【感想・ネタバレ】生命とは何か 物理的にみた生細胞のレビュー

あらすじ

量子力学を創始し、原子物理学の基礎を築いた人が追究した生命の本質とは? 本書は分子生物学の生みの親となった20世紀の名著である。生物現象ことに遺伝のしくみと染色体行動における物質の構造と法則を物理学と化学で説明し、生物における意義を究明する。負のエントロピー論や終章の哲学観など今も議論を呼ぶ科学の古典。

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Posted by ブクログ

名著です。分かりやすく読めてホッとした。とにかくブラウン運動や量子力学の話は身近にあるものに例えると理解力が追いついていく。化石の時代の自分からしたら精子の話とか初めて知った訳だけど、今でもこんなに細かく説明される事はないと思う。主に植物の受精から育成にあたるまでの過程の話も抵抗なく読めた。X線が及ぼす突然変異の話も初耳だったけど、X線自体があまり体に良くないのは聞いていてそれが細胞レベルで問題なのも知れて良かった。男性と女性の染色体の仕組み(X、Y)も微妙に触れてはいたけど詳しい事は書かれてなくて少し残念。これは本当に名著!

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2025年12月07日

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内容は難しいが、分子生物学誕生の立役者となったシュレディンガーの名著に触れたことは純粋に嬉しい。ワトソンかクリックだったか、まさに本著を読んだことがきっかけで遺伝学に足を運んだというエピソードはうろ覚えしてる。
原子という生命体にとっての最小スケールの要素、そしてその原子が集まることで秩序を生み出し、生命を維持していく、その普通ゆえの偉大さを再認識。
物理学的な視点から生物学へ接近していくこの展開の仕方が、当時の時代的潮流に新鮮さを与えたのかとつらつら思ったり。

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2024年08月24日

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とにかく驚きなのは、DNA発見前に、物理的考察によってそのような構造の必要性を予言してたこと。なんでか高名な物理学者は晩年生物に興味を持ち始めるけど、シュレーディンガーはその中でも珍しく上手く行った例だと思う。

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2023年02月25日

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ネタバレ

量子力学を創造し、原子物理学の基礎を築いたシュレーディンガーが追及した生命の本質がまとめられた名著。

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2021年09月20日

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【きまじめな物理学者の探求】
本書が最初に出版されたのは1944年,まだ量子力学が疑いもない第一原理と認識されて間もない頃のことだ.ちなみにDNAの二重螺旋構造が提唱されたのはその10年後になる.

まだ生物が神秘的なベールに包まれていた時代だったとは思えないほど,恐れず物理学の立場に立って,現代の描像にも通じる議論が展開されている事には驚かずにはいられない.

【この著書の意義は何処に】
結論を一口に言ってしまうと,「生命はたんぱく質という頑丈な歯車によって動く,機械仕掛けである.それは複雑だけれど,物理法則と矛盾しない理解は可能になるはずだ」これだけ聞くと何と平凡な結論か!

経験的に「生物というものが居てもまぁ不思議はない」と捉えるごく普通の人にとっては,こんな結論を引き出すのに文庫本1冊をあてがう必要なんてないのかもしれない.

むしろこの本は,Schrodinger の言葉を借りれば「きまじめな物理学の徒」に対してこそ意義を持つと思う.「きまじめな物理学の徒」とは,量子力学を唯一無二の第1原理と信じて疑わず,しかも観測される全ての物理現象は,大数の法則により初めて秩序を獲得し,法則が見出されるという事実を或る程度理解している,そんな人々のことだ.

そんな「きまじめ屋」の前に生物なるものがひょっこり現れれば,彼の頭は疑問で溢れかえることになる事は想像に難くない.

生細胞を構成するたんぱく質の数は決して巨視的とは言えない.であるにも関わらず,それらが高度に分化し,秩序だった働きをするのはどうしてか.

遺伝子という疑いも無く微視的な代物が,これほど安定に受け継がれてゆくのはどうしてか.

生命に備わる,エントロピーを捨てる能力は,物理の視点からどう解釈されるべきか.

...などなど,上に挙げたどの疑問も,「物理学は全ての自然現象を線で結ばなきゃいけない」という立場からは是非とも答えたいものだ.

慎ましやかな物理学の立場から,それらやや卑怯な質問に対して真剣に骨折って議論したのが本書といえる.
思い切ってかいつまむ

この本の中心的興味は,
(1) 生命そのものの安定性は物理学で説明できるのか
(2) 秩序を保ち続ける生命活動は,何らかの物理法則に従うのか
の2つと言える.そして Schrodinger は(1)には yes と,そして (2) には maybe と答えたはずだ.

