あらすじ
三田村慎平は転職先の児童養護施設で働き始めて早々、壁にぶつかる。生活態度も成績も良好、職員との関係もいい“問題のない子供”として知られる16歳の谷村奏子が、なぜか慎平にだけ心を固く閉ざしてしまったのだ。想いがつらなり響く時、昨日と違う明日がやってくる。先輩職員らに囲まれて成長する日々を優しい目線で描くドラマティック長篇。
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Posted by ブクログ
印象に残った文
『「施設のこと知りもしない奴に、どうしてかわいそうなんて哀れまれなきゃいけないの!? —— どうして、」
奏子が言葉を切った。言葉が見つからないのではなく、言葉があふれすぎて却ってつっかえたのだと分かった。
「かわいそうな子供に優しくしてやろうって自己満足にわたしたちが付き合わなきゃいけないの!? わたしたちは、ここで普通に暮らしてるだけなのに!わたしたちにとって、施設がどういう場所かも知らないくせに!」』
『人には人の数だけ事情があって、環境がある。「あしたの家」だけとってみても、子供たちがここにやってきた理由は様々だ。世界が違うのではなく、同じ世界に住まう人にもいろんな事情があることを知らなかった。』
Posted by ブクログ
サラリーマン生活を辞め、90人ほどの子供が住んでいる児童養護施設の教諭になった若者、三田村慎平が主人公。彼の熱血さが施設の職員や子供たち相手に最初は空回りするものの、だんだんと気持ちが浸透して環境が変わってくる。
子供たちの置かれた環境はさまざまであるが、哀れみとか可哀想とか思わないで欲しい。幸せの感じ方は人それぞれだということが何回か出てくる。
子供たちの環境と将来に向けての不安、対する職員の優しい本心…いくつかのエピソードに涙腺が崩壊した。素晴らしい小説でした。
新米教諭だった慎平が先輩になり、後輩を指導していくシーンで終わるのに胸が熱くなりました。
以下ネタバレです。
実はこの小説は児童養護施設にいた大学生が、このような施設をテーマに小説を書いて欲しいと有川浩さんに手紙を書き、実現したらしい。(その学生さんが解説を書いている)本文中にも物語の中で、施設の女子が作家に向けた手紙を出すシーンがあり、この構成には感動しました。