あらすじ
『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』(2006年)の増補改訂版。
CS調査に革命を起こす「NPS」の全貌と進化がわかる一冊。
20年以上の研究が生み出した最強の顧客ロイヤルティ管理ツールとは?
アップルからザッポスまで、数千社!
「超優良企業」の成長エンジンはこれだった!
「あなたが弊社の商品/サービスを親友や同僚の方に推奨していただける可能性はどのくらいありますか?」
この問いへの回答を的確に、分析することが、「ファン顧客」獲得、維持、拡大につながる!
【著者紹介】
フレッド・ライクヘルド
ベイン・アンド・カンパニーフェロー
1982年にパートナーに就任、1999年1月に同社初のフェローに選出。
顧客、従業員、パートナーのロイヤルティ改善を通したクライアント企業の業績向上を中心に、コンサルティング業務と調査に携わってきた。
米『コンサルティングマガジン』誌(2003年6月号)で、世界で最も影響力のあるコンサルタント25名に選出された。
ロブ・マーキー
ベイン・アンド・カンパニーニューヨークオフィスパートナー
顧客と従業員のロイヤルティを通して、収益ある持続可能な成長をクライアント企業が実現するための支援を行ってきた。
顧客体験の向上に関するベイン社内での専門家でもある。
金融サービス業を中心に、メディア、テクノロジー、小売、プロフェッショナル・サービス、運輸業など幅広い業界のコンサルティングに携わる。
【目次より】
◆序章 スコアからシステムへ
◇第1部 ネット・プロモーター・システムの基礎
◆第1章 悪しき利益と良き利益、そして究極の質問
◆第2章 成果を測定する基準
◆第3章 NPSが利益ある成長をもたらすメカニズム
◆第4章 エンタープライズの物語
◆第5章 NPSを測定するには
◇第2部 結果をつくり出す
◆第6章 NPSで成果を出すということ
◆第7章 経済性と動機付け:二つの欠かせない柱
◆第8章 顧客との「クローズド・ループ」を回す
◆第9章 長期的な変革に備える
◆第10章 ネット・プロモーターの最前線
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Posted by ブクログ
すべての優れた組織のミッション(使命)は、自社が関わり合う人々の生活を豊かにし、ロイヤルティを築くことにあると信じている。そして、優れた組織は株主だけでなく、従業員、ビジネスパートナー、とりわけ顧客に対して、プラスの影響を及ぼさなくてはならない。
顧客リレーションシップを犠牲にして獲得した利益が、悪しき利益だからだ。もし顧客が惑わされたり、不当な扱いを受けたり、無視されたり、強制されたりしたと感じたとしたら、その顧客からもたらされる利益はすべて悪しき利益である。
良き利益と悪しき利益とを識別するための質問とは、どのようなものだろうか。質問自体は単純なものだ。すなわち、「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか」というものである。そしてこの質問を基に得られる指標が「 推奨者の正味比率(NPS)」である。
NPSは、どんな企業の顧客も三つのカテゴリーに分類できるという基本認識に立脚している。すでに説明したとおり、「 推奨者」というのはロイヤルティの高い熱心な顧客で、自らが継続購入客であるのと同時に、友人に対しても顧客になるように薦める。「 中立者」というのは、満足はしているがそこまで熱狂的でない顧客で、競合他社からの働きかけになびきやすい。そして「 批判者」は、劣悪な関係を強いられた不満客である。先の質問に対する顧客の回答が、三者を分類する基準となる。たとえば、一〇点満点中、九点または一〇点と答えた顧客は推奨者であり、以下、中立者、批判者の順に点数が下がっていく。
顧客は二つの条件が満たされない限り、個人的な推奨を行わないことも判明した。まず、その企業が優れた価値を提供していると、顧客が信じていなくてはならない。
第一の条件は顧客の理性を惹きつけるものであり、第二の条件は顧客の感情に訴えかけるものである。この両者が満たされたときに初めて、顧客はその企業を熱心に友人に薦めるようになる。
NPSが目覚しい改善をもたらすのは、次のような場合である。 ①シニアな経営陣、特にCEOが個人的にネット・プロモーター・システムを通した顧客ロイヤルティの改善を、きわめて重要な優先事項として受け止めている。彼らは経済的に取り組むべき理由(収益ある成長につなげること)と、動機付けや士気の面で取り組むべき理由(自社が基本的価値観をどれだけ実現できているかを測定すること)の両方を理解している。 ②NPSの顧客フィードバックを組織全体の主要な意思決定プロセスに組み込み、学びと改善の「クローズド・ループ」をつくっている。何か特別な部署の責任やプログラムとしては扱わず、日々の基本的な優先事項の中に組み込まれている。 ③短期的なプログラムや取り組みとしてだけでなく、企業文化の変革と成長にいたる長期的な道のりとしてネット・プロモーターに取り組んでいる。企業が収益を伴う持続可能な成長を実現させたいのであれば、組織全体でNPSに取り組まなくてはならないことを理解している。 この三つが成功への鍵である。
結局のところ、顧客に喜んでもらうための最も強い要因の一つは、企業がきちんと話を聞き、不満や提案に応えることだ。そうした取り組み姿勢は、同社が顧客を重視しており、大切にしていることの証明となる。それが、顧客と良い関係を築くための基本的な必要条件となる。
ほとんどの企業は、より顧客志向の企業文化を築きたいと思っている。ネット・プロモーター・システムは、この目標の達成に役立つ一連のさまざまなツールや有用な手法を提供するものである。だが、顧客にフィードバックしてくれたことを感謝し、根本原因を確かめ、顧客へのサービスを向上させる方法を学び、適切な対応をするといった「クローズド・ループ」をつくることよりも強力なものはない。NPSは根本的に、測定やサービス・リカバリー以上の存在である。NPSは、人々を大切に扱うことを基礎にビジネスを行う方法なのである。