あらすじ
2009年、経営危機に陥り、米企業傘下から外れた小さな自動車会社では、久々に日本人デザイン部長が誕生。全車種のデザインプロセス一新を断行し、新製品は欧州を中心に海外市場で人気を獲得。マツダのモノづくりの根底にあるコンセプトの「魂動」は、今や海外メディアからも“KODO”と呼ばれるほどの地位を確立した。一地方の企業が世界と戦えるのはなぜか。これからの製造業の在り方を体現するリーダーの哲学がベールを脱ぐ。
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街中でマツダ車をみると、おっ、なんかいいなあと最近思う。また、マツダ車だと一目でわかる。
そんな、マツダ車のデザインにあるブランディングについての考え方がよくわかった。
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デザインへの想いが詰まっていて良かったです。
デザイン駆動型開発って感じました。
ドイツも日本同様にミニマリズムの美意識があるが、異なるミニマリズムである主張にグッとくるものがありました。
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マツダ本の中でも圧倒的に面白い。スカイアクティブは触れられてきたが、同時に始まったデザイン革新についてはあまり触れられてこなかった中、張本人が濃密に語り尽くした。デザインそのものや産みの苦しみだけでなく、デザインの一貫性独立性を確保するための組織間の縄張りまで緻密に描かれている。
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フォード体制から日本人生え抜きのチーフデザインオフィサーになった前田育男が、マツダのデザインをCIとして再生し、再構築していく物語。「大切なものは自分の中にある」。魂動デザインを作り出すために、マツダの歴史をひもとき、アイデンティティーから説き起こすことによって、持続的にマツダデザインを確固たるものにすることに成功した。市場調査をやめ、作り手起点のメッセージを伝えることで、差異化を図ろうとした賭けは幸いにして成功した。部下からボトムアップでデザインを考えさせていくなど、チームの成功を第一としているが、サラブレッド臭が垣間見えるのは彼のキャラクターなのか。
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マツダ車。
10数年前、ビアンテという車を見たとき、なんてダサい車だろう、誰がこんなものにOK出したんだ、と思った記憶がある。
最近のマツダ車、どれを見てもカッコいい。
ディーラーもさっぱりしていい。
ユーノスロードスターに乗ってたころ、マツダのディーラーに行ってその芋臭さに驚いたことがあるが、確かに変わった。
全てが。
一車種だけが、優れているなら、それはまぁたまにはあることだろうけど、全てを洗練させ、それを継続することは、まぐれではできないことではないか、と思い、マツダの変化の背景を知りたいと思うようになった。そしてこの本に出会った。
書かれていることに、特別なことはなにもなかった。
ブランド論として、よく言われていることを、泥臭く、懸命にやり抜いている、ということと受け止めた。
そういうものなのかもしれない。
しかし、著者も、偶然この立場に立ち、活躍できているが、なにかが少しでも違えば、例えば年齢が数歳上でも下でも、この仕事にはついていないのではないか。
意思や努力、才能とは違うなにかが、人や組織を大きく規定しているんじゃないか、と強く感じた。
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複数ある自社のサービスのUIやUXをどう統合的にして行くか、あるいはUIやUXをどう競争優位性にしていくか、誰にそれを任せるかということを悩んでいた時に会社の人が「これを読むことをお勧めします」と言って渡してくれた本。上記のような課題についても参考になったが、何よりも現在のマツダのデザインがどのような経緯と着想によって作られていくかを理解していく中で、街ゆくマツダのCX-8とかDEMIOとかがカッコよく見えてくるようになっちゃうんだから、あら不思議、という内容だった。デザインはブランドを表し、ブランドは「語る」ことによって価値を増すことがよく理解できた。
元々の課題について最も参考になったのは、マツダのデザインのコンセプトを「鼓動」→「魂動」という文字にし、今度はそれを「ご神体」と呼ばれる抽象的な彫刻で表して全デザイナーに共有、それを最後は「SHINARI」というコンセプトカーに仕上げることにより「これからのマツダのデザインはこの路線」というのを社内外に示した一連の作業の部分。これは、ぜひとも会社でもやるべきだと思いました。
CX-8,かっこいいなぁー。
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ブランドは、その企業のアイデンティティ
つまり、内側にある本質、信念や志であり
最上位概念である。経営は未来への展望を
見せる必要があり、ワクワクするモノが
必要である。消費者が欲しいモノに企業が
寄せていく必要は無く、企業の志に基づい
た、メーカーの意志を示す商品を提供する。
それを提供するには、高いハードルや苦労
が好きで自主的にそれに挑む変態社員が
必要である。そして、言葉と形、両輪が人
の心を動かす。
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「魂動 KODO」2009年
カタチと言葉でイメージを共有する。
生命感を表現する。
