あらすじ
小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年、二階建て全六室のおんぼろアパート・木暮荘。現在の住人は四人。一階には、死ぬ前の愛あるセックスに執念を燃やす大家の木暮老人と、刹那的な恋にのめり込む女子大生・光子。二階には、光子の日常を覗くことが生き甲斐のサラリーマン・神崎と、姿を消した恋人を想いながらも別の男性からの愛を受け入れた繭。一見平穏な木暮荘の日常だが、それぞれが「愛」を求めたとき、痛烈な哀しみがにじみ出す。それを和らげ、癒すのは、安普請のぼろアパートだからこそ生まれる人のぬくもりだった……。直木賞作家が紡ぐおかしくも温かな人間物語。
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Posted by ブクログ
三浦しをんが書く人間が好き。
だから、これもとてもよかった。
ただ昔マッチングアプリで出会った男性と初めてデートした時に「小暮荘物語が1番好きな本」って言ってたけど、初対面で言うような本では無いだろと思った
Posted by ブクログ
ぱっと見、これはアパートの住人を巡る短篇連作、であります。
ただ、本作、それにとどまりません。
誤解を恐れずに言えば、性を巡るそれぞれのストーリーといっても良いと思います。
70を過ぎて、どうしても(お金で買うのではない)セックスをしたい大家、イマ彼と元彼と両方に挟まれて心も揺れる20代OL。子どもが産めない体に生れつき、セックスをしまくる女子高生、それを恨めしそうに上から除くサラリーマン等々。
どれもかなり際立った個性のキャラクターが、この小暮荘に縁あって集い、物語を紡いでいきます。
・・・
これが単なるキワモノだらけの捧腹絶倒物語ならば、新味のないどぎついだけの物語であると思います。
が、本作がきらりと光ると思わせるのは、それぞれのキャラクターがそれぞれ思いを抱え、実は真摯な悩みを持つからです。そして、そうした思いは、多くの人にも見られるものであるからだと思います。
嫉妬であったり、執着であったり、名残惜しさであったり、はたまた苦しさであったり。
そのような「想い」を人物にまとわせることに成功しているところに本作の秀逸さがあると思います。だから、ぱっと見は大分変な人たち、否、ぶっ飛んでいるといってもよいのに、読んでいくといつの間にか共感してしまう、そういう造形が多くあるのでした。
エンタメっぽいけど、それにとどまらない。純文学というには面白過ぎる。私はそういう思いを読中に抱いておりました。
同じような感想を巻末で金原瑞人さんが書いていたのも印象深かったです。もっとも彼は芥川賞と直木賞でたとえ、両者の特徴を一緒に仕上げる作家として三浦しをん氏を評されていました(相当意訳しました)。
・・・
ということで一か月ぶりの三浦作品でした。
ただただ面白い、そういうのもいいのですが、その裏に人間らしい悩みや苦しみが見えるところ、そのブレンド具合に筆者の妙が光ると感じる一作でした。
Posted by ブクログ
坂田繭
木暮荘二〇三号室の住人。花屋の店員。専門学校のデザイン科に通っていたときから、フラワーショップさえきと喫茶さえきの常連だった。アルバイトで雇ってもらい、卒業と同時に正式に採用された。
伊藤晃夫
繭の彼氏。代々木上原の小さな企画会社に勤めている。
ジョン
大家の飼い犬。
瀬戸並木
繭の三年前の彼氏。真っ黒に日焼けし無精髭を生やしている。繭と同じ専門学校の写真科。
佐伯
花屋「フラワーショップさえき」。
マスター
佐伯の夫。フラワーショップさえきの奥のスペースで喫茶店「喫茶さえき」をやっている。
美容師さん
三十歳くらいの女性。美容院の定休日に部屋に飾る花を買いに来るという勝手な推理でそう呼んでいる。
木暮
小田急線の急行通過駅・世田谷代田から徒歩五分、築ウン十年、全室ぼろアパート木暮荘の老大家。娘夫婦が転勤の都合で家に転がりこんできたため、木暮荘の空き部屋に移った。
後藤
木暮の旧くからの友人。病に倒れ入院中。妻にセックスを断られた。木暮が見舞いに行って一月もしないうちに死んだ。
木暮の妻
ちなつ
峰岸美禰
代々木上原から徒歩八分ほどの犬の美容院「トリミングハウス・プティ・キャン」に勤めている。
中井
「トリミングハウス・プティ・キャン」の主。四十代後半。二十年以上のベテラン。美禰はひそかに「女ムツゴロウ」と呼んでいる。
土田
二十三歳。「トリミングハウス・プティ・キャン」の従業員。
前田五郎
四十歳くらいの男。
牧野
就職浪人中で近くのバーでアルバイトをしている。
神崎
サラリーマン。就職を契機に木暮荘の二〇一号室に引っ越してきた。ファミリーレストランの本社統括センターに配属。
さとちゃん
一〇二号室の女子大生が呼んでる男。二号。聡。
せいちゃん
三号。
光子
女子大生。一〇二号室。
葵
光子の大学の友達。
亜希
光子の大学の友達。
ヨシフミ
亜希の彼氏。
はるか
亜希の子。
桑田
並木の師匠。並木が通っていた専門学校の講師だった。
遠藤幹也
笹井恵美
北原虹子
フラワーショップさえきで花を買ったときに、並木に声をかけた。
野島
キング・キタ
二十年以上も人気ナンバーワン料理マンガを連載している『九鬼クッキング』の作者。
Posted by ブクログ
久々の三浦しをん。
まあまあ重い話だった。風俗を呼んだり、不妊症だったり。不妊症って怖いな。
普通って何か、とか変わってるとは何か、みたいなことを思った。
面白かった気がする