あらすじ
地下アイドル・愛野真実の応援だけを生き甲斐にするぼくは、ある日、彼女が殺人犯だというニュースを聞く。かわいいだけで努力しか取柄のない凡庸なアイドルである真実ちゃんが殺人犯なんて冤罪に決まっていると、やはり真実ちゃんのファンだという同じクラスのイケメン・森下とともに真相を追い始めるが──。歪んだピュアネスが傷だらけで疾走するポップでダークな青春小説!
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「青春を軽蔑の季節だと、季節だったと、気付けるのはいつだろうか。」
アイドルオタク、ストーカー、殺人。どこまでも物騒な話なのに、最果タヒの水晶のような文体が、そこに内包される思春期の自意識、自己嫌悪を透かしだす。共感なんてまったくできないストーリーに乗せられる、青春のいびつさがたまらない。
Posted by ブクログ
アイドルを好きな高校生の話。
帯に『未熟で身勝手でひたむきで切実で痛々しくて恐ろしくて…青春以外の何物でもない』『共感できるワケないのに「なんかわかる」ってなって怖い!!』と書かれてますが、その通りだなぁと感じる小説。
主人公の山城の視点で語られる、これは青春なのかと苦しくなる異常さと、続編と、あとがきと、読み終わったあとのタイトルがとても好きです。綺麗なものを全部混ぜたら濁ってしまったみたいなそんな文体とお話。
「俺は、まみちゃんのがんばってる姿を見るのが好きだったんだ。ステージの上で楽しそうに踊って、歌ってら俺だってがんばってるし、がんばって生きているつもりだったけれど、でも、ここに俺よりもずっとがんばって、それでいて楽しそうにしている女の子がいるんだと思ったら、好きになるしかもうなかった。俺は彼女ぐらい、がんばって、がんばって、せいいっぱい応援したいと思ったんだよ。彼女は、特別なんだ」
Posted by ブクログ
最果タヒさん初読
さいはてさんとお読みするらしい
詩人で小説家
最年少中原中也賞受賞等早くから詩への評価が高い方のようです
2014年初出 2部構成
「星か獣になる季節」
17歳という危うさの表現
推しのアイドルが殺人を犯したらしい
その罪を自分が負うために連続殺人を犯す高校生
10年前の作品と思えない斬新さ
同じアイドルを推す同級生と推しへの純粋な愛情に歪んでいく感情とその行為
最期自らを殺してもらう選択をした友人に共犯的な懺悔を読む
「正しさの季節」
殺人犯として捕まった男子高校生の元同級生の女子と彼の幼なじみの男子の1年後
星にも獣にもならなかった彼らは
正しさに囚われているのか
獣に振り回されているのか
きちんと小説であるけれど、詩的な“星と獣”というメタファーが効いている
Posted by ブクログ
「なにがあっても世界は平熱で、死んだ人をかたっぱしから忘れていくような冷たい場所だとしても、私は私の命の住処として、輪郭として、それを捉えることができると、かすかに信じられた」(174p)
「生きるということを、繰り返すあいだ、私は命の上澄みだけを踏んでいる、そんな不安に駆られてしまう。それでも、生きているというそのことを、獲得しようとする、そんな人だけが、現実的であるように思えた」(175p)
Posted by ブクログ
不思議な小説だった。印象的なセリフが沢山ある。なにかすごく大切なことが書いてある気がして引っかかるのに、この感覚をなんて言葉にしたらいいか分からない。
応援している地下アイドルに求めていることがひどく歪んでいて言葉を失ったけれど、それは主人公だけじゃなかった。読み進めるほど、人が人に対して求めていることがどんどん浮き彫りになっていった。
対象や程度が違うだけで、みんな同じようなことをして自分の居場所を作ろうとしている。それは自分の過去で見覚えのある人間関係でもあった。
何も求めていないのは森下だけだったかもしれない。だからこそ森下はこんな殺人犯になってしまったのかな。
誰かのために行動するという話と、差別をしないという話で、森下の性質が少し分かった気がした。なぜか森下が一番ピュアに見えてしまい、頭を悩ませられる。
Posted by ブクログ
詩が連なってできたような小説
登場人物の命の炎が本当によく燃えていて、壊れかけていて、最高
お酒に酔っている時に読むのが丁度良い、目が回る文章
何があっても、世界は平熱
Posted by ブクログ
む〜ん...これは「問題作」だ(^ ^;
どこがどう問題か...と問われても困るが、
