実によくできた仕組みだが、
今の世の中の眺めるとまさにこの通りのことが形は違えど起こっていることがわかるはずだ。
そんな世界の「常識」に私たちは洗脳されている。
常識ってなんだろう。清浄なことが正常なのだろうか。合理的なことが何よりも優先されることのだろうか。私にはもう常識がなんなのかわからない。
それでも私は「自分は正常ですよ」という仮面を被って生きる。これまでもこれからも。

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2026年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本作は、性欲や生殖といった「当たり前」とされてきた欲望が失われた社会を描くことで、逆に恋人や家族という関係性の本質を強烈に浮かび上がらせる作品だと感じた。

性欲が消滅したとき、恋人とはどのような存在になるのか。家族であることのメリットは、どこに見出されるのか。
純粋に居心地がいいという感覚だけで、人は誰かと生活を共有し続けられるのか。読み進めるうちに、これまで無自覚に依拠してきた人間関係の判断基準が、少しずつ解体されていく感覚を覚えた。

同時に、自らがいかに異性愛を前提としたイデオロギーに囚われていたかにも気づかされる。
作中の価値観に対して抱いた違和感は、「理解できないもの」への拒否というよりも、自分の中に深く内面化された「普通」や「自然」が揺さぶられた結果だったのだと思う。

そもそもヒトの「正常」とは、固定された基準ではない。
それは過去からの連続の中で更新され続けてきた概念であり、現在の常識もまた暫定的なものにすぎない。それにもかかわらず、私たちは今の価値観を絶対視し、それ以外を容易に逸脱として扱ってしまう。本作は、その危うさを淡々と描写することで読者に突きつけてくる。

読み終えた後に残るのは、明確な結論ではなく、思考の居場所を失ったような静かな違和感だった。
しかしその違和感こそが、この作品が単なる寓話ではなく、現実を照らす鏡として機能している証なのだと感じた。

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2026年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

これまで村田先生の作品をいくつか読んできてそろそろ自分も村田ワールドに慣れてきたかな?と思っていましたが、今までで読んでて1番頭がおかしくなりそうでした。笑
気が狂いそうになりながらもページをめくる手が止まらないんですよね。

「正常ほど不気味な発狂はない。だって、狂っているのに、こんなにも正しいのだから」とあるように、正常すぎる世界もヒトも考えものだなと感じました。

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2026年01月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

朔君は“あっちの世界”ではかなり思い悩んでいたが、逆に雨音は元気にやっていた。朔君にも雨音のお母さんの"呪い"があれば、そこまで思い悩むことなくやっていけていたのではないか、とふと思う。

お母さんの"呪い"に思い悩まされていた主人公だが、それがなかったとしても社会の規範や刷り込みなど、別の呪いがきっとあるのだろう。
雨音がお母さんの呪いに救われていた部分もきっとあるはず。

結局どの呪いにかかるかなのか。
全部正直な感想を書くと、自分にかかっている呪いがバレる…!そんな作品だったな。

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2025年12月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ここまでドラスティックに、かつ合理性を突き詰めた社会システムの姿を思考実験として描き切ることができるのか──それが、この作品を読み終えたときの最初の印象だった。

性行為による生殖がタブーとされる世界で起こる、家族や子どもの生育を描いた本作。設定としては極端なのかもしれないが、人口減少や少子高齢化が進む社会において、これは決して完全な空想のディストピアではなく、「起こり得るシナリオのひとつ」として読みたくなる。

特に印象に残ったのは、実験都市エデンの社会システムだ。
生殖は体外受精に固定され、「一人の親に対する一人の子」という概念は消失している。都市は共同体として機能し、子どもは共同体全体の産物であり、親もまた共同体そのものになる。これを読んでいると、これは近未来の話なのか、それとも先史時代のムラや集落の話なのか、境界があいまいになってくる。究極の進化は退化であり、原点回帰でもあるのかもしれない、そんな感覚を覚えた。

現代でいうネグレクトに対しては、コミュニティによる「全員監視型」の育児が行われる。
家庭の経済状況によってキャリアや学歴に格差が生じる社会から、コミュニティが子どもの人生を保障する社会へと移行していく。

一見すると、それは子どもの明るい未来を保障しているようにも見える。だが同時に、大きな危うさも孕んでいるように思う。

子どもの個性は、実は一番近くにいる大人・人間との関わりの中で後天的に形作られていくのではないか。もし出産・育児・教育が徹底的に平準化されていくならば、子どもの個性はどこまでも薄まり、画一的な人間が「決められた未来」に沿って生きるだけの社会になってしまうのではないか。

それはまさに、「哲学的ゾンビ」を社会的に量産する構造になってはいないか──という不穏な問いへとつながっていく。

思考実験のかたちをとりながら、近い未来の社会や家族、個性とは何かについて深い示唆を与えてくれる作品だった。

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ユートピアだしディストピア。恋から逃げたい!とかはすごい共感できるけど性行為にこだわるあまねは共感できないし、気持ち悪いと思った

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2025年12月18日

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