(1) に関しては,量子力学から導かれる分子の安定性こそが,生命を構成するたんぱく質の安定性に他ならない.遺伝や突然変異も,分子のエネルギー構造から説明される.
現代では「たんぱく質」が,より正確に DNA に置き換わるだけで,この描像は実に的を射ている.

そして(2) こそが,現在でも研究が続いているわけで,「未解決難問」のカテゴリーに属する.
僕の理解では,たぶん Schrodinger の考えは,
「生命活動は,量子力学にしたがって行われるに違いないが,それは決して統計によって秩序を得るものではない.
それゆえ,統計に頼らない緻密な理論が必要であり,現在の物理学はこの問題を扱うことが出来ない」
ということだと思う.

そもそも量子力学は,現在完成したといっても巨視的な系を十分満足に説明できるわけではない.
物性に限っても,強磁性や超伝導のメカニズムが共通認識になってきたのは最近の話だ.
しかもそれは巨視的な,「統計性」が前程にある系でしかない.

対して生命現象においては,一つ一つの分子がそれぞれに重要な役割を演じる歯車なのだから,「統計性」によって導かれる物理法則では歯が立たないわけだ.
たとえばエントロピーを減少させるという生命の驚異的メカニズムは,(生命は孤立系でないので熱力学的に矛盾は無いが!)あきらかに構成分子一つ一つの動力学によるものだ.

これは量子力学の限界というより,物理学者が地団駄している,と言った方が正しい気がする. Schrodinger も「我々の美しい統計理論は,(生命現象という)当面の問題を内包していないのです」と悔しそうに述べている.

でもだからこそ,生命は未知であると同時に魅力的な研究対象でありつづけるんだろう.
最近では,生物を複雑系の立場から研究する流れが強い.生命現象に共通な構造を現象論的に定式化しようという試みなんだと僕は思っている.
きっと,そういう現象論を物理学の第1原理でつなぎ合わせることが出来れば,Schrodinger への最上のはなむけになるんだろう.

(2009年ごろの自分の読書ログからの転載です。)

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2018年01月31日

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量子力学のシュレーディンガーが平易に生命の本質に迫ろうとする著。内容的にはわかりやすいところも多いですが、哲学的で理解困難な箇所(特にエピローグ)も多く、なかなか歯ごたえがあります。それはさておき、訳者あとがき214頁を読んで、福岡伸一先生のシュレーディンガー評に対する疑問と、福岡先生が言うところの「動的平衡」は植物ではどうなるんだろうという疑問についてのヒントを得たように思いました。なるほど、熱力学のエントロピーと情報のエントロピーは違いますよね。

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2015年05月31日

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生命とは何かという命題を物理学者として解明した、分子生物学の有りようを予言した書といえましょう。

冒頭から面白いことが書いてある「統計物理学からみて、生物と無生物とは構造が根本的に異なっている」
物理の法則は原始に関する統計に基づくものであり、近似的なものにしかすぎない。分子は個々にはばらばらに動いているが総体として統計を取ってみるとある法則にしたがって機能している。
ところがDNAは原始レベルまで踏み込んでいかないと解明できないのであります。この本はワトソン、クリックがDNAの構造、いわゆる二重螺旋を発表する10年前にかかれているのですが、遺伝子を安定な構造を持つ巨大分子であると推論し、非周期性結晶であるとしております。
いままであまり考えたことがなかったのですが、DNAの例の暗号は原子ひとつ分の差異で表現されているのです。原子の実際の大きさは黄色い光の波長の5000分の1から2000分の1だそうです。工学顕微鏡で認識できる最小単位のなかにさらに何十億の原子が詰っているということです。超ミクロの話なのに数字の単位は宇宙大です。
とりあえず読み上げたもののもう少し熟読が必要なまさしく古典といってよい本でしょう。

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2015年03月25日

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量子力学から生命を論じた本書。
ここでその内容などを記すと誤解を生みそうなので内容について興味がある方は他の感想を読むことをおすすめする。


身体について何か新しいことを学んだとき、自分の身体が自分のものでないような気がすることがある。
体内では電気信号で情報を伝達しており、今、手を動かしていることや、何かを考えていることはなんなのか。「私」というものはなんなのか、、

著者はエピローグで、「私」とは「経験や記憶を集めて絵を描く土台の生地だ」と言っている。
経験や記憶は日々書き換えられ、その絵は連続的に変化している。だからこそ多くの経験をした人は厚みのある人間になるのかもしれない。

