あらすじ
ダム建設をめぐって突然湧いた逮捕劇。県内で絶大な人気を誇った改革派知事はなぜ失脚させられたのか。汚職知事の名を着せられた当事者が、事件の内実を冷静な筆致で綴る。
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Posted by ブクログ
闘う知事で名をはせた前福島県知事の佐藤栄佐久氏の県政の中での原子力行政、地方分権、検察問題(国策捜査)等について深く書かれています。
私は福島に暮らしていた頃から、佐藤前知事を支持しており、この事件を知った当時は非常にショックだった。
その後、上京してからこの問題の事はすっかり記憶の片隅に追いやられていました。
今回、3.11の震災、そして、原子力発電所の事故をみて、原子力行政で国と闘い。それ故に、国策捜査で抹殺された佐藤前知事の事を思い出した。
そこで、知事抹殺を読んでみた。
この本を読んでの率直な感想は、腐りきったこの国の官僚制度に対する怒りである。
そして、3.11の原発問題から見えた原発行政の杜撰さを裏付ける証言が数多く書かれている。
日本国民としてこの本は一度読んでおく必要のある必読の書といっても良い。
この本を読んで思った事は、優秀な人間は、官僚になろうなど思わず、こんな腐った国に残って欲しくないということだった。
自分は残念ながら何度か国外に出ようとしたが挫折し日本に暮らしている。
しかし、真に優秀な人間は、官僚制度とは徹底的に闘って欲しい。(民主党の様なポーズでは無く。。。)
ちなみに、本書の中では、佐藤前知事は1審判決で懲役3年、執行猶予5年だったが、その後、2審判決で懲役2年、執行猶予4年となっている。
また、1審では7千万円程の収賄となっていたが、2審では収賄の金額は立証出来ず0円収賄の有罪判決と言うあり得ない判決がある。
この事実を見ても佐藤前知事は無実の罪で殺されたのである。
そして、日本の国土は、杜撰な行政で支配されていると感じた。
Posted by ブクログ
前福島県知事の佐藤栄佐久氏の著書。原発事故が起きてから、注目が高まった本。佐藤氏は原発問題で東電や政府の方針と対立していたが、選挙では強かったようだ。しかし、県発注のダム工事をめぐる汚職事件で逮捕。第一審で有罪判決を受けている。その後、東京地検特捜部の信頼性も揺らいだこともあり、その意味でも注目されているのかもしれない。検事が東京拘置所の取調室で「佐藤知事は日本にとってよろしくない、抹殺する」といった言葉が本の題名になっている。原発の透明性の確保と県民を守る立場をとっていたが、中央政府からはいろいろな圧力があったようだ。逮捕に関してもその延長線にあるとの含みがある。一方で、権力が大きい知事が、身内のことなどで捜査に巻き込まれていく過程をみると、綻びを出さず運営していく難しさも理解できる。
大震災以降、東電や保安院の関係もよく報道されているが、数年前から指摘していた佐藤氏の見識が不幸にして先見性のあるものになってしまった。以下のようなくだりがある。2002年の話。―――福島第一原発では長年にわたり点検記録をごまかしていたが、検査記録の改ざんが内部告発された。経産省の保安院は、立ち入り検査して告発内容について検討すべきところを、よりによってその告発内容を、改ざん隠蔽の当事者である東京電力に照会し、調査は東電に任せていた。しかも、告発者の氏名などの資料も東電に渡していたので、原子力発電の現場では「経産省や保安院では危ない」と感じ、その後の内部告発は福島県庁に相次ぐことになった。また、佐藤氏は以下のようにも述べている。原発は巨大技術であり、その細部まではうかがい知ることは出来ない。ならば、何を信用すればいいのか。外部から見れば、「原発を動かす人、組織、そして仕組み」が信頼にたると思われるものであることが必要。これは、今回の事故で、多くの人が再認識したことだと思う。大震災で福島原発の事故が起こらなければ注目されなかった本だが、いろいろな示唆に富んでいると感じた。