あらすじ
インドからアメリカに渡り、ささやかな幸福を築いてきた移民一家の日常が、夏休みのプールの事故で暗転する。意識が戻らない兄、介護の毎日に疲弊する両親、そして悲しみの中で成長していく弟――。痛切な愛情と祈りにあふれる自伝的長篇を、繊細であたたかな小野正嗣訳で。フォリオ賞・国際IMPACダブリン文学賞受賞作。
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Posted by ブクログ
父が外傷により一夜にして脳障害を負った身として、「他人事ではない」という心持ちで手に取った本。読んでみると純粋に主人公の体験を追っていた。分かりやすく公正な文章で、瞬間ごとの主人公の心の動きを丁寧に描写している。ドラマに酔うこともないが冷淡でもない、冷静なわけでもない、主観にも客観にも偏らない作者の描写における距離が、この小説に親しみと好感を抱かせた。
私小説、ということで書くのに相当な年月がかかったということだが、この短さにまとめた技術は凄い。
主人公のガールフレンドへの想いが印象的だった。どんなに他を圧するような出来事が起ころうとも、私たちの人生の「他の部分」は引き続きあり続ける。それが大変でもあり救いでもある。