【感想・ネタバレ】ヤイトスエッドのレビュー

あらすじ

近所に憧れの老作家・坂下宙(ちゅ)ぅ吉(きち)が引っ越してきた。私は宙ぅ吉のデビュー作「三つ編み腋毛(わきげ)」を再読する。そして少しでも彼に近付きたいという思いを強くして──「イナセ一戸建」を含む六篇のほか、文庫版特別書下しとして、作中登場する坂下宙ぅ吉のデビュー作「三つ編み腋毛(抄)」を収録した全七篇。淫靡な芳香を放つ狂気を描く、幻の短篇集が待望の文庫化。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

清潔と不潔。
浄と不浄。
きれいはきたない、きたないはきれい。
下種は聖。
これらはつまり極端は対極に転じ得るということだ。
(中島らもと通ずると思うが、ふたりを並べた論は見たことがない。)

男は女を犯すとき、女になって男に犯されたいと夢想する。
女はマゾヒスティックな殉教を夢見る。
すなわち男とは別文脈で受け容れる(ように見える)。
男も女も、対する女と男に、過剰な願望を押し付けて、それが裏切られては怒り失望するしかないのだ。

「B39」と「B39-Ⅱ」の関係は連作の極北。
大げさではなく世界が反転するんだもの。びっくりした。

ところでかつて「ハリガネムシ」でウンコを握り潰す場面を読んだ私は、「小説の描写とはこれだ!」と教えられたものだが、
「不浄道」ではなんと、ウンコを壁に投げつける!!
狂気すれすれだが一ミリだけあちらがわに行ってしまっ(て皮一枚をたよりになんとかぎりぎり戻ってき)たようで感慨深い。
(連想される「はだしのゲン」の糞垂れ流す将校は、ミリ単位ではなくあちらがわ)

芥川賞は功罪両面を併せ持つが、この作家をフックアップしたのだから、やっぱり偉大なのだ。

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2018年05月24日

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