あらすじ
「美しさ」は、これほどまでに人を狂わすのか。たかむら画廊の青年専務・篁(たかむら)一輝と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長逗留していた。妊婦としての生活に鬱々(うつうつ)とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗画廊で、一枚の絵に心を奪われる。強い磁力を放つその絵の作者は、まだ無名の若き女性画家だったのだが……。彼女の才能と「美」に翻弄される人々の隆盛と凋落を艶やかに描く、著者新境地の衝撃作。解説:大森望
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Posted by ブクログ
大好きな原田マハさんの作品。
美術を題材にしているマハさんの作品ですが、私がこれまで読んでいた前向きだったり明るくなれる内容とは大きく異なり、どこか怪しく引き込まれていきました。
東日本大震災の東京が最初の舞台で、もう15年も前のことを思い出しながら、読み始めました。同時に、私にとっては三回ほどしか訪れたことのない京都で、この物語は繰り広げられていきます。
え、この人が?あの人が?と読み進めるうちに、予想もしなかった色々なことが明らかに…。菜穂と母親の関係、一輝と義母の関係、照山と樹の関係、さらには樹と菜穂の関係。驚きの連続。ひとつも想像しませんでした。
怪しい中にも、やっぱりマハさんの視点での美術の物語が展開されていくのが私は好きで、どんどん読み進めたくなり、あっという間に読んでしまいました。
Posted by ブクログ
すさまじいものを読んでしまった。
美術品が、京都が、人を狂わせるさまをまざまざと見せつけられた。
その狂いに正しいも間違いもないのだと思う。
それだけ人を突き動かすものがあるのなら、それに身を任せてしまうのもよいのかもしれないと思わされた。
登場人物たちにあった生々しさがとても良かった。彼らを人間らしく、汚ささえ覚える部分すら愛おしく見せていた。
菜穂も、樹も、産みの母に似ている。
2人の男性と関係を持ち、それぞれの子どもを産んだその衝動性のようなものを、2人とも受け継いでいるだろう。
一輝の頼りなさも、きっと「仕方ないわね」と許してしまえる女性はいたのだろう。それは菜穂ではなかったし、菜穂は強かった。ひとりで生きていけるし、生きていこうと思える人だった。
克子には、愛されていたい、必要とされたいという欲が見えた。有吉家にいたいから“夫の不義の子”を受け入れたし、一輝に求められても突っぱねたりしなかった。何より、克子から一輝を求めていた。
人の生き様に正解も不正解も、善し悪しもない。
それならば菜穂のように素直に生きてみるのも悪くないのかも、と思わされた。
何度も読み返したくなる本だった。
Posted by ブクログ
歴史と趣のある京都の静けさが文から感じられ、題材も相まって上質で豊かなものに触れているような気分にさせてくれる小説でした。
途中までは、星5をつけたいくらいの気持ちでしたが、終盤の「そんな偶然ないでしょ」と突っ込みたくなる展開(巡り会った菜穂と樹が異父姉妹)が残念でした。
また、異父姉妹にしたことによって、菜穂が樹の絵に取り憑かれたように魅せられたのは、結局「異父姉妹だったから?」とも読めてしまいました。樹の芸術の魅力に菜穂が純粋に取り憑かれた形にした方が、アートのもつ圧倒的な力を感じる作品になったのにと残念です。
また、「実は運命だった」というような関係性を示しておきながら、最後に菜穂と樹がどうなったのかは示されず、終盤は脇役化してきた一樹の目線であっけなく終わってしまったのも、長編の小説の割にラストがあっさりしすぎであるように感じ残念でした。
Posted by ブクログ
美術に造詣の深い方とあって、登場する絵画も京都の情景描写も素敵。ただ、肝心のお話が……?
【己の美学を貫いた女性が、他の人の助けを借りながらも、しがらみを振り切って前に進んでいく話】とすれば非常に聞こえは良いんだけれども、彼女がしがらみとして捨て去った中には自分のことを少なからず考えてくれてもいた旦那もいて、自分の子で無くとも育てあげた父がいて……。
言動が、社会の事と周り(家族)が見えて無いお嬢ちゃんって感じ。著者・原田マハが述べた【強い女性】はそこにいない。いうなれば【気骨のある甘ったれお嬢様、我が道を行く】です。
姉妹が赤子を挟んで笑いあう最後も素敵なんだけれども、うーん。本当にそれで良いの?
このままなら菜穂は、成長した己の娘にしっかり怒られる日が来ると思う。
Posted by ブクログ
日本が舞台の美術をめぐる原田マハ作品。
忖度抜きの評価を下すなら期待は超えてこなかった。東京に根を張ってきた菜穂が大震災による原発問題を機に京都に居候することから始まる展開。
京都特有の縁故を重んじ、独特の街並みや文化、価値観に対して夫である一輝と菜穂の感じ方に徐々にギャップが生まれる構図。
小さな問題がいくつか起こり、最終的に大きな問題に直面するというストーリーは小説としては王道の展開なのだが、睡蓮売却とか倒産の危機がご都合主義のパンチ力が個人的に弱く感じてしまった。
あと、京都を意識したであろう落ち着きのある文体が逆にあまり盛り上がれなかった。