あらすじ
最高ってなんて最高なんだろう。僕らはいつも最高だ。明日またくる朝。浅漬──。現実から目を逸らし、表層的なハッピー感に拘泥する表題作「ゴランノスポン」。自らの常識を振り翳す人間の暴力性を浮かび上がらせ、現実に存在する歪みを描く「一般の魔力」。現代と中世が書物を介し烈しく混ざり合う「楠木正成」他、秘蔵小説7編を収録。笑いと人間の闇が比例して深まる、傑作短編集。
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Posted by ブクログ
あー面白かった。
ゴランノスポンというタイトルからしてまず感動した。
ご覧のスポンサーの提供でお送りしました。これを幼少期のわたしは、ゴランノスポン、サーノテーキョウでお送りしました、だと思っていたので、このことばをこんな所でみるとは…!!と、幼少のみぎりのぼんやりとした記憶を呼び起こすとともに衝撃を受けた。
中身も本当に面白かった。どれも胸糞悪くて嫌な気持ちになる読後感でとてもよかったけど、特に一般の魔力がすごい。こいつこそクズ男だよなー、ていうそこら辺にいそうな普通の人で、でも愛猫家愛犬家の町田康がどんな気持ちでこの話書いたんやろうと考えてしまった。
求めていた胸糞悪さがどの話にもあるから堪らないよ。
楠木正成と末摘花は雰囲気違うというか、元々あるものに町田節を無理矢理ひっつけた感があって自然な町田康の感じ感を感じなかったのでほしいっこ減らしちゃったよ。
末摘花は雑誌掲載時に読んどったんやけど、源氏のクズさが引き立ってるよね。
Posted by ブクログ
短編集
楠木正成、末摘花の歴史をなぞった短編は自分の知識量が足りないのもありついていけなかった。
「一般の魔力」「尻の泉」はどんな人生を歩み、どんな心理状態になればこんなぶっとんだ発想の小説を書けるのか笑いながらも驚くばかり。
Posted by ブクログ
相変わらずの町田節に翻弄された7つの短編集。
一番印象的なのは『末摘花』。
色々な作家さんが描く光源氏を読んだけれど、町田訳・光源氏も躍動感があっていい。
これぞ男の本音、という心理描写が面白い。光源氏ファンには怒られそうだけれど。。
あと、頭の中将ってこんなにウザい男なんだ。。
普段モテモテの光源氏が末摘花に焦らされてキーッとなる過程は、ざまあみろ、といった感じ。ま、自業自得ですね。
町田訳・六条御息所もぜひ読んでみたいので、町田さんいつか描いてくれないかしら。
『楠木正成』を読んていたら、以前読んだ『ギケイキ』を再読したくなった。
大河ドラマの菅田将暉の演じる源義経が『ギケイキ』の町田訳・義経とイメージにピッタリかも。
ラストの『先生との旅』。
何度も出てきた「日本中世におけるポン引きと寺社権門」。内容がとても気になってしょうがない。
表題の『ゴランノスポン』。
てっきり何か意味のある言葉かと思っていた。
表紙のイラストもかわいいし。
中村文則氏の『解説』によると「この番組はご覧のスポンサーの」からきているらしい。現実逃避していたのに現実に引き戻される瞬間を効果的に表すため、とある。
言葉が途中なのは主人公が現実に戻るのを拒否するためチャンネルを変えようとしている、らしい。
各短編の誰もが何かから「醒めた」瞬間を経験しているから…なるほど、と最後で納得。