【感想・ネタバレ】自分の顔が好きですか? 「顔」の心理学のレビュー

あらすじ

顔は心の窓です。魅力的な顔をしていると、よりよい人間関係が築けます。でもそれは、目鼻立ちの美しさではありません。では、「いい顔」とは何でしょう? なぜ人は顔が気になるのか、顔を覚えるコツはあるのか、第一印象は大切か、修正写真も「私の顔」なのか――「顔」にまつわるさまざまな疑問を、心理学で解き明かします。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

実は顔だけ覚えるのであれば、とてもたくさんの数を覚えることができます。顔を記憶するためには、感情を伴う人間関係が大切です。なんであっても感情的な事柄とともに覚えることがコツなのです。さまざまな事柄に興味がなければ、人の顔は覚えられません。そのため感情を刺激して、脳を活性化させる必要があるのです。脳にある扁桃体による働きによるのですが、扁桃体は恐怖に反応し、耐え難い状況にさらされ続けると、扁桃体とその周辺の脳は傷ついてしまいます。

顔を記憶するテストの成績が非常に高い「スーパーレコグナイザー」とされる人たちは、鼻を中心に視線を置いて、顔の全体的な特徴を瞬時で把握するような見方をするそうです。
反対に、顔を見ることが生まれつき苦手な自閉症者は、輪郭周辺など、あまり重要でないところばかりに視線が向いていることがわかりました。発話者の口ばかりに注目するなど相貌失認(人の表情や顔の区別がつかなくなるという脳の損傷による症状)に近い特有の視点で顔を見ています。このような場合、話を聞くこと自体が高いストレスになり、疲労感が強まるため、休息をとらなければなりません。おおかたの人は、表情や口調などの要素(ノンバーバル)をコミュニケーションの主体としています。しかし自閉症者を相手に、話をする際は頼りにしてはいけません。明確な言葉によらなければきちんと文脈や状況を伝えることは難しいでしょう。
また、自閉症者はコントラスト視力がよい可能性が高く、白目と黒目のコントラストがより強く、際立った刺激となります。目を合わせず人を避けるようにするタイプや、目をそらさずじっと見つめ続けてしまうタイプなど特性が分かれます。

脳の障害により、少しずつ運動機能が低下して、姿勢の維持や運動の速度調節がうまく行かなくなるパーキンソン病は、表情もとぼしくなることがわかっています。パーキンソン病患者は意図的に表情をつくることはできるのですが、瞬時でつくる意図しない表情の動きがなくなっていくのです。
自分が表情を失ったとき、周囲がどのように変わるのか、注意深く観察した人がいます。顔面神経麻痺で顔面筋のコントロールを失った元患者による報告です。表情の乏しい人には、イエスかノーで答えるような質問しかしなくなるといいます。無表情にこわばった顔は、本人はそう思っていなくても、「イライラしていて不機嫌」のように見えてしまうのです。それだけでなく、「お前には興味ない」と言っているいうように、あるいは「私は鈍いし、退屈ですよ」と言っているように、とらえられてしまうといいます。周囲の受け止め方がそんな感じだと、本人も周りへの興味を失うという悪循環に陥っていきます。そして内に閉じこもり、顔や世界から遠ざかって生きようとするようになってしまうということでした。
笑顔は、脳にとって社会的報酬として働きます。笑顔の顔と名前との記憶には、金銭的な報酬をもらうときに活動する、前頭葉にある眼窩前頭皮質が、記憶にかかわる海馬とともに働くのです。

生まれてからの赤ちゃんとお母さんの行動を丁寧に観察した研究から、意外なことがわかってきました。
新生児でも顔を好んで見ますが、その時点の視力は0.02程度しかないのです。お母さんを顔から区別することができても、まだこの時点では、髪型が変わればわからなくなる程度の認識です。
より安定して正確な認識能力を獲得するため、周囲に顔を探し出してたくさん見て学習したあと、よく見る顔にだけ洗練されていくのです。
赤ちゃんは視線の発達とともに、目の開いた顔から、視線の合った目へと、視線を見る感度が高まり、自然と目を見る時間は長くなっていきます。
赤ちゃんとのやり取りの中で、親も成長するのです。視線が合うことで、だんだんと赤ちゃんとお母さんの息は合っていきます。この時期に赤ちゃんの視線をうまく受け取ることができないと、息が合うきっかけを失うことにもつながるのです。
赤ちゃんの注意は、その後、お母さんの目から視線の先へと進みます。ひとつの世界を互いの視線によって共有することは、人間だけが持つ共通の認識世界を生み出すことになります。それは動物から人への進化を示すような、劇的な変化ともいえましょう。やがて、視線の先から指の先へ、移行し、言葉を含めたコミュニケーションの獲得へとつながっていくのです。自分だけの閉じられた世界から脱却し、他者と共有した世界に発達していくようです。

