あらすじ
松下幸之助に「美しい経済人」と呼ばれた経営者・大原總一郎――。日本初の合成繊維の事業化をめざし、国交回復前の中国へのプラント輸出に挑戦。激動の昭和をひたむきに生き、数々の分野でシェアNo.1を誇る企業=現在のクラレを作り上げた男の生涯を描いたノンフィクションノベル。 『世界的メーカーに、日本のメーカーが勝てるか否かの戦いです。負けるわけにはいかない』私は、現在の日本の経営者の多くが目先の企業利益追求に汲々とする余り、かえってグローバル化の時代に取り残されているのではないかと懸念している。そんな彼らに「大原總一郎を見よ!」と言いたい。一企業の利益ではなく、社会全体の利益を追求するのが経営者の使命なのだと大原總一郎は教えてくれる。――「あとがき」より
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Posted by ブクログ
「天あり、命あり 百年先が見えた経営者 大原總一郎伝」江上剛
子孫というものは祖先を訂正する為にある。祖先の欠点をよく見て、それを批判して、訂正する事が義務である。
人間がその人の全ての財産。その他のものは益にはならず害になる。だから人間に生まれてきた以上、真の人間たるように努力しなければならない。
苦難苦労の先に幸福あり。光明あり。安全の道には進歩も工夫もなし。
戦争は軍人と政治家が起こした。私たちは上からの命令に唯々諾々と従ってしまった。この事を大いに反省すべき。新しい日本はもっと私たち民間の経営者が国造りに参加しなければならない。官にばかり任せず民間から、草の根の力で国を造らねばならない。
真に恃むべきものは、自らのうちにある力のみである事を忘れるならば、それだけで将来の一切の希望を放棄すると同様の結果になる。
技術革新、イノベーションがなければ本当の経済発展はない。経営の合理化だけでは無理で、技術革新を伴った経済発展が必要。
10人のうち5人が賛成するような事は手遅れ。10人のうち2人がやるべきと言った時が今やるべき時。
会社とすれば、「社会的によい人で組織的に有能な人」が常識的で使いやすい。「個人的によい人」で「個人的に有能な人」は個性が強くて組織から弾かれてしまいがちだが、その人を大事にしないとパイオニアとなる人を見逃す。異能異端を歓迎する事。
日本が国際社会で認められ、再び輝く為には技術立国であるべき。独自の新しいイノベーションを起こしてこそ真の発展がある。
科学、技術、教育、芸術を尊重し、それらが融合して人間の価値を高める事が経営の本筋である。
経営者の責任というものは、社会に何も生み出さずに利益を上げる事ではなく、技術革新による利潤、社会や国民経済に貢献する事によって得られる利潤でなければならない。
人間は何かをやりだすと必ず壁にぶつかる。普通の人間はそこで止めてしまうかいい加減になってしまう。しかし、人間はそこからが大事。壁をぶち破っていく事が大事。
企業とは利益を上げるだけで責任を果たした事にならない。社会的責任がある。一言で言えば、国民経済的な役割を担いながら発展する事。
日本は経済発展優先で景観も文化も歴史も何もかも破壊されつつある。しかし、経済発展と環境との調和こそが重要。
外国に投資する際には、その国の国民の利益を優先する事。資本家の利益追求にしてはならない。企業の利益は社会に貢献した事の対価であるべき。
クラレ社訓
「我らは事業共同体の精華を高揚し、産業の新階梯を創成して、国家社会に奉仕する事を期する。
我らは謙虚を旨とし、進取闊達の気象と不屈の闘魂をもって事にあたる。
我らは合理と秩序の精神を貫き、同心協力しておのおのその職責を完遂する。」
世の為人の為、他人のやらない事をやる。
私は私の義務を果たしたいと思う。いくばくかの利益の為に、私の思想を売る意思を持ってはいない。
この世に招かれ、いくばくかの義務、役割、責任というものを果たし、一方で自在に楽しみ、そして再び天に帰る。この繰り返しなのである。
死生、命あり。富貴、天にあり。
私たちは、なんらかの果たすべき義務を担って天からこの世に遣わされてきて、その義務を果たした後に天に召される。
Posted by ブクログ
政府やアメリカに逆らって、儲けではなく世のため人のために、会社を公器として成長させたクラレの二代目。本当に凄いなぁと思ったが、感動!とまでは行かなかった。