あらすじ
顔は心の窓です。魅力的な顔をしていると、よりよい人間関係が築けます。でもそれは、目鼻立ちの美しさではありません。では、「いい顔」とは何でしょう? なぜ人は顔が気になるのか、顔を覚えるコツはあるのか、第一印象は大切か、修正写真も「私の顔」なのか――「顔」にまつわるさまざまな疑問を、心理学で解き明かします。
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Posted by ブクログ
実は顔だけ覚えるのであれば、とてもたくさんの数を覚えることができます。顔を記憶するためには、感情を伴う人間関係が大切です。なんであっても感情的な事柄とともに覚えることがコツなのです。さまざまな事柄に興味がなければ、人の顔は覚えられません。そのため感情を刺激して、脳を活性化させる必要があるのです。脳にある扁桃体による働きによるのですが、扁桃体は恐怖に反応し、耐え難い状況にさらされ続けると、扁桃体とその周辺の脳は傷ついてしまいます。
顔を記憶するテストの成績が非常に高い「スーパーレコグナイザー」とされる人たちは、鼻を中心に視線を置いて、顔の全体的な特徴を瞬時で把握するような見方をするそうです。
反対に、顔を見ることが生まれつき苦手な自閉症者は、輪郭周辺など、あまり重要でないところばかりに視線が向いていることがわかりました。発話者の口ばかりに注目するなど相貌失認(人の表情や顔の区別がつかなくなるという脳の損傷による症状)に近い特有の視点で顔を見ています。このような場合、話を聞くこと自体が高いストレスになり、疲労感が強まるため、休息をとらなければなりません。おおかたの人は、表情や口調などの要素(ノンバーバル)をコミュニケーションの主体としています。しかし自閉症者を相手に、話をする際は頼りにしてはいけません。明確な言葉によらなければきちんと文脈や状況を伝えることは難しいでしょう。
また、自閉症者はコントラスト視力がよい可能性が高く、白目と黒目のコントラストがより強く、際立った刺激となります。目を合わせず人を避けるようにするタイプや、目をそらさずじっと見つめ続けてしまうタイプなど特性が分かれます。
脳の障害により、少しずつ運動機能が低下して、姿勢の維持や運動の速度調節がうまく行かなくなるパーキンソン病は、表情もとぼしくなることがわかっています。パーキンソン病患者は意図的に表情をつくることはできるのですが、瞬時でつくる意図しない表情の動きがなくなっていくのです。
自分が表情を失ったとき、周囲がどのように変わるのか、注意深く観察した人がいます。顔面神経麻痺で顔面筋のコントロールを失った元患者による報告です。表情の乏しい人には、イエスかノーで答えるような質問しかしなくなるといいます。無表情にこわばった顔は、本人はそう思っていなくても、「イライラしていて不機嫌」のように見えてしまうのです。それだけでなく、「お前には興味ない」と言っているいうように、あるいは「私は鈍いし、退屈ですよ」と言っているように、とらえられてしまうといいます。周囲の受け止め方がそんな感じだと、本人も周りへの興味を失うという悪循環に陥っていきます。そして内に閉じこもり、顔や世界から遠ざかって生きようとするようになってしまうということでした。
笑顔は、脳にとって社会的報酬として働きます。笑顔の顔と名前との記憶には、金銭的な報酬をもらうときに活動する、前頭葉にある眼窩前頭皮質が、記憶にかかわる海馬とともに働くのです。
生まれてからの赤ちゃんとお母さんの行動を丁寧に観察した研究から、意外なことがわかってきました。
新生児でも顔を好んで見ますが、その時点の視力は0.02程度しかないのです。お母さんを顔から区別することができても、まだこの時点では、髪型が変わればわからなくなる程度の認識です。
より安定して正確な認識能力を獲得するため、周囲に顔を探し出してたくさん見て学習したあと、よく見る顔にだけ洗練されていくのです。
赤ちゃんは視線の発達とともに、目の開いた顔から、視線の合った目へと、視線を見る感度が高まり、自然と目を見る時間は長くなっていきます。
赤ちゃんとのやり取りの中で、親も成長するのです。視線が合うことで、だんだんと赤ちゃんとお母さんの息は合っていきます。この時期に赤ちゃんの視線をうまく受け取ることができないと、息が合うきっかけを失うことにもつながるのです。
赤ちゃんの注意は、その後、お母さんの目から視線の先へと進みます。ひとつの世界を互いの視線によって共有することは、人間だけが持つ共通の認識世界を生み出すことになります。それは動物から人への進化を示すような、劇的な変化ともいえましょう。やがて、視線の先から指の先へ、移行し、言葉を含めたコミュニケーションの獲得へとつながっていくのです。自分だけの閉じられた世界から脱却し、他者と共有した世界に発達していくようです。
女性には、周りの目にどう映るかというプレッシャーや共感性の高さがあります。自分たちだけのこだわりを社会に表現しようとします。
男性には、数値化やシステム化に優れて、オタクっぽい性質に傾いていくようです。
1歳まで父親が不在の家庭で育った女性は性的な成熟が早く、思春期も早く訪れ、最初の出産が早いといいます。