女性には、周りの目にどう映るかというプレッシャーや共感性の高さがあります。自分たちだけのこだわりを社会に表現しようとします。
男性には、数値化やシステム化に優れて、オタクっぽい性質に傾いていくようです。

1歳まで父親が不在の家庭で育った女性は性的な成熟が早く、思春期も早く訪れ、最初の出産が早いといいます。

0
2025年10月18日

Posted by ブクログ

筆者の本が好きなので読んでみようと思った。読んでみると比較的読みやすかった。自分の顔は他人の目を通してしか見えないので、他人との関係が必須。自分で見ることのできない自分の姿をなるべく客観的に知ろうとするには、他人との関係が必須である。顔というのは造形が大事だと思われがちだが、実は表情が重要である。
造形は整形をしない限りそれほど変えられないが、他人と多く関わり魅力的な表情ができるようにできるようになりたいと思った。

0
2024年03月19日

Posted by ブクログ

「顔」を出発点として、いろいろな心理学の知見がちりばめられており、岩波ジュニア新書と侮っていけない。一応心理学を勉強していたが、心理学のトピックが多岐にわたっていてとても勉強になった。一方で、岩波ジュニア新書であるおかげで、わかりやすく的確な説明だったので、サクサク読むことができた。
「顔」から出発して、これだけ幅広い話題をわかりやすく解説する山口先生、お見事です。

0
2021年03月18日

Posted by ブクログ

ジュニア文庫であり青少年向けに書かれていたが、勉強になった。
驚いたのは、顔は正面から見ると向かって左側の印象が強いこと、男性的な顔と女性的な顔のどちらも時と場合により魅力差が出てしまうこと、同じ男性の顔でも女性に笑顔を向けられているのと不機嫌顔を向けられているのでは魅力が違うこと(つまり人の顔の魅力は顔の造形だけでなく、周りの人の表情にも左右されている)等…
自分は自分の顔が思春期は本当に好きじゃなかったが、大人になって働き始めてからは得をしていることが分かってきて、次第に好きになった。1番は面長はリーダーシップがあるように思われるからかもしれない。なるほど。

0
2021年03月04日

Posted by ブクログ

顔、表情が人に与える影響力の大きさを痛感した。美醜に執着するより素の自分で出来る魅力アピールが大切だし効果が大きい。
メディアやSNSの発達で美男美女を目にする機会が急速に増え自分の容姿を必要以上に貶める心理状態に陥っているのかもしれない。
身なりや表情など素のままの自分で自分らしさを見出していく方が豊かな人生を歩めるのだろう。
国によって容姿の価値観が大きく変わる事に驚かされた。

0
2020年08月30日

Posted by ブクログ

思春期になれば必ず悩むことになる、自分の顔。
もっと鼻が高かったら、目が大きかったら.......鏡を見てため息をつく。
いつかはコンプレックスだらけの自分の顔に折り合いをつけていくものだが、私は未だに思春期のままなのか、自分の顔が好きではなくて、写真に写る事を出来る限り避けている。
各種免許証や写真はどれもこれもぎこちない顔をしている.......。
それなのに、自分に似ているはずの我が子の顔は世界一かわいいと思っているのだから随分矛盾しているものだ。

鏡の中の自分は実は自分の顔ではない。
イギリスのペレット教授の研究を見てみると(11頁)それがよくわかる。
どちらが女性らしくてどちらが男性らしいか?
実はこの顔はどちらも同じ顔で左右反転したもの。
この実験は私にとって吉報か、訃報か?
サッチャー錯視(62頁)も面白い。
有名な錯視なのだが、何度見ても違和感がない。
0歳の子供は違和感を感じるらしいが、いったいどんな風に見えているのだろう?
子供が見ている世界と私(大人)が見ている世界が違うなんて不思議でたまらない。

