あらすじ
「ため息に溺れてしまいました。ご迷惑をおかけします」立川市の蔵元医院で、蔵元家の婿養子・指月の遺体が発見された。本人筆跡の遺書が残っていることから警察は自殺と判断。だが患者や同僚からも慕われていた彼がなぜ? 女刑事・羽木薫の捜査で見えてきたのは、権力を巡る開業医一族の闇。そして指月が胸に秘めた、悲しき過去の記憶だった――。優しき医師は自殺か、他殺か。見えていた世界が一変する、衝撃のクライマックス!
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Posted by ブクログ
本の帯に惹かれて購入。
帯の通り最後10ページで世界ががらっと変わる。
主人公は刑事。地域の名士である蔵元家で起こった自殺事件の再調査に巻き込まれる。
自殺した指月は、天涯孤独ながら周囲に愛され、医師になり、跡継ぎのいない蔵元家の養子に迎えられた。蔵元家の娘と結婚もし、医師としても申し分なく見えた。
なぜ彼は自殺したのか。本当に自殺なのか。
主人公が暴いていくドロドロの人間関係。
その中で、最後の指月の思いにゾクっとした。
舞子のまっすぐ過ぎる思いも怖いが、指月の方が得体がしれなくて恐ろしい。彼は自分だけが大切だったようだ。
ちょっとした違和感の部分は最後で奇麗に回収していて読み応えがあった。
Posted by ブクログ
出だしで答えは出ているのに、ここからどうやって面白く出来るのかと半信半疑で読み始めました。
結末につながるヒントが少なく、完璧に予測出来る読者は少ないのではないかと思います。最後はどんでん返し、というよりは「そういうことなのね」という感想でした。
本当の死は身体の死ではない。身体の痛みや苦しみ、生が遮断される恐怖よりも、心の傷は耐え難い苦しみであり、本当の死をもたらすということ。
その恐怖に抗う様子を究極的な心理描写で描いている作品です。
個人的に登場人物達にフォーカスしたり感情移入しずらい描写だなと感じたのは、もしかしたら作者が本当に言いたかったことがたった一つだったからなのかもしれません。