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量子力学を創始し、原子物理学の基礎を築いた人が追究した生命の本質とは? 本書は分子生物学の生みの親となった20世紀の名著である。生物現象ことに遺伝のしくみと染色体行動における物質の構造と法則を物理学と化学で説明し、生物における意義を究明する。負のエントロピー論や終章の哲学観など今も議論を呼ぶ科学の古典。
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Posted by ブクログ
名著です。分かりやすく読めてホッとした。とにかくブラウン運動や量子力学の話は身近にあるものに例えると理解力が追いついていく。化石の時代の自分からしたら精子の話とか初めて知った訳だけど、今でもこんなに細かく説明される事はないと思う。主に植物の受精から育成にあたるまでの過程の話も抵抗なく読めた。X線が及...続きを読むぼす突然変異の話も初耳だったけど、X線自体があまり体に良くないのは聞いていてそれが細胞レベルで問題なのも知れて良かった。男性と女性の染色体の仕組み(X、Y)も微妙に触れてはいたけど詳しい事は書かれてなくて少し残念。これは本当に名著!
内容は難しいが、分子生物学誕生の立役者となったシュレディンガーの名著に触れたことは純粋に嬉しい。ワトソンかクリックだったか、まさに本著を読んだことがきっかけで遺伝学に足を運んだというエピソードはうろ覚えしてる。 原子という生命体にとっての最小スケールの要素、そしてその原子が集まることで秩序を生み出し...続きを読む、生命を維持していく、その普通ゆえの偉大さを再認識。 物理学的な視点から生物学へ接近していくこの展開の仕方が、当時の時代的潮流に新鮮さを与えたのかとつらつら思ったり。
とにかく驚きなのは、DNA発見前に、物理的考察によってそのような構造の必要性を予言してたこと。なんでか高名な物理学者は晩年生物に興味を持ち始めるけど、シュレーディンガーはその中でも珍しく上手く行った例だと思う。
【きまじめな物理学者の探求】 本書が最初に出版されたのは1944年,まだ量子力学が疑いもない第一原理と認識されて間もない頃のことだ.ちなみにDNAの二重螺旋構造が提唱されたのはその10年後になる. まだ生物が神秘的なベールに包まれていた時代だったとは思えないほど,恐れず物理学の立場に立って,現代の...続きを読む描像にも通じる議論が展開されている事には驚かずにはいられない. 【この著書の意義は何処に】 結論を一口に言ってしまうと,「生命はたんぱく質という頑丈な歯車によって動く,機械仕掛けである.それは複雑だけれど,物理法則と矛盾しない理解は可能になるはずだ」これだけ聞くと何と平凡な結論か! 経験的に「生物というものが居てもまぁ不思議はない」と捉えるごく普通の人にとっては,こんな結論を引き出すのに文庫本1冊をあてがう必要なんてないのかもしれない. むしろこの本は,Schrodinger の言葉を借りれば「きまじめな物理学の徒」に対してこそ意義を持つと思う.「きまじめな物理学の徒」とは,量子力学を唯一無二の第1原理と信じて疑わず,しかも観測される全ての物理現象は,大数の法則により初めて秩序を獲得し,法則が見出されるという事実を或る程度理解している,そんな人々のことだ. そんな「きまじめ屋」の前に生物なるものがひょっこり現れれば,彼の頭は疑問で溢れかえることになる事は想像に難くない. 生細胞を構成するたんぱく質の数は決して巨視的とは言えない.であるにも関わらず,それらが高度に分化し,秩序だった働きをするのはどうしてか. 遺伝子という疑いも無く微視的な代物が,これほど安定に受け継がれてゆくのはどうしてか. 生命に備わる,エントロピーを捨てる能力は,物理の視点からどう解釈されるべきか. ...などなど,上に挙げたどの疑問も,「物理学は全ての自然現象を線で結ばなきゃいけない」という立場からは是非とも答えたいものだ. 慎ましやかな物理学の立場から,それらやや卑怯な質問に対して真剣に骨折って議論したのが本書といえる. 思い切ってかいつまむ この本の中心的興味は, (1) 生命そのものの安定性は物理学で説明できるのか (2) 秩序を保ち続ける生命活動は,何らかの物理法則に従うのか の2つと言える.そして Schrodinger は(1)には yes と,そして (2) には maybe と答えたはずだ. (1) に関しては,量子力学から導かれる分子の安定性こそが,生命を構成するたんぱく質の安定性に他ならない.遺伝や突然変異も,分子のエネルギー構造から説明される. 現代では「たんぱく質」が,より正確に DNA に置き換わるだけで,この描像は実に的を射ている. そして(2) こそが,現在でも研究が続いているわけで,「未解決難問」のカテゴリーに属する. 僕の理解では,たぶん Schrodinger の考えは, 「生命活動は,量子力学にしたがって行われるに違いないが,それは決して統計によって秩序を得るものではない. それゆえ,統計に頼らない緻密な理論が必要であり,現在の物理学はこの問題を扱うことが出来ない」 ということだと思う. そもそも量子力学は,現在完成したといっても巨視的な系を十分満足に説明できるわけではない. 物性に限っても,強磁性や超伝導のメカニズムが共通認識になってきたのは最近の話だ. しかもそれは巨視的な,「統計性」が前程にある系でしかない. 対して生命現象においては,一つ一つの分子がそれぞれに重要な役割を演じる歯車なのだから,「統計性」によって導かれる物理法則では歯が立たないわけだ. たとえばエントロピーを減少させるという生命の驚異的メカニズムは,(生命は孤立系でないので熱力学的に矛盾は無いが!)あきらかに構成分子一つ一つの動力学によるものだ. これは量子力学の限界というより,物理学者が地団駄している,と言った方が正しい気がする. Schrodinger も「我々の美しい統計理論は,(生命現象という)当面の問題を内包していないのです」と悔しそうに述べている. でもだからこそ,生命は未知であると同時に魅力的な研究対象でありつづけるんだろう. 最近では,生物を複雑系の立場から研究する流れが強い.生命現象に共通な構造を現象論的に定式化しようという試みなんだと僕は思っている. きっと,そういう現象論を物理学の第1原理でつなぎ合わせることが出来れば,Schrodinger への最上のはなむけになるんだろう. (2009年ごろの自分の読書ログからの転載です。)
量子力学のシュレーディンガーが平易に生命の本質に迫ろうとする著。内容的にはわかりやすいところも多いですが、哲学的で理解困難な箇所(特にエピローグ)も多く、なかなか歯ごたえがあります。それはさておき、訳者あとがき214頁を読んで、福岡伸一先生のシュレーディンガー評に対する疑問と、福岡先生が言うところの...続きを読む「動的平衡」は植物ではどうなるんだろうという疑問についてのヒントを得たように思いました。なるほど、熱力学のエントロピーと情報のエントロピーは違いますよね。
生命とは何かという命題を物理学者として解明した、分子生物学の有りようを予言した書といえましょう。 冒頭から面白いことが書いてある「統計物理学からみて、生物と無生物とは構造が根本的に異なっている」 物理の法則は原始に関する統計に基づくものであり、近似的なものにしかすぎない。分子は個々にはばらばらに動...続きを読むいているが総体として統計を取ってみるとある法則にしたがって機能している。 ところがDNAは原始レベルまで踏み込んでいかないと解明できないのであります。この本はワトソン、クリックがDNAの構造、いわゆる二重螺旋を発表する10年前にかかれているのですが、遺伝子を安定な構造を持つ巨大分子であると推論し、非周期性結晶であるとしております。 いままであまり考えたことがなかったのですが、DNAの例の暗号は原子ひとつ分の差異で表現されているのです。原子の実際の大きさは黄色い光の波長の5000分の1から2000分の1だそうです。工学顕微鏡で認識できる最小単位のなかにさらに何十億の原子が詰っているということです。超ミクロの話なのに数字の単位は宇宙大です。 とりあえず読み上げたもののもう少し熟読が必要なまさしく古典といってよい本でしょう。
量子力学から生命を論じた本書。 ここでその内容などを記すと誤解を生みそうなので内容について興味がある方は他の感想を読むことをおすすめする。 身体について何か新しいことを学んだとき、自分の身体が自分のものでないような気がすることがある。 体内では電気信号で情報を伝達しており、今、手を動かしているこ...続きを読むとや、何かを考えていることはなんなのか。「私」というものはなんなのか、、 著者はエピローグで、「私」とは「経験や記憶を集めて絵を描く土台の生地だ」と言っている。 経験や記憶は日々書き換えられ、その絵は連続的に変化している。だからこそ多くの経験をした人は厚みのある人間になるのかもしれない。 また、生地上の絵は10年前とは全く違うものになっているかもしれないが、それが今の「私」であり、「私」というものは如何なる場合でも無くなることはない。人はそんなに簡単には変わらないし、表面を剥がせば汚い部分も綺麗な部分も見えてくる。 結局、私とはなんなのかという答えは分からないし、分かったところで日々変わるものだから分からなくていいのかもしれない。
分子生物学の入り口本。 人間など生物体が崩壊しないのは負エントロピーの摂取によるものという概念が面白い 福岡さんの動的平衡にも似た内容がある
原書は1944年に出版されたそうだが、現代の科学、特に現在の大学教養レベルまでで学習する基本的かつ古典的な科学で分子生物学が簡潔に説明されており、一気に読むことができた。 生物分野は遺伝の話が中心。DNA発見以前の本であり、当然のことである。しかし、この理論的背景を分子生物学が確立するはるか前に...続きを読む、波動物理と熱力学で物理的化学的に美しく説明できているのはさすがシュレディンガーである。
物理についても進化についても、今までのイメージが少し違っていたことがわかって面白かった。原子が無秩序に動くこととか、突然変異は「飛び離れた」変化であることとか。 後、「オスの蜂はでっかい精子」というのが面白かった笑
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生命とは何か
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シュレーディンガー
岡小天
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