また、生地上の絵は10年前とは全く違うものになっているかもしれないが、それが今の「私」であり、「私」というものは如何なる場合でも無くなることはない。人はそんなに簡単には変わらないし、表面を剥がせば汚い部分も綺麗な部分も見えてくる。

結局、私とはなんなのかという答えは分からないし、分かったところで日々変わるものだから分からなくていいのかもしれない。

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2025年05月13日

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分子生物学の入り口本。
人間など生物体が崩壊しないのは負エントロピーの摂取によるものという概念が面白い
福岡さんの動的平衡にも似た内容がある

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2025年04月19日

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 原書は1944年に出版されたそうだが、現代の科学、特に現在の大学教養レベルまでで学習する基本的かつ古典的な科学で分子生物学が簡潔に説明されており、一気に読むことができた。
 生物分野は遺伝の話が中心。DNA発見以前の本であり、当然のことである。しかし、この理論的背景を分子生物学が確立するはるか前に、波動物理と熱力学で物理的化学的に美しく説明できているのはさすがシュレディンガーである。

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2024年08月21日

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物理についても進化についても、今までのイメージが少し違っていたことがわかって面白かった。原子が無秩序に動くこととか、突然変異は「飛び離れた」変化であることとか。
後、「オスの蜂はでっかい精子」というのが面白かった笑

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2023年08月15日

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開始:2023/3/6
終了:2023/3/10

感想
生命は神秘に属するか。この論争は一生決着することはないかと思われる。人間の自由意志も同様。大数の法則と梵我一如。西洋と東洋。

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2023年03月10日

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生命(正確には遺伝子と呼ぶべきか)の秩序の驚くべき永続性はまさに量子力学から来るものであるという、我々が実感できる生命の神秘を(ミクロな)物理学の理論によって説明する一連の流れに大いに興奮を覚えた。
著者は必ずしも物理学に明るくない一般読者を想定していたようだが、やはりこの興奮は実際に物理学を学んでこそではないだろうかと思う。
そうは言っても生命の神秘と聞いて心躍る人間は誰しも是非一度読んでほしいと感じる本だった。

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2022年06月15日

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物理学者の彼が、なるべく専門用語に走らず一般向けに書こうとしたことが伺えて、人柄に親しみを持った。とはいえ数式が出てくる箇所はさっぱりわからない。
でも本を通して、生命が無秩序に向かう大きな流れに抗いながら生命として存在していること、いずれは必ず永久に何も動かない状態(死)に至るということを想像した

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2022年05月22日

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生物学の知識皆無だったので、少し勉強しながら読みました。
生命活動、心の働きさえも、「原子の運動」であり、自然法則に従って成り立つものだということを改めて認識させられます。
1944当時の物理学者の視点、生化学は未発達であり、未知のものに対する戸惑いなど、なまなましさが感じられました。
議論の進め方が丁寧、こういうのを論理的というんですね。
第六章の負エントロピーの話は物理学者の指摘で、なかなかおもしろい。
再読します

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2021年06月15日

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シュレーディンガーの波動方程式で量子力学の礎を築いた物理学の泰斗が生命の仕組みについて考察した古典的名著です。

生命の遺伝の仕組みや生命活動について、真摯で誠実な筆致で論じており、久々にじっくりと味わいながら読み進むことが出来ました。

古典を読むと、本当にその著者と書斎で対話をしているような気分になれます。

自然界の物理法則が、無秩序で拡散する傾向を持つ中で
非周期性の結晶である遺伝子が生命の情報を堅牢に守り伝え進化させる。

また、生命は周りの秩序(非エントロピー)を取り込んで崩壊して無秩序になるのを防いでいる、自然界の物理法則とは異質の存在。

物理学というロジカルな世界を極めた著者が、生命やこの世界あり方に哲学的に思索を広げられていることに、心を打たれました。

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2019年11月04日

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秩序を「吸う」ことでエントロピー的死を免れようとする、というのが生命であるというシュレディンガーの言説は非常に興味深い。MITメディアラボのゼザール・イダルゴ教授が同じようにエントロピーの概念を用いて「情報の秩序」について語っていたWhy Information Growsとの類似性を感じた。

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2019年07月01日

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最後のエピローグではやや稚拙な論を立てているが、まぁ時代だしね。その後のファシズムの点からも注意を要する。訳者あとがきでちゃんと触れているので心配はしないが。

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2018年10月21日

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量子力学の波動方程式を創出した物理学者のシュレディンガーが分子生物学について著述した本。まだDNAの二重螺旋は発見されていない時代。遺伝子は長大な分子でできている。その存在を物理学から見た見解が述べられている。なかなか難しいな。

