あらすじ
巨匠、藤子・F・不二雄が遺した数々のSF短編すべてを、単行本未収録作品も含め年代別に完全収録。珠玉の112話を全8巻に収めた愛蔵版単行本!!
74歳になる男は節食したり、車を使わず歩いて移動したりと健康に気を使っている。“二次定年特別延長申し込み”の日に区役所に向かった男は、友人の吹山から「申込書の登録ナンバーのところにツメで印をつけると当たる」と聞き、吹山の言うとおりに印をつけた。しかし、男は当選しなかった。さらに、首相から「73歳以上のかたがたは本日をもって定員カードの効力を失うものとし、年金、食糧、医療その他一切の国家による保障を打ち切る」と発表され……(第2話)。
遅筆で知られる小説家・大和のもとへ、原稿の催促にやってきた新米編集者の西村。外で偶然に出会った2人だったが、大和の家に着くなり、大和は妻を殴り飛ばした!実は、大和は編集者の間でもうわさの家庭内暴君だったのだ。そして大和の妻は何もいわずに、それに耐えているのだったが……(第7話)。
会社ではやり手の社長として、頼りない専務の息子にいらだちつつ乗っ取りの陰謀と戦い、家では学生運動で留置所から帰ってきた息子を叱りとばし、愛人宅では大金をせびられる。男の神経は極度に張りつめて、疲れ切っていた。相談を受けた医師である友人は、男に一度「やすらぎの館」へ行ってみることを勧める……(第11話)。
※本書はデジタル配信用に再編集を行っております。紙版とは一部内容が異なります。
目次
第1話 休日のガンマン
第2話 スタジオ・ボロ物語
第3話 定年退食
第4話 権敷無妾付き
第5話 ミラクルマン
第6話 ノスタル爺
第7話 コロリころげた木の根っ子
第8話 間引き
第9話 箱舟はいっぱい
第10話 アン子大いに怒る
第11話 やすらぎの館
第12話 ポストの中の明日
第13話 どことなくなんとなく
第14話 ボクラ共和国
感情タグBEST3
未来悲観的
といえばそうだが、深刻な社会問題を鋭く描いた作品群が目白押し。「定年退食」「間引き」「箱船はいっぱい」など。全部70年代の作品とは。
また、「ノスタル爺」もタイトルは駄洒落のようなのにその切なさたるや。
名作揃い
試し読みからのめり込んでしまい、そのまま購入しました。
ドラえもんも一部ブラックな描写はありますが、それを完全に前に押し出したような感じ。
一番好きなのは、「コロリころげた木の根っ子」最後のコマが静かに怖いです。
Posted by ブクログ
エスパー魔美に多くの設定を引き継いだ「アン子 大いに怒る」を収録。「コロリころげた木の根っ子」の怖さも特筆すべきものがある。
そして、この頃のF先生の絵は神がかっている。
Posted by ブクログ
<収録作品>
休日のガンマン、定年退食、権敷無妾付き、ミラクルマン
ノスタル爺、コロリころげた木の根っ子、間引き
箱舟はいっぱい、アン子 大いに怒る、やすらぎの館
ポストの中の明日、どことなくなんとなく、ボクラ共和国
Posted by ブクログ
SF短編集が出版された、1970前後の頃、売れ行きはさっぱりだったそうである。ドラえもんは売れ行きが伸びているのに、時間をかけてリサーチして作っているSFはまるで売れない。しかし、名作は永い年月の間にもしっかりと残るものなのだと思う。今こうして、全112話のSF短編は装丁を変えて新たに世に出され、読者に感動を与えている。物語の作り手としてこれ以上の喜びはないのではないかと思う。