「靭 SHINARI」2010年
野生のチーターから立体のフォルムに落とし込む。
ブランドは作品から作る
デザイン決定権、さらにブランドを
マーケティングから、ものづくりの側に移管
プロトタイプ市場調査を中止、ビジョンモデルの調査へ
アテンザのやり直し=SHINARI化
Aピラーを100ミリ後退させた。
同じFORDグループのVolvo
ヘリテージからブランドを確立しつつある。
共創
感動で人を動かす。
成功体験の継続。
アンベール体験。
技能評価「匠モデラー」
クレイの削りと同じ流れに沿って、金型を磨く。
前田スタイル
明確な目標はあるが、明確な答えはない。
マツダというブランド
世界の名車たちが居並ぶ場所まで引き上げる。
要素全てに未来を継いでいく人たちに宿題を出す。
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本書にはマツダの"魂動"デザインがどのようにして誕生したのか、その経緯や葛藤について記述されている。特に強く印象に残っているのは2箇所。
「私に言わせれば、大事なものは常に外ではなく自分たちの中にある。(p.53)」、「他人の言っていることを受け入れられなくなってしまった瞬間からもう自分しか残らないわけで、その人はそこ止まりですよ、だから常に耳は謙虚でいることが大事。(p.227)」
マツダのデザイン、アイデンティティ、ブランドを追求していく過程において、大切であったのは他社や顧客を向いた外部的な思考ではなく、自分たちの歴史を振り返るというシンプルな内向きの思考であった。これはシンプルなことであるが、内省を深めるというのは非常に手間のかかる、膨大な工程だったと想像する。
今後企業の競争優位性はデザインにシフトいく、という議論があちこちで行われている近年、誰よりも鋭敏な感覚を持ち、それを具現化することのできるデザイナーと共創していくことの重要性が増していくと考えられる。言語化できる/できないという壁を越え、どこよりもこだわり抜いた作品を提供し続けるマツダの動向を今後も追っていきたい。
Posted by ブクログ
デザインのお勉強。
つまりブランドには、一定の「様式(スタイル)」というものが不可欠なのである。様式はどんな細かなものにでも適用される。キーフォント、キーカラー、キービジュアル、広告の打ち出し方、ネーミングのセンス、車であれば販売店の建築様式、店のインテリア、販売員の制服、話し方、営業方法……どれも適当に決められてはいけない。すべては「会社のブランド・アイデンティティがこうだから、こうなのだ」という必然性の下に設定されなければならない。
新設されたブランドスタイル統括部は、そういったブランド様式にまつわるトーン&マナーをルール化していく部署である。これまで、広告部、宣伝営業部、販売店など部署ごとに決めていたものを一括し、一元的に管理すること。これによってブランドイメージの拡散を防ぎ、「どこを切ってもマツダらしい」という一貫性がだいぶ表現できるようになった。
私にとってブランドとは何か?私にとってブランドとは、「われわれはこのように生きていく、こうした志でビジネスをやっていく」という宣言のようなもので、ブランドスタイルとはそれを目に見える形で表現した様式である。そこには仕事に対する考え方も、会社の歴史も、職人たちの技能もすべてが含まれている。企業にとっては魂そのものであり、いくら商品が変わっても、役員の面々が変わっても、それは未来永劫生き続けていく。ブランドだけは朽ちることなく残るのだ。
ではチームをまとめるために必要だったものは何か?まず、何はなくても成功体験である。
私は人を動かすための一番強力な手段は、その人を感動させることだと考える。
大事なのは常にチームなのだ。…
自分が褒められるより、チームが褒められる方が断然嬉しい。―もしかしてリーダーに一番必要なのはそういう資質なのかもしれない。
前田はどういう人か?魂動デザインの本質を作り上げたのは前田ですけど、まわりのデザイナーやクレイモデラーの理解や協力なしでは魂動デザインは生まれなかったと思うんです。ある意味、前田は自分の想いを伝えながら周囲をリードしていく存在というか。「おまえらもちゃんと考えろよ」とチャレンジさせつつ、「いいものはいい、悪いものは悪い」としっかりジャッジを下し、いつの間にか自分の目指すゾーンに引き込んでいる。はっきり答えを明示するのではなく、ぼんやりとした方向性を示した上で、明確なゴールはまわりのスタッフと一緒に作っていく……
そこでわれわれは発想の転換を行いました。先にデザイナーがイメージを作って生産にバトンタッチする方式ではなく、最初の段階からデザイナーやエンジニア、生産担当者など塗装に関係するスペシャリストが一堂に会して、みんなで一緒に作ったらどうだろう、と。…
…つまり、みんながハラオチした上で「どうやってこの理想を手に入れるか?」という共通の目標に向かっていくやり方に変えたのです。
それはエンジニア側の意識も大きく変えました。今、彼らは「作りたいものを作るために技術を作る」という考え方が主流になっています。「まずは理想。そのために現実を変えていく」という志向が一般的になったのです。
さらにそれは部署間の連携も変えました。これまでマツダの各部署は自分たちを守るため、そして他部署から責められないため、リスクはなるべく回避する傾向にありました。しかし、各部署が閉じていたのでは真の”共創”は成立しません。それを打ち破るにはタスクチームに対する信頼―何かあれば必ずみんながサポートしてくれる安心感―が必要になります。マネジメント側が高みを目指すタスクチームをサポートする姿勢を打ち出したこともあって、今、社内には新しいことにチャレンジできる気運が高まっています。