あらすじ
ブロードウェイで男たちを手玉に取りつづけてきた美しきマーガレット・オウデルが、密室で無残に殺害される。カナリアというあだ名の元女優殺人事件の容疑者は、わずかに四人。彼らのアリバイはいずれも欠陥があるが、犯人の決め手の証拠はひとつもなかった。矛盾だらけで不可解きわまりなく、ほかに類を見ない犯罪に挑むのは、名探偵ファイロ・ヴァンス。独自の推理手法で犯人を突き止めようとするのだが……。『ベンスン殺人事件』で颯爽とデビューしたヴァン・ダインが名声を確固たらしめたシリーズ第2弾。/解説=三橋曉
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Posted by ブクログ
クリスティの「アクロイド殺し」が1926年、本作が1927年ということで録音による偽装をネタにした作品が前後して発表されていて、タイミング的にはパクリではなく偶然らしい。現代ではテクノロジーが何かとミステリーの成立を阻んでしまいそうだが当時はその辺をどう取り入れるか考えるの楽しかったんだろうな、と微笑ましい。「アクロイド殺し」が少し先且つポレミックな超有名作のため割を食ってしまっている面があると思うが、ネタバレすると絵的に間が抜けていてしかも犯人の行動があわただしすぎ無理があるクリスティ作品(徐々に犯人が分かってくるところは相当ドキドキして傑作には違いないけど)に対し、こちらは(凡そ見当はつけていたはずながら)ベートーヴェンのレコードをかけても局が始まらずしばらくすると突然悲鳴が響き渡り、犯行が決定的になる辺にぞわっとする迫力があるし、容疑者を集めてポーカーxプロファイリングで犯人確定も斬新で面白かった。伝説の女優ルイーズ・ブルックス主演でサイレント映画があるがさすがに古すぎて最初だけ見てやめた。。。
Posted by ブクログ
犯人に信念があって潔さもあり、好みだった。
終盤の犯人探しで、わざわざ犯人候補者を集めてポーカーゲームをさせて、その勝負の仕方で性格を見て犯人像に当て嵌めるというのは面白かった。
また、じわじわと犯人候補者が増えていく様も、他作品より飽きにくさがあり良かった。(どうも長編推理小説は出だしと終盤が面白くて中盤退屈になるものがそこそこあるので)
芸術作品の本物と模写の違いについて語っているのが今のSNSでも語られるような内容で面白かった。
「どんな芸術作品にも、本物ならば、批評家が言うところの鋭気なる資質がものだーーつまり、熱意や自発性だね。模写や模倣にはそのきわだつ特徴が欠けているんだ。完璧すぎる、入念すぎる、正確すぎる。いかに賢明なる法学の徒といえども、ボッティチェリにもへたなデッサンがあり、ルーベンスにもプロポーションの狂いがあるってことは知ってるんじゃないか?オリジナル作品にはね、そんな瑕疵など問題じゃない。だが、模倣者は決してきずをつけようとしない。思い切ったことができないんだーー」p169
Posted by ブクログ
ニューヨークのフォーリーズで活躍してカナリヤという愛称のあった美女(今で言うラウンジ嬢とかプロ彼女?)が殺された事件のお話。
犯人は妻子持ちのおじさんだった。レコードに女声で台詞を吹き込み女性が生きてるように見せかけて殺害時刻を偽装した。
殺人を実行している時にワードローブ内にカナリヤを恐喝しにきた別の男が隠れていたことが話をややこしこくさせていた。
探偵ヴァンスの「自分の生命はその当人のもので、当人が好きなようにしてよい。(中略)僕は、むしろ自殺は人間に残された唯一の権利だとまでいいたいくらいだよ」という思想のもと、犯人は拳銃で自殺して幕。
Posted by ブクログ
カナリアと呼ばれたブロードウェイの女優が、自室で絞殺される。部屋は激しく荒らされ、完全な密室だった。事件の晩に男と出掛けた後自室に戻ってからは、誰も部屋には入っていないとメイドや電話交換手たちは証言する。
検事マーカムに呼び出された探偵ファイロ・ヴァンスは、こじ開けられた宝石箱やわざと倒されたランプなど、荒らされた部屋の中の様々な矛盾を指摘する一方、カナリアと関係の深かった男たちを取り調べていく。
カナリアと関係のある男たちは誰しもが何かを隠していたり、微罪を犯していたりする。事件の晩も自然とカナリアのもとに引き寄せられるなど、死に際しても男たちを翻弄するカナリア。
クローゼットに隠れ、目の前で起こる凶行を息を殺して見ているしかなかったスキールの恐怖がヴァンスの語り口で臨場感たっぷりに表現されている。ポーカーで殺人者としての適性を測ろうとするところが興味深かった。
このシリーズの面白い、と言うより不思議なところは、一応ヴァンの一人称視点なのだがヴァンスがヴァンに話しかけることはめったにないので、ヴァンスとマーカムのコンビを三人称視点で見ている感じになっている点。