さて、インスタグラムなどでより綺麗に見える自撮りが流行って久しい。
が、私には自撮りをする人の気がしれない。
などと言っている私の方が実は自撮り大好きな人々よりも自意識が過剰なのはよく理解しているつもりだが、みんながっかりしないの?
私って、ブスだなあ、と。

就活の時にわざわざ銀座の写真館に行って、メイクもしてもらって気合を入れて写った.....はず。
さて出来栄えは?
......なんじゃこりゃあ!!!!
プロなんだろ、なんだよこの顔、でもこれが本物の私?とさらに落ち込んで足りない分を700円のスピード写真で撮る。
あれ?こっちの方が写りがいい。
友人や後輩にはそのスピード写真を勧めておいたのだが、違いはリラックス(112頁)にあったのだと思う。

195頁では「顔とは、人との関係の中にできあがる」とある。
元々の造作はそりゃあいい方がいい。
しかし時代によって「美人」は変わるし、どうせ自分は、と思っているよりは笑っていた方がいい。
色々な表情をしていたほうが、見ている側は楽しい。
そしてそんな人はとても魅力的な「いい顔」をしている。
かわいいは作れる、とどこかのCMで言っていたが本当にその通り。
「いい顔」の秘訣はそこにあるのだ。

0
2016年07月13日

Posted by ブクログ

タイトルの問いかけが気になったので読んでみました。
「いい顔」は目鼻立ちが整っていることがではないそうです。自分を向上させることに真摯に取り組もうとすることがいい顔の条件かもしれないと作者はあとがきで述べています。

顔は自分の心を映す窓であるならば、普段自分はどういう表情をしているのか、少しでもいい表情でありたいと思いました。

0
2022年03月23日

Posted by ブクログ

2時間あれば読める。

表情や印象は、その相手の顔だけでなく、その相手が誰といるか、どんな状況かによって受ける印象が変わる。
笑顔の女性がそばにいるかいないかで、写真の顔の表情が変わってるように見える実験写真は面白かった。

出世しそうな男性は男性らしすぎない顔。
女性が遊び相手として好む顔は男性らしい顔、パートナーとして選ぶ顔は女性っぽい雰囲気の顔。らしい。

自閉症の人は写真の上下が変わってても顔を区別できる。

0
2020年12月22日

Posted by ブクログ

人の表情や感情を読み取る能力は、人との交流の中で養われる。引きこもっていては衰えていく。

笑顔は脳にとって報酬として働く。ありがとう、という言葉も無表情で言うより笑顔で言ったほうが効果的。

顔の形はなかなか変わらないが表情は変えられる。

0
2019年01月17日

Posted by ブクログ

「顔」の心理学~一般的傾向として大人は親近化選好(古いものに固執する)を持つが赤ちゃんは新規選好(新しもの好き)を持つ。自分の写真を見て馴染みが持てないので皮肉なことに違和感を持つ。人の顔を見る時、向かって左側で判断する。顔認識は30歳まで成長し続ける。顔を覚える時には感情が伴い、顔で表情を作ってみせることで、感情も育まれる。日本人は相手の顔を見ることを失礼だと感じて、目許の小さな変化を読み取ろうとするが、西洋人は顔全体を見る。こうした日本人の文化の特性は生後8ヶ月後の赤ん坊の人見知りから始まる~どうやら表紙の絵は著者のようだ。子ども時分に美人の概念が解らなかった。日本赤ちゃん学会の事務局長。まイイや!

0
2017年02月21日

Posted by ブクログ

個人的に注目している若手の著者。本書もわかりやすく、かつ興味を引く書き方で顔にまつわる学説をもろもろ紹介してくれている。

0
2016年10月19日

Posted by ブクログ

人間は社会性を進化させていく中で、顔を判別する能力を磨いてきた。赤ん坊の視力が0.02位の頃から顔の配置をしたものに対して反応をし、大人になると。変なところもある。右脳が判別を担っているため、顔の左側の印象が重要となる。

0
2016年08月17日

「学術・語学」ランキング