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2018年10月19日

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エルヴィーン・シュレーディンガー(1887~1961年)は、オーストリア出身の理論物理学者。波動形式の量子力学である「波動力学」、量子力学の基本方程式である「シュレーディンガー方程式」、「シュレーディンガーの猫」を提唱するなど、量子力学の発展を築き上げ、1933年に英国の理論物理学者ポール・ディラックと共に「新形式の原子理論の発見」の業績によりノーベル物理学賞を受賞。
本書は、シュレーディンガーが、物理学的視点から生物の生命現象を解き明かそうとした、1944年の著作である。日本語訳は1951年に出版された。
当時はまだ、世界の第一級の物理学者の間でも、生物の生命現象には、生命以外の全ての物質が従う物理学の基本法則を超越した何らかの力が関与しているかもしれないとの思いが漠然と抱かれていた。そうした思いは、1953年のワトソンとクリックによるDNAの二重らせん構造の発見を決定的な転機として生まれた分子生物学の発展によって過去の遺物となったが、その約10年前に発表された本書は、そうしたテーマのついての世界の物理学者と生物学者の関心を喚起するのに、極めて重要な役割を果たしたと言われている。
本書で著者は、生物の遺伝の仕組みと、染色体行動における物質の構造と法則を、物理学と化学の視点から推論しているが、出版後70年を経てなお興味深いものはエントロピーに関する考察と思う。
著者はエントロピーと生命の関係について、「エントロピー増大の法則」が示すところによれば、物体は崩壊を経て平衡状態に至るにも係らず、生物が平衡状態にはならないのは、生物が、食べたり、飲んだり、呼吸をすることにより「負エントロピー」を絶えず取り入れているためだと説明している。つまり、生物が生存することによって増加するエントロピーを、負エントロピーによって相殺することで、エントロピーの水準を一定に保持しているのである。この事態は、「エントロピー増大の法則」が、開放されたシステムにおいては成立しないことを示しており、平衡状態とは別種の安定が成り立つとも述べている。
現在ほど研究領域の細分化が進んでいなかった当時でさえ、著者はまえがきで、「ただ一人の人間の頭脳が、学問全体の中の一つの小さな専門領域以上のものを十分に支配することは、ほとんど不可能に近くなってしまった」が、「われわれの中の誰かが、諸々の事実や理論を総合する仕事に思いきって手を着けるより他に道がない」と宣言をして著した、科学者の本懐を示す作品である。
(2013年6月了)

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2021年11月16日

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他の方のレビューを拝見すると遺伝子構造が解明される前の講演というのに驚かされる。高度な知力があれば、分野は違えど本質を推測出来るということか。最初、「シュレディンガーって物理学じゃなくて生物学だった?」と思ってしまったが、専門外の分野を異なるアプローチからここまで洞察できることに再び驚かされる。シュレディンガー氏が考察したたんぱつ質を結合体とした螺旋の遺伝子構造は、数年後にワトソン&クリックにより確立した理論として提唱される。我々素人は生物と物質を断絶して考えがちだが、量子から生物的有機体として捉えるアプローチはまさに天才の頭脳。

・・・と書きながら、難しくてほとんど理解できなかったので、時間をおいてまた再読したいと思う。

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2019年06月25日

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高校生物をやっていれば理解できるような内容で面白かった
今では既出の知識だが、それが解明される前に物理学者がこのような本を書いていることに驚く

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2024年03月17日

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私の体は自然法則に従って、1つの純粋な機械じかけとして働きを営んでいる。にもかかわらず、私は私がその運動の支配者であり、その運動の結果を予見し、その結果が生命に関わる重大なものである場合には、その全責任を感ずると同時に全責任を負っている。つまり私であると感じた意識的な心は、原子の運動を自然法則に従って制御する人間である。

そして、思考のために起こる事象が少なくとも高い精度で厳密な物理的法則に従うべきことを意味する。思考器官と外界との間に起こる相互作用を成り立たせるための物理的秩序性を持っていなければならない。

小難しい文章だが、物理学者が生命、とりわけ意識を持つ生命を表現するとこうなる。つまり、思考すらも、物理的な秩序に基づき行われるもの。それはよく分かる。脳機能の欠損により思考や認知が不可能になれば、それは秩序を保てているとは言えない。故に、脳死のような概念が可能となるのだろう。

私たちが思考と呼ぶところのものは、それ自身秩序正しいものであること。ある一定程度の秩序正しさを備えた知覚あるいは経験のみを対象としそのような素材にのみ適用されること。

