【感想・ネタバレ】随想録のレビュー

あらすじ

日本財政の神様がその晩年に語った、自由主義者として生きた生涯の軌跡。未曾有の金融恐慌を乗り切った財政政策や、政党政治家として接した原敬、山本権兵衛、牧野伸顕、田中義一らの横顔。そして自身の宗教観や家庭観、教育論など幅広く、深い知見に満ちた思索。〈解説〉井上寿一

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ネタバレ

合成の誤謬

・個人経済から見る時と、国家経済から見る時とは、大変な相違がある。
例えば、ここに一年五万円の生活をする余力のある人が、倹約して三万円を以って生活し、
あとニ万円はこれを貯蓄する事となれば、その人の個人経済は、毎年それだけ蓄財が増えていって結構なことである。
しかし、これを国家経済の上から見る時は、その倹約に依って、これまでその人が消費していったニ万円だけは、
どこかに物資の需要が減る訳である。その分、国家の生産力はそれだけ低下してしまう。
故に国家経済より見れば、五万円の生活をする余裕ある人には、それだけの生活をして貰ったほうがいいのである。
また、別の例えをすると、仮にある人が待合へ行って、芸者を招いたり、贅沢な料理を食べたりして二千円を消費したとする。
これは風紀道徳の上から言えば、褒められたことではなかろうが、ここで使われた金はどういう風に散らばっていくのか。
料理代となった部分は料理人等の給料の一部分となる。
また料理に使われた魚類、肉類、野菜類、調味品等の代価及びそれらの運搬費並びに商人の稼ぎとして支払われる。
この分は、彼らの衣食住その他の費用に充てる。
それから芸者代として支払われた金は、その一部は芸者の手に渡って、
食料、納税、衣服、化粧品、その他の代償として支払われる。
もし今この人が待合に行くのを止めて、二千円を節約したとすればどうだろう。
この人個人にとっては二千円の貯蓄ができ、銀行の預金が増えるがそれだけだ。その金の効果は二千円しかない。
しかるに、この人が待合で使ったとすれば、その金は転々して、農家、工員、商人、漁業者等の手に渡る。
それがまた諸々の産業の上に、何十倍にもなって働く。
故に、個人経済から言えば、節約をすることは、その人にとっては誠に結構であるが、
国家経済から言えば、金を使った方が、同一の金が何十倍にもわたって働くので望ましいのである。
これが個人経済と国家経済との違いなのだ。
もっとも、これは極端な例ではある。
要は、個人経済から見る場合と、国家経済から見る場合は大きな違いがあると言うことだ。

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2023年04月08日

Posted by ブクログ

高橋是清自伝上下巻に続く自伝です。是清の言葉には含蓄があり首肯するところが大でした。当時、蔵相経験者として是清が思っていたことを知ることができるのも良いのですが、趣味や日常生活の話もしているのが興味深かったです。最新刊なのでかなづかいも現代に近いので比較的読みやすい印象を受けました。

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2018年11月11日

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