【感想・ネタバレ】戦う操縦士のレビュー

あらすじ

ドイツ軍の電撃的侵攻の前に敗走を重ね、機能不全に陥ったフランス軍。危険だがもはや無益に等しい偵察飛行任務を命じられた「私」は、路上に溢れる避難民を眼下に目撃し、高空での肉体的苦痛や対空砲火に晒されるうち、人間と文明への《信条》を抱くに至る。著者の戦争体験に基づく小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

「人間の土地」や「夜間飛行」と同じスタンスで
読み進めていましたが、本作は負けると分かっている
戦争での不可能であろうと思われる任務である
偵察飛行を遂行し、帰還するまでが描かれており
その中で著者が思い巡らしたことが
書かれてるのか?と思っていたものの途中から
違和感を覚え…

「結局のところ、なぜ我々はいまだに戦って
いるのだろうか?《民主主義》のため?(中略)
ならば《民主主義陣営》のほかの連中も一緒に
戦ってくれればいいじゃないか!」(P179)と
他国を攻める姿勢になり、名指しはしないものの
アメリカを非難します。

すでにアメリカではベストセラー作家であった
著者のこの作品の目的は「祖国の立場を弁明し、
民主主義という大義を共有するアメリカがヨーロッパの
戦争に参戦するよう促すことである。」(P312)
でしたが、本作の発売前にアメリカは参戦し、
その後、「アメリカの読者はこの作品を、今や
戦友となったフランスの勇気ある戦いの記録として
熱狂的に受け入れた。」(P312)ということでした。

とても素晴らしい作品ですが、今後こういった
目的で書籍が作り出されることがないことを
願うばかりです。。

0
2019年08月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ほぼ死の宣告と同じような無謀な飛行機偵察任務を命じられ、何のために死ぬのかも分からぬままに飛び立った主人公が死という犠牲の意味、人間とは何かなどを死線をくぐることで悟っていく物語。
敵の集中砲火の中をぎりぎりでくぐり抜ける偵察任務はサン・テグジュペリの実体験をもとに描かれているだけあって非常に生々しく緊迫度が高いが、この話は任務より任務中の主人公の内省、そしてその思考が哲学的に高まっていく様子が主な内容になっている。
難しいところもあって読んで全部理解できたとは到底言い難いのだが、人間は「さまざまな関係の結び目」であり、戦友、軍、祖国という「自分が結ばれているもの」のためにこそ戦い、死ぬのであるという悟りに主人公が徐々にたどり着く過程は熱かった。
この小説はあっさり敗北したフランスの立場を擁護し、アメリカの参戦を促すという第二次世界大戦中での明確な目的を持った本であったということだが、ここで展開される哲学には普遍的な響きがある。それはサン・テグジュペリ自身が死地へ赴き、命を懸けて獲得したからこその哲学の強度なのだろうと思った。行動こそが自分だというようなことが作中にも書いてあったが、実際の体験に深く裏打ちされたテグジュペリの〈信条(クレド)〉が最後に燦然と提示される時、その力強さには胸を打たれた。

0
2025年09月29日

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