生命とは何か。そこから哲学を排し、擬人化や感情移入を排し、単に生理学、生物学、物理学でアプローチする時、あまりにも人間はシンプルであり、日常は、社会性を複雑に考え過ぎている事に気づくのかも知れない。

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2023年11月03日

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生物学に物理学的な微視的観点(量子力学) から巨視的観点(統計力学) までを持ち出して議論していて、面白かった。生物物理学という分野も確立されて久しいが、学部時代の研究室配属希望先の第二志望に生物物理系を書いていた身としては興味深い内容だった。突然変異の発生確率が多過ぎるとどうなるかの議論とか、生きるとは負のエントロピーを食べてエントロピー増大に抗い続けることというのも面白かった。ただ、書かれたのと翻訳されたのが古いからなのか、生命を物理の切り口で議論する試みの最初期だからか、二重否定のようなまわりくどい言い回しや古臭い表現も多く、系統立ってもいないので、内容がスッとは入ってこなかった。

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2023年09月20日

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生物学を物理学の見地から見たものである。もともと岩波新書で発行されていたものを文庫化したものである。そのためにあとがきは新書版のあとがきとなっている。
 生命とは何か、について多くの者が書いているのでそれと比較するのも面白いであろう。

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2021年11月27日

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まずはエピローグを読んでみましょう。すると、シュレーディンガーが「「私」とは何か」というある種の心身問題に興味を持っていることがわかります。その上で全体を眺めるのが良いと思います。
さて、シュレーディンガーといえば、量子力学でおなじみの名前ですが、本書はーー一般向けの講演形式で展開されていますがーー当時は生命科学におけるバイブルとして多くの人に読まれたそうです。そして、これで勉強した人々がまた、新しい成果を次々と生み出した礎となりました。
量子力学というバックグラウンドから生命を論じるところには難しさがあります。そもそも、こういった歴史的な科学の大著を読むときは今の私達なら高校生でも知っていることがまだ分かっていないということもあるのですから、それを織り込んだ上で読まないといけないので、難しいのです。したがって、はじめに述べたように著者の「世界に対する見方」てあるところのエピローグをしっかり読むのが面白いと思います。科学者は自然法則を明らかにするのが仕事ですが、それでは、人間とは機械仕掛けなのか?という問を必然的に生み出します。その問題は現代においてもまだまだ研究されているとしても、このエピローグではそれに対して弁証法的なアプローチを考えている様子が伺え、個人的にはその人柄や、量子力学というバックグラウンドなども垣間見え、好感が持てました。

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2021年10月08日

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「秩序から秩序へ」とは言い換えれば自己複製子のことか。理論でもって実際の観測を予言している所がすごい。エピローグは筆者の真面目振りが少しおかしい。訳者あとがきはさらに珍妙。

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2018年11月05日

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猫好きで有名なシュレーディンガーの著書。量子論からの分子としてのDNAによる永続性の維持、あたりまでは面白かったが、エントロピーの増大を抑制するための負のエントロピーの摂取、のあたり以降はさっぱり意味がわからなかった。で、結局生命とは何なのかはわからないまま。まあ、当たり前だが。
古典なのだろうが、いま新しい刺激を受ける著作ではなかった。という印象。

どこまでいっても次から次へと新しい理論が提唱され、裏付けられる。それでいて、どこまでいっても解明されない謎は残り続け、さらに新しい謎が生まれる。物理学、生命科学、脳科学、天文学。。。
これはきっと人と神との終わりのないゲームなのだろうと思う。

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2017年06月07日

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ネタバレ

原子はなぜそんなに小さいのか
生物の身体は原子に比べてなぜそんなに大きくなければならないのか
生物は生きるための手段として負のエントロピー(自由エネルギー)を絶えず摂取している。

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2014年10月17日

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生物学と物理学の見地から生命とは何かを読み解く。

我々の体は原子と比べて、なぜそんなに大きくなければならないのだろうか?
それは第一に一つの物質組織が思考と密接に対応するためには、それは非常にきちんとした秩序ある組織でなければならないからだ。物理的にきちんとした秩序ある体型に対して、他の物体により外界から加えられた物理的作用は、それに応ずる思考の対象となる知覚や経験に対応することは明らかである。
元々原子はすべて絶えず無秩序な熱運動をしている。莫大な数の原子が初めて互いに一緒に行動するようになって規則性が生まれ、集団の行動を支配するようになり、秩序の正しい法則の精度は原子の数で決まる。
このように、物理法則は原子に関する統計に基づくものであり、近似的なものに過ぎない。

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2019年01月16日

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