【感想・ネタバレ】アクシデント・レポートのレビュー

あらすじ

御巣鷹山の悲劇は空前絶後ではなかった。しかも今度は一機だけでなく、ブラックボックスが見つからず真相は闇に覆われる。事故関係者と遺族、生存者の証言から浮かび上がる人間模様、政府と企業の体たらく、文化芸能、沖縄・原発の問題、そして隠されたこと。刊行自体が「アクシデント」な劇薬小説。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

事実と真実、様々な人間たちの主観や思いが交差していく。それぞれの信じたいものや気持ちのよるべきところは違うから多種多様でまったく色合いが違うものが同じように立ち上がってくる。ある事実について語ること、あるいは真相を確かめようと望むこと、人の数だけ真実がある。信用できない語り部とは違う、Google的な無限な言葉の羅列は幾層にも交差し絡み合うから見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞くことになる。
多様な知りたくない事柄や意見は自分達を惑わすから敵認定や陰謀だと敵視するか嘲笑うように攻撃して貶めていく。グローバリズムの波は自分達の所在なさに、あるいは「私」というものに振り回されている人には防御壁として愛国だとか言い出して国家や歴史になんにもない「私」をなんとか持ちこたえる担保にしていってしまった。国家や歴史を「私」を支える土台を期待してはいけない。それはいつでも反転し覆るし、当然のように繋ぎ目のようなパテみたいな嘘が入り込む。
多くの声は自分以外の命であり視野の可能性でありノイズだ。「私」たち自身の声も同様に他者にはノイズだ。世界はノイズで満ちている。それを消し去り自分たちにとって心地いい声だけが響き渡る世界なんて嘘しかない。ノイズは現在だけではなく、過去からも未来からも響いて世界を構築している。君のノイズも僕のノイズもあなたのノイズも同じように意味があり同時に意味のないノイズだ。自分以外の、自分達以外のノイズが消えた世界を求めるならそれは不可能だ。世界は不協和音といくつもの層が同時に存在しているから。この本に綴られているのはいくつものノイズ、だからこそ自分の物語ではない他者の物語や声を聞くことができる。

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2017年11月27日

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