あらすじ
「退け! 逃げよ。彼奴は人でなし。鬼じゃ!」――大将自ら、真っ先に敵陣の中へと踊り込み、瞬時に7人を斬り捨てる。漆黒の甲冑が一転して朱に染まるが、それにも飽き足らず、太刀が届く相手を次々と血祭りに上げていく。「鬼佐竹」「坂東太郎」と諸国から怖れられ、伊達・北条と互角に渡り合った常陸の戦国大名、佐竹義重。その鬼神のような戦場での働きは、下妻の追撃戦で北条軍2万を潰走させ、人取橋の戦いでは奥州の伊達政宗さえも討ち取る寸前にまで追い込んだ。最盛期には義重が戦場に姿を現すだけで、敵軍は戦わずして退いていくこともしばしばであったという。清和源氏の流れを組む関東屈指の名家でありながら、常陸の半分にしか勢力が及ばない「半国守護」として、長年屈辱を味わってきた佐竹氏。だが、義重の登場によって悲願の常陸統一を果たし、絶頂期を迎える! 守護職の誇りをかけて、乱世を戦い抜いた男の生涯を描く。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
■佐竹氏は清和天皇直系の源氏。河内源氏の新羅三郎義光を祖とする。甲斐源氏の武田氏も同じ新羅三郎義光を祖とするからなのか、武田氏滅亡の折、武田氏の金堀衆が大挙して常陸国に来たというのは興味深い。常陸国もまた、金山が多くあった。佐竹義重の軍資金は国内の金山がベースだったはずだ。
■北家、東家、南家の佐竹三家が佐竹宗家を補佐する体制。古い名家によくあることだが、同族家臣が多く結束が固いと感じる。
■佐竹義重は、わかっているだけでも生涯に400通近くの書状を書いており、この本はその書状をベースに著されていることがよくわかる。著者の方が佐竹義重だけでなく、北関東や越後の国主、土豪に至るまで書状を丹念に当たっているようで、本当に頭が下がる思いだ。ただ、そのためか戦場の様子が多い。つまり、この本では佐竹義重が常に戦っている。史実には忠実なのだと思う。
■北条氏の本を読むと、佐竹氏が北条氏に対して頑強に抵抗していることが書かれていた。佐竹側から見ると、北条軍の大きさがわかる。また、北条や伊達や土豪たちとの戦いを読むと、いかに土豪たちを味方に引き入れるか、そのために土豪の家臣を味方に引き入れるのか、婚姻政策をどうするかが大事であり、合戦の前に勝敗は決していることがよくわかった。
■佐竹義重と宿老和田昭為との関係が興味深い。
■一時は54万石の大大名になったが、関ヶ原で西軍に付き、秋田藩20万石に移封。佐竹義重は秋田の地で亡くなっている。
Posted by ブクログ
学者さん向けは知らないけれど、佐竹氏を追いかけている一般人には良い書籍。
全体として淡々としているので、熱い歴史ドラマが希望の方には合わないでしょう。
佐竹氏にとっては北条氏に大勝利と言える戦いがこの小説には紹介されているが、別の著者の北条氏系書籍には全く記載がなかったりするので、そういう比較の楽しみもあります。
Posted by ブクログ
主人公って良いように書かれているもんだと思っていませんか?
義重はそれなりの名将だったとは思いますが、この本では特に誇張されることもなく普通な感じにまとめられています。
常陸一国を取る。
この時代だと大変だったのかもしれません。
あまり美化されずに書かれているので星は4つです。
Posted by ブクログ
佐竹義重が義宣に家督を譲るまでのお話し。義宣と合わせて読むと戦国時代の佐竹家を知れるのかな?全体的に盛り上がる場面も無く淡々と話しが進んでゆく。和田昭為との関係をもう少し深掘りして欲しかった。
Posted by ブクログ
佐竹義重、新羅三郎の流れで足利尊氏に常陸国守護を
任された家系(武田信玄も新羅三郎系)
若くして家督を継いだ義重は、一族や国衆の合意の元
で佐竹家を率いるが、多くの裏切りや行き違いで機能
低下して最初の頃はバランスボールの上に居るようで
不安定に見えたが、戦を重ねる事に体力・気力からく
る辛抱強さで敵を推し返し、遂には鬼佐竹の異名をと
る程の武将となり佐竹兵は強いコトが浸透してきた
奥州の虎こと伊達政宗は作中、あぶないヤンキーかの
ように噛みつく野郎だが、もう少しまで追いつめる
だが、伊達家より嫁いだ正室少納言の危険を継げる書
で引き返した・・・これが偽書であり、そのうえ家臣
にも密かに追撃の手を緩めるように命令を出していた
受ける家臣もアホちゃうの?(´・ω・`)
Posted by ブクログ
鬼佐竹、坂東太郎と恐れられた常陸の戦国武将。佐竹義重は、場所からいっても、北関東にて、北条、武田、上杉、伊達など、錚々たる武将に囲まれながらも、見事に戦い抜いた。まさに見事であると言わざるを得ない。
Posted by ブクログ
「退け!逃げよ。彼奴は人でなし。鬼じゃ!」―瞬く間に7人を斬り捨て、北条軍2万を潰走せしめた常陸の戦国大名、佐竹義重。「鬼佐竹」「板東太郎」と諸国に怖れられ、伊達政宗さえも討ち取る寸前にまで追い込んだ。長年「半国守護」の屈辱を味わってきた佐竹氏だが、義重の登場で常陸統一を果たし絶頂期を迎える。守護職の誇りをかけて、乱世を戦い抜いた男の生涯を描く。
Posted by ブクログ
初代久保田藩(秋田藩)主、佐竹義宣(よしのぶ)の父、鬼佐竹と謳われた戦国武将の伝記。
出版社側の都合で、記述が要約的になっている感もあるが、織田信長や豊臣秀吉などを主人公にした小説には無い新鮮さもありました。
特に武勇を誇りながらも敗戦も多く、常陸一国を領有するまでにも、また後北条家および伊達家との抗争においても、まさに一進一退という言葉どおりの華やかとは言えない戦歴であることが、逆に他の戦国大名達の伝記にはないリアルさを感じさせます。
敗戦や勝っても領地を広げるまでには至らない戦いを重ねながらも、家臣団をまとめ、同盟国を守る戦略眼とねばり腰には、結果を求めがちな現代の経営者が見習うべき点が多いように思えます。
一つの戦の結果に動かされず、大局と自己の信ずる道を見つめながら「生き抜くこと」。
企業経営にも通じるところが、大なのではないでしょうか?