あらすじ
「とりあえずニュースを出せ」
東西スポーツで、スクープを連発し異彩を放つ一匹狼の野球面デスク・鳥飼義伸。
異常ともいえるほどスクープに飢えたその姿勢、編集局長から新人まで関係なく叱り飛ばす尊大な態度……。
周囲の人たちは、彼の口癖にひっかけて軽蔑と畏敬の念を込めて「トリダシ」と呼ぶ――。
各球団の人事情報にまで口をだし「影のGM(ゼネラルマネージャー)」と呼ばれ、他紙から恐れられる存在のトリダシは、「なぜ、彼はそこまで〈スポーツ新聞〉、そして〈スクープ〉にこだわり続けるのか?
トリダシには、以前、上司に煙たがられ、一般紙の社会部に転属した過去があった。
上からは煙たがられ、下からは恐れられるトリダシとは、いったい何者なのか。
そして、トリダシは、なぜ選手や監督の信頼を勝ち取り、かつ安心して口を開かせて、スクープを取りつづけることができるのか。
女性部下、元野球選手の記者、ライバル紙のエース、球団関係者、一般紙時代の過去を知る同僚、デスクなどの視点から、トリダシの実像とともに、丁々発止の知られざるスポーツ記者の世界の裏を炙り出していく連作短編集。
『ノーバディノウズ』でサムライジャパン野球文学賞、『サイレントステップ』で馬事文化賞候補と、玄人筋から絶賛される本城雅人が、満を持して自らの職業だったスポーツ記者ものに挑んだ勝負作。
横山秀夫氏も絶賛!
「この作者は巧みな投手だ。球筋の読めない心理戦に翻弄された。」
解説・内田剛
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「とりあえずニュースを出せ」が口癖の、優秀だが敵も多いスポーツ新聞デスク鳥飼。彼に翻弄されながらも魅了される同僚たちの臨場感溢れるスポーツ紙の現場を描く人間ドラマ。
近年に現実に起こった出来事をモチーフにしているので、物語が物凄くリアルである。「宅配契約で自動的に配られる一般紙ではなく、駅のスタンド売りで面白い見出しでなければ見向きもされないスポーツ紙は、読ませるのではなく買わせる心意気で作られる」って言葉がとても深い。
Posted by ブクログ
スポーツ新聞を舞台に、記者の取材合戦、社内での反目、他紙との競争、一般紙との軋轢、そんな状況の中での「トリダシ」の存在感。
個人プレイとチームプレイ。
スポーツ新聞記者の矜持と悲哀が感じられる。
Posted by ブクログ
「とりあえずニュース出せ」、略して「トリダシ」が口癖のスポーツ新聞のデスク、鳥飼。ニュースネタに対する執着心は誰もが一目置くが、口の悪さとワンマンプレーで敵も多い。
そんな鳥飼を中心として、特ダネをめぐるスポーツ紙記者たちの取材合戦が描かれる連作短編集。記者たちの激しい騙し合い、主導権争いの中、鳥飼は常に俯瞰的視点を崩さない。そんな余裕のある態度が周囲をさらに混乱させる。
新聞記者にとって特ダネは麻薬だ。麻薬のためなら何でもやる。かつての鳥飼もそうだった。が、記者をまとめる管理職となれば、記者よりも会社の都合を優先させる時もあるし、自分から火の中へ突っ込んでいくこともある。そして、そんな努力や苦労を見せないことも重要だ。
抜きつ抜かれつの特ダネ争い。記者ってのは大変な職業だ。