あらすじ
1948年、米国に留学中だった著者は、サナトリウムで療養しながら「起業」し、そのお金でヨーロッパに旅立った――。渡航が難しい時代に世界を渡り歩いた女性が残した、驚きと発見溢れる旅文学の金字塔!
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Posted by ブクログ
書名の『お嬢さん放浪記』から受ける印象とはだいぶ異なる。「お嬢さん」という看板は犬養家の娘だからしょうがない。でも、おとなしく勉学などしていない。好奇心の赴くままに突き進み、経済的な窮地も妙案を実行して切り抜ける。そして「放浪」でもない。1948年から10年間、日本に戻ることなく、ボストン、アムステルダム、パリに根をおろし、見聞を広め深めてゆく。
なかでも、オランダについての2つの章、「オランダ風物」と「洪水」は読み応えがある。「オランダ風物」では、オランダの四季の移ろいが描かれる。その風景描写がすばらしい。人々が繰り広げる風習や行事の記述も、臨場感にあふれる。一方、「洪水」は、1953年にオランダ南西部を襲った水害(死者数1835人)の惨状と、自分も加わった災害ボランティア活動についてのリポート。アメリカやドイツの留学生の奮闘ぶりが感動的。
Posted by ブクログ
「ベルリンうわの空」ドイツの生活、社会文化等をマンガとして描いたもの(こちらも面白い)内に紹介があり、手に取った。
海外生活について情報も少なかったであろうこの時代に1人で渡航し逞しく突き進む姿は、今の時代を生きる私達にとってその時代以上に、鮮烈に映る。
著者の行き方を決めた旅に寄り添い、共に知見を広められるそんな1冊。
Posted by ブクログ
これはいい本です。もっと早く読めばよかったし、特に女友達に勧めたい本。
こんな旅をするには、私には行動力も知性も公平さも率直さも足りないけど、海外行きたくなりました。
Posted by ブクログ
コアさんのレビューを拝読し、俄然興味が湧いた。
犬養毅の孫と家柄的なものは大きいだろうが1948年の、戦後間もない頃に単身留学。(しかも旅費は友人達から工面!) 現地の人に引けをとらない語学力や交渉力(これが凄かった!)・教養・時にはユーモアを発揮。トラブルがあっても瞬間冷静になり、知らない土地にいても前進できる度胸。
これ全部日本国内で身につけたの…?
勉強内容の難易度といい勉強量といい、コアさんの仰る「この時代のインテリは賢い」というのは確実なんだろうな。
著者は27歳の頃に出国、ボストン留学からのヨーロッパ周遊へと繰り出し、計10年異国を"放浪"する。
彼女のその後の人生に影響を与えたと見られる体験が「ドイツの冬の旅」という章にある。タイトルからしてクリスマスマーケットに見られる煌びやかな旅かと想像していたが、行き先の一つが難民キャンプだった。
10年の放浪後に著者は、ライフワークとなる聖書の研究や難民救済活動を開始される。後年の別著にて、銃弾が飛び交う旧ユーゴスラビアに降り立つ話があったが、ドイツでの彼女はまだ腰が引けているように見えた。よそ者に警戒する子供達に対しても「非常に不愉快で、また哀れで…」と何だかよそよそしい。
昼夜問わずキャンプで人々の世話をするソーシャルワーカーの女性が「エネルギーのすべて」だとするボロボロの聖書。「われらが父と祈りながら互いに殺し合ったり…」と嘆く難民の一人。人々の心を左右する信仰。これらの光景も聖書の研究を始める発端になったのかもしれない。
所変わってフランス。「お城をもらった話」は、まさに事実は小説よりも奇なりをよく表していた。
天蓋孤独な上に周囲に溶け込めないインドネシアの留学生に会ったのを機に、互いに助け合える友人作りを目的にしたイベントを著者は思い立つ。会場の確保や食材の調達と、次々とアイデアを繰り出す回転の良さは、見事と言うには物足りないくらい。
思えばその行動の源流は、まだ彼女がボストンにいた頃の出来事にあるのかも。たまたまバスで知り合った人が収穫祭の食事に招待してくれ、その席で「友情のパスポート」について教わったという。
「たがいが兄弟姉妹であることを意識することこそ、我々の時代に一番必要。それだけが、友情のパスポートになる」
遠く離れたフランスで、彼女は留学生に友情のパスポートを与えたんだな。
お嬢様であっても、深窓の令嬢ではない。
願望が出来れば自分の足で叶えに行く。とてもカッコ良くて清々しい。『咲かせて三升の團十郎』の時とはまた違う、季節外れの薫風が吹き抜けていた。
コアさん、改めて素敵な作品をご紹介くださり有難うございました(^^)!!
Posted by ブクログ
行動力と知性の化身みたいなお嬢さんの旅日記。
そこらのバックパッカーとは比べ物にならない程の経験を自らの力で切り開いていく様に圧倒される。化け物みたいな内容と反して、文章がとてもお上品でかわいいです。
Posted by ブクログ
行動する「お嬢さん」の話。
犬養家という名家のお嬢さんでありながら、とてもそうとは思えない行動力。
でも、そういった家の出身でなければ、その発想はないだろうと思われる行動力。
特にお金を稼ぐことに関しては、単に働いて稼ぐのではなく、事業として動いていく様子には、「お嬢さん」でなくてはできないことだと感心した。
Posted by ブクログ
著者の犬養道子さんは、五・一五事件で暗殺された犬養毅のお孫さんである。カトリック教徒であり、長年難民の支援活動に力を入れてこられたが、二〇一七年に鬼籍に入った。
著者の家柄を知っているわれわれは、題名から親の援助を受けて気ままに世界を旅する女性像を思い浮かべてしまう。だが、そのような思い込みは見事に裏切られる。
舞台となっているのは一九四〇年代後半から五〇年代にかけてのアメリカやヨーロッパ。まだ海外へ渡航すること自体が珍しかった時代に、自分の旅費は自分で稼ぎ、女性ひとりで旅をして回ったのだから、その好奇心と行動力には驚かされる。
しかも、彼女は旅行者として上っ面の欧米を見聞したのではない。その土地に暮らす市井の人々と同じ地平でものを見、聞いているのである。ときには危険な目にも遭い、ときには人間の心の温かさに触れながら。それが読者の心を打つ。
のちに著者はキリスト教研究をライフワークとするのだが、本書にはすでにその精神が流れているという気がする。彼女にとってキリスト教は理念ではない。行動であり実践なのである。
Posted by ブクログ
放浪記はよくあるものだけど、戦後間もないアメリカやヨーロッパを渡り歩いた記録はとても貴重で興味深い記述がたくさんあった。
しかも著者は犬養毅の孫娘。
でもこれが賢くて大胆なとんでもないお嬢さん。
どう考えても無謀なことも危険なことも怯むことなくやってのけてしまう。
おそらくかなり博識な方で、各国の様々な人種と意見交換をしているため、彼らが戦後どのような価値観になっていたかを知ることができて勉強になる。
こんなに肝が座った女性がいたなんて信じられない。
放浪記なのに時系列が整っていないところは、わかりにくく感じた。