ものすごい「問題作臭」が漂っている感じ(^ ^;
一応は「連作短編集」と言えるのだろう。
同じ世界観の中で、時間軸に沿って話が進むし、
一作目の内容を「受けて」その後の話が存在している。
で...何と言うか、全体を通してかなりの異常性を感じる。
人が簡単に死にすぎる(^ ^;
殺人のハードルが異様に低いぞ(^ ^;
サイコパスと言ってしまえばそれまでかも、だが、
シリアルキラー本人の中では整合性が取れており、
何の矛盾も破綻もない...のが怖い(^ ^;
一作目のメインの二人は、二作目以降は
訳あって「大っぴらには」登場しない。
その他の人々は「割と」まともなようなので、
あの二人の異常性が際立つような(^ ^;
ストーリー自体は、粗筋で書き出してしまうと
とても単純な話と言えるだろう。
が、独特な言い回し・言葉遣い・テンポ感などと相まって、
もの凄く不思議な読書体験となった(^ ^;
決して読みやすいわけではない。
かと言って「読みづらい」わけでもない。
ホント、独特(^ ^;
ストーリーに感心するとか、登場人物に感情移入するとか、
ましてや何か学ぶとか共感を得るとかは全く無い(^ ^;
読んでいる最中の不思議な感覚を味わう、
「読書のための本」という印象が残る(^ ^;
う〜む...問題作感...(^ ^;
Posted by ブクログ
みんな「自分なんかふつう」だと思っていそうなキャラクターばかりなのに、連続殺人なんてイレギュラーなことが起きてしまう青春の鬱屈。鈍色に輝く青春って感じ。
Posted by ブクログ
決して読みやすくはない文章が、バランスの取れておらず、感情に押し流され、突き動かされていくような心を描いているようです。世界がまだ閉じたままの青春時代に、選択肢はそれほど現れない。私たちは運良く、大人になれただけなのかもしれません。
Posted by ブクログ
なかなかよかった。阿部共実の漫画みたいな、ナイーブで危うい青春、といった感じ。
阿部作品よりもスッキリ感があって、その分余韻は後を引かない感じだが。
女の子のキャラがよかった。
Posted by ブクログ
最果タヒさんの名前は、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」という詩集タイトルと共に知った。
なんて素敵なタイトルだろうと思った。
自由律の詩集を嗜むリテラシーはあまりないのだが、いつか読みたいな、とは今でも思っている。
さて、そんなポジティブな印象を持っていた最果タヒさんの小説を、いつもの工夫舎さんで見つけた。
ここのところ、読書傾向に偏りがあったから、足りてない小説成分を摂取しようとお店を訪れたので、著者名だけで手に取って、作品の前情報なしに連れて帰ることにした。
推しの地下アイドルが殺人罪で逮捕された。
歌も踊りもイマイチ、かわいいけれど、頑張るだけが取り柄のあんな平凡な女の子が殺人みたいな非凡なことが出来るわけがない。
応援してるし好きだけどその一方で軽蔑していた彼女の冤罪をはらそうと、なぜかその地下アイドルの同担らしいクラスのカースト上位イケメンと共に行動することになる主人公。
第一部は、クラスで自他ともに空気みたいに浮いているこの主人公、山城の徹底した一人称視点から物語は進んでいく。
痛々しくも感じる17歳の自意識。
詩人でもある最果タヒさんの、彼らの描き方がまた、なんともヒリついた印象を残す。
第二部は星か獣になる季節を過ぎ、自分なりの正しさに揺らぎながらこれからをまだ生きていく若い人たちの物語。
全体を通して、わりと肝心なシーンを時系列を飛ばしてみたり、カメラを切り替えるかのように違うアングルから描いてみたり、微妙に読みにくく感じるところはあれ、10代後半の一人称視点ならではな不安定な感じがとても良く表現されている。
ストーリーは破天荒ながら、一気に読める疾走感もあり、
詩集になるとどんな感じになるんだろうな、とますます「夜空はいつでも-」に興味がわいた。
私の思っていた王道の小説ではなかったけど、おもしろかったな。
Posted by ブクログ
◼️最果タヒ「星か獣になる季節」
初読みの詩人・作家さん。衝撃的な事件と、あわいに漂う、尽きない感情と。
最果タヒ、さいはて、と読むのだそうだ。詩集で注目されて中原中也賞、萩原朔太郎賞を受賞している。作品をもとにした映画もあるんだそうだ。書評がよく上がっていて興味を持っていた。小説もものしており、今作はその第一作。
愛野真実というアイドルがバラバラ殺人容疑で取り調べられている。目立たず友達もいない優等生・山城は真実に歪んだ愛情を抱いていて、真美の実家に出掛けて行き、誰かが仕掛けた盗聴器の音を拾って聴いたりしている。ある日その盗聴器で真実が連行される音を聴いた後、山城はライブで何度も見かけていた同じクラスの人気者、森下と会う。森下は妹だという小さな女の子を連れていた。翌日、女の子は行方不明だとニュースで流れた。学校で、山城は森下に声をかけるー。
ファンとしてのたがが外れた行動。誰からも好かれ、モテる彼と行動をともにしつづける山城はクラスの女子から忌避されている。一方、そんな山城を気にかける才女・渡瀬と、クラスの誰もに、森下の金魚のフン的存在とみなされている青山。
やがて森下の行動に切羽詰まっていく山城、衝撃的な結末とその後のことー。
まず違和感満載のまま、まるで止まれないジェットコースターのように息つく間もなく進んでいく物語に引き込まれる。対比と何気ない言動、シラケと高校時特有の薄っぺらな感情、傷。事件の中の青春群像劇。エピローグ的な2話も含め、異常な中で湧いてくる思い、戸惑い、なんらかの実感とぐるぐる回る思考を文章で表そうとしているのかな、と。2人の時はいいつきあい、でも集団になると関係性が変わる、というのはよくあるが、リアルだ。
怒涛のように言葉を連ねる舞城王太郎に少し似てるかな、どうかなと思わせた。少なくとも筋道だっていて常識通りに人が行動する正攻法の小説ではない。青山と渡瀬、被害者の少女の兄との後編は、みながみな、ぶつけどころのない傷の深い想いを発している。
ふうむ。小説的にほどよい未解決感が残る。極端な前提でありつつ、直接的な打撃のある場面はないことが効果を増幅している。
集中できるストーリー立て、何かモヤモヤとした、解決できないもの、を際立たせる作品だった。
Posted by ブクログ
結構人を選ぶ作品だなコレ…。
何年前に買ったか忘れたけど、そういえばと思って読んでみたり。
応援している地下アイドルを冤罪から(いや、おそらく冤罪じゃないんだけど)守るためにクラスのイケメンと真相を追う前半。
なんだか爽やかな青春小説?と思いきや、イケメンが思った以上にヤバい奴で…。
イケメン、森下は狂言回しに近くて、主人公の不器用な応援が形になってしまったんだなぁ、と思う。少しクラスメイトに優しくされたら絆されちゃうくらいには普通なんだけど、同じくらい森下の狂気に当てられて努力し続けた少女に何もかも捧げてしまう。
特別になれないものが、特別だと思ったものに捧げられるものは、もしかしたらそんなことだけなのかもしれない。
Posted by ブクログ
静かな作品だった、後半に差し掛かってからの乱雑な散文も、なぜかひどく冷めて見えた。しかし、あとがきを読んで胸をガッと掴まれる思いをして、暫く放心状態になってしまった。
Posted by ブクログ
あとがきにあることが全てかな。
17歳は、青春は軽蔑の季節。
そして、そうではなかった森下。
平等である。それは、誰かにとっては冷たいことかもしれない。
アイドルオタク=暗い、キモいの偏見。
山城や岡山はそのレッテル通りかな。
でも森下は違う。やりたいようにやる。話したい人と話す。違うと思うことは言う。
それがよいとは言わない。森下の本心は全然見えなくて、殺しもさらっと書かれていて、その淡々とした感じが不気味だった。(でも、それはきっと主題じゃない)
正しくなくていい、誰かの善はきっと誰かの悪だから。
Posted by ブクログ
勢いがすべて。読みにくいので、とにかくペラペラとめくる。まったく共感できず、若さの狭軌が狂気を醸してゾワっとする。でもそれだけ。また、それだけなのも味わいなのかも、と思う。説明が面倒になる感じも、これまた17歳らしさか。
Posted by ブクログ
とある地下アイドルが殺人を犯してしまい、それを知った主人公とクラスメイトがアイドルをかばおうとする。でもその方法が「犯人が他にいると思わせて、彼女を無罪にする」というなかなかぶっ飛んだもの。
小説という媒体は便利なもので、そうしたヤバイ主人公たちを徒に拒絶する必要もなく、しっかりと受け止めることができる。
自意識過剰な主人公が、まぁ最後まで独りよがりではあるのだけど、クラスメイトとのかかわりを通じて、最後には素敵な告白をする。手放しで好きなものを好きと言えるなら、死のうがバラバラにされようがハッピーエンドでいいのかなと思った。