あらすじ
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴(ざくろ)」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
9年ぶりの感想登録であることに驚愕。
久々に、「著書」ではなく「作品」を読み、自分なりに思うことがあったのでネタバレありで書いてみる。
前提として、当方は、秀逸なオチを提供してくれるなら読後感問わず評価する雑食系であることを断っておく。
この前書きから察せられるとおり、本作には痛快な話運びや登場人物への深い共感といったエンタメ要素はほぼないと言ってよいだろう。読み手の心に仄暗い陰を落とすような物語を、丁寧な心情描写と起承転結でくるんで、この世界のどこかで起きているかのようなリアリティに浸してお出ししてくる小説である。
前述した当方の価値観に照らすと、本作品に対する評価は文句なしの☆5である。
収録された短編は、いずれも約50頁程度の読みやすいボリュームで独立しており、それぞれバラエティに富んだ「良質なオチ」を読み手に提供してくれる。
このレビューでは、6つの作品「夜警」「死人棺」「柘榴」「万灯」「関守」、そして作品タイトルでもある「満願」のうち、最も意表を突かれた「夜警」と、個人的に最も好みだった「関守」について紹介したい。
『夜警』
・交番勤務の警官である柳岡の視点から、ともに緊急通報に対応した部下の若手である川藤の死を見つめる話。
・通報を受けて現場に急行したところ、自分の妻を人質にとって短刀片手に暴れている前科持ちの男がおり、自分たちに切りかかってきたため川藤が拳銃を発砲。銃弾を受けた男はその場で死亡したが、反撃を受けた川藤もまた命を落としてしまう。過去に自身のパワハラで部下を自殺に追いやった経験のある柳岡は、上司としての抱えた罪悪感吐き出すように、遺族である川藤の兄の元を訪れた折、当日の様子をぽつぽつと語りだす、という流れである。
・交番勤務の描写の精緻もさることながら、部下を殉職させた中堅警官のどこか投げやりで重苦しい内心の独白により、物語としてのボリューム感がすさまじいことになっている。当方、米澤氏の小説は(大分前とはいえ)何冊か読んだことがあるが、どちらかというと先へ先へと促されるような文章だった印象で、ここまで現実感のある筆致だった記憶がない。この作品が1つ目だったこともあり、まずいい意味で期待を超えてきた驚きがあった。
・読者を引き込む論点の放り込み方とそこまでの伏線の張り巡らせ方もうまい。殉職した川藤の危うい側面の描写をじっくり捲いた上で、川藤の兄から柳岡(と読者)に対し、事件の前に川藤から届いた不審なメールの存在が提示され、それが何を意味するのかを問われる。読み返している今だからこそ思うが、ここまでの話の中で検討材料はしっかりと提示されており、かなりフェアな構成である。残念ながら、当方は川藤のやべー人格にかなり気を取られており、仕込まれていた伏線に気づくことができなかった。(この点非常に悔しかったので、他の短編を読む際にかなり留意することになり、結果として残りの話では粗方見当をつけることができた。)
・業務中の拳銃暴発を誤魔化すため、現実に人死にが絡む事件を引き起こす輩がいるかというと微妙な線だとは思う。が、「もしかしたら」と思わせる臨場感がこの作品にはある。自分の失敗や過ちと向き合う勇気を持ち続けることの大変さは、人間なら大なり小なり理解できるだろう。そういう綺麗ごとではない人間くささが、この話を含めた本作の臨場感を引き出している。この世にあってもおかしくない、小さな交番でぼんやりと外を眺める中年の警官を少し引いた視点から思い浮かべ、なんとも言えない余韻に浸るのも悪くない。
・ラスト、非番のときに見つけた刃物の傷が初見ではピンと来ず、次の話の伏線かとしばらく警戒していたのはまた別の話。
『関守』
・真夏の峠道にある古びたドライブインで、東京からやってきたライターが、店主である老齢の女性に峠にまつわる都市伝説について話を聞く話。
・記事執筆を依頼されてネタに困ったライターは、同業の先輩から死亡事故が頻発する伊豆半島南部の峠に関わる都市伝説のネタを提供される。事故現場は際立って危険な道というわけではないものの、地元の県職員、ヤンキーのカップル、県外大学に通う学生…と一見何の共通項もない人々が命を落としているらしい。店主が語る、ドライブインに立ち寄った彼らの様子から記事執筆の糸口を探るライター。店主は少し長くなると前置きして、4件目の事故について話し始める、という流れ。
・事前に触れたとおり、個人的にはこの話が最も面白いと感じた。店主の女性がときに明るく、ときにたどたどしく話す言葉