【感想・ネタバレ】早わかり文学史のレビュー

あらすじ

超ロングセラー『出口汪 現代文講義の実況中継』の著者、出口汪先生の予備校での講義「近代日本文学史講義」を完全再現した本です。

★本書はしがきより
文学史は、評論などを理解するための重要な背景となるものなのだ。
しかも日本史とも重複するところが非常に多い。
ところが、多くの「文学史」や「文学入門書」の類は、ただ暗記事項を羅列したものが多い。これではとても覚えられるわけがない。
というのも、覚えるという行為は、必要事項をただやみくもにつめ込むことではないからである。そうやって無理に頭に押し込めたところで、すぐに忘れるし使いこなせない。
そもそも覚えるには、以下のプロセスが必要である。

(1)まず、歴史の流れを理解すること。この段階で、すでに君たちの頭の中に重要事項が無理なくインプットされている。
(2)次に各作家・作品について、何らかのイメージを持つこと。そのために、本書では様々なエピソードをふんだんに盛り込んでいる。こういったイメージとともに頭にいれることで、覚えやすいと同時に、忘れにくくなる。
(3)最後に、いったん記憶したものを定着させるために、反復することが必要になる。これには、付録の文学史の各表を利用してほしい。本書をひと通り読んだ後、たとえば189ページB表の下の部分を下敷きなどで隠し、「~主義」に対して、それに属する作家名・作品名・重要事項がスラスラ言えるようになるまで繰り返してほしい。

ひとたび受験という枠を取り払ってみると、世の中に、文学案内や文学の入門書なるものが氾濫しているが、どうしてああも面白くないものばかりであろう。文学の本当の面白さを、熱っぽく、しかも分かりやすく語ったものは滅多にないのではないか。
そういった意味で、本書は受験生はもとより、大学生や社会人の方にもぜひ読んでいただきたいのである。
「物語る」という行為を導入することで、無味乾燥な各暗記事項が実にいきいきと、分かりやすく流れるように頭の中に入ってくるはずである。あとは、反復によって、記憶を定着させるだけでいいのだ。
本書は、二日あれは読破できる。面白くて一息に読み終えてしまうだろう。入試直前であっても、十分に間に合う。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

この本で覚えたことは入試には結局出なかったけど(笑)
読みものとして面白かった: )
読みたい作品が見つかるはず。

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2011年09月22日

Posted by ブクログ

文学に疎い私でも文学史のひと通りの流れが数時間で学べてしまった。わくわくしている。なんだかこれから文学作品を読むときの態度がすっかり変わってしまうような気がする。あたりまえに芥川も漱石も日本に生きるひとりの人間だったんだよね。彼ら彼女らの生い立ちや生きた時代、その時代を支配する思想とそれに対する反発、文学結社や文壇に立つ仲間との友情、あるいは恋愛、苦悩、病気、果ての自死という選択。文豪たちの迫力のある生きざまを知ってしまった。もう何となくの気持ちで読めないじゃないか。

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2025年07月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の文学史を俯瞰できる本。
大江健三郎のエッセイを読んで、ロマン主義について知りたくなって大学受験時のテキストを引っ張り出した。
文学の流れが分かり、それぞれの主義、派閥の代表作と、そのあらすじが分かる。
1冊あって損はない。
この本を通読することで、読みたい本がたくさんできた。

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2014年10月20日

Posted by ブクログ

読み物として十分面白い。これ一冊で体系的に文学史が理解出来る。ただ、芥川とか個人として有名どころの作家には触れられていないので残念だった。

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2012年06月27日

Posted by ブクログ

私は古典文学が専門であって、近代については高校生レベルなので
知識の整理のために読んでみた。
ひとことでいって、よい。
筆者は文学史を「物語る」というスタンスでこの本を書いており
そのスタンスが私にとっては非常にありがたい。
事実だけを羅列されても覚えられないので。
実際、この本にはある程度筆者の解釈が入っているので
専門家からすると疑問の残る部分もあるだろうとは感じる。
しかし、私の近代文学史観とほとんど重なっていたので、
勉強の補助として助かった。

ただ、おおむねの文学史は分かっていないと、
筆者がどこを飛ばしてどこを重視しているかが分からないので
「受験生」以外にとっては少々危険であろう。

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2010年10月15日

Posted by ブクログ

高校の入試対策を教えてくれと言われて、出口式の勉強をしていたので、ついでに読んだ一冊。高校入試(今では大学入試もそうかもしれないが)では、文学史に関する知識は必要がないので蛇足なのだが、単純に読み物として面白かった。というより、大学時代にお世話になった先生の文学史理解とそっくりで驚いた。予備校講師が文学史を説明するときの常套手段なのかもしれない。

基本路線は、オーソドックスな「近代的自我」史観による文学史の整理で、文学の歴史を作中人物や作者自身の「近代的自我」の模索と捉えて説明していく。その歴史を対になる思潮の対立で整理してくれているので、個々の作品や作家がどうこうでなく、全体の流れが分かりやすく把握できる。
この本では、明治の「啓蒙期」以降の文学史の流れを「写実主義vs擬古典主義」「浪漫主義」「自然主義vs反自然主義」「プロレタリア文学vs芸術派」という四段階の波で文学の流れを押さえている。大学時代、同じく戦前までの近代文学史は、「リアリズムvsロマン主義」の対立として整理できると言っている先生がいて、その分かりやすさにいたく感動したのを覚えているが、基本的には、同じ説明と見ていいと思う。
坪内逍遥が「写実主義」を日本に導入して以降、この流れを汲むのがリアリズムの流れで、これに反抗していくのがロマン主義の流れになる。リアリズムの流れというのが、「写実主義→自然主義→プロレタリア文学」と行くのに対して、ロマン主義の流れが「義古典主義→浪漫主義→反自然主義→芸術派」と流れていると考えればいいのだろう。(なんか違うような気もするが)。

いずれにしても、大学時代の先生も元はバリバリの予備校講師だったことを考えると、文学史を指導している中で似たような結論に辿りついたのだろう。受験対策用に効率よく記憶することを考えれば、なるべく単純な流れで理解するのは基本だと思う。そうなったときの二軸がこの「リアリズム」と「ロマン主義」になるのだと思う。
それにしても「近代的自我」という言葉を久々に聞いたような気がする。初版が1996年だと考えると時代を感じる本だなあと思う。かといって、この考え方で拾えきれていない歴史観がいったい何なのか。それが分からないくらいには不勉強な分野でもある。
文学史が重視されなくなって久しい気もするが、歴史的な整理は、作品を他の作品との関係に位置づけて捉えるうえで、未だに大切だと思う。ある意味、歴史を語れるようになることが、その文化の成熟を意味してもいると思うと、こうした古典的な近代文学史の勉強も大切だよなと一周回って思う。逆に、こういった考え方が、文学史の記述と文学の権威化を生んだものでもある。
そのあたりのバランス感を、これから勉強する子たちにはつけてもらいたいように思う。

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2025年09月05日

Posted by ブクログ

大学受験で使ってた文学史の本…なんとなく入れてみる。

作品名も作者も興味のある人しか覚えなかったし、試験にも結局出なかったけど、
息抜きにこれを読むのが好きで、寝る前に少しずつ読んでた笑

出口先生は偉大だ。

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2009年10月04日

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