あらすじ
医師ジーキルは自ら発明した秘薬によって凶悪な人物ハイドに変身するが、くり返し変身を試みるうちにやがて恐るべき破局が……。人間の二重性を描いたこの作には天性の物語作家スティーヴンスン(一八五〇―九四)の手腕が見事に発揮されており、今も変わることなく世界中で愛読されている。映画化されることに実に七十回という。
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Posted by ブクログ
おすすめされて読んだ本。
いわゆる名作ってなかなか手が出せずにいたけど、これはおもしろかった。
流石時代を超えて読み継がれて来ただけある。
謎の答えを知ってるのにこんなにドキドキしながら読めるってすごい。途中で、ん?と思ったところもちゃんと回収されてて、天才ってすごいと思いながら読み進めた。
楽な方に流されたり、ダメだなと思いつつ抑えられないときの自分と重ね合わせながら、あるよね…と思いつつ読んでたので、その後のハイドに侵食されてくところがリアルに恐怖を感じられた。
これがプロの手でどう解釈されてるのか、論文とかも読んでみたいかも。
Posted by ブクログ
またレビューで無知をさらけだしにきた。
善と悪との絶えざる闘争。人間は善と悪という二元性を併せ持つ存在として描き出される。
私のお気に入りは、変身がたび重なる中でジキルがアタスンに対して、「自分で自分が信じられない」と言い放って、現実世界についての判断をゆだねてしまうシーンである。
これはまさにスティーブンソンが、善と悪との闘争の中で、自分を見失う人間の姿を克明にえぐり出した場面と言える。
人は、認識において「一貫性」を求めたがる。ある部分までは、理性的な判断によって対処が行われるが、対応できない部分に関しては、拒絶し遠ざける傾向にある。善と悪という正反対の事象が並立し、自己矛盾を日々生成する。そしてその断絶が大きくなり対処できなくなったとき、結果的に人をある種の絶望=思考停止状態に追いやるのではないか。
ジキルは彼の研究内で人を「二元的存在」として結論づけるとともに、多元性をもつものであることを示唆する。
社会的動物として、様々な役割を期待される人間は、大小様々なコミュニティの中に適した自分を創造し、時と場合に応じてそうした自分にアクセスする。しかし、それは究極的には二元論的世界観に収斂されていくというわけであろう。
社会が複雑化している今も、善と悪に引き裂かれる・あるいはそれを使い分ける人間存在の永遠的宿命。ジキルはその宿命からの脱却を試みた一例である。
Posted by ブクログ
ジーキル博士とハイド氏が同一人物だという結末は、おそらく多くの人がすでに知っているだろう。しかし、だからと言ってこの作品を読む価値が薄れるという訳では決してない。
私がこの著作の中で最も鮮明を受けた部分は、最終章のジーキル博士の独白である。なぜ、彼がハイド氏に変身することになったのか、それを中止しようとはしなかったのか、などを語る。彼がハイド氏を自分の内に宿す前や、宿した後の話を聞けば聞くほど、彼の行動は決して奇怪なものではないと思われる。
この物語はジーキル博士だけのものではない。人類に共通する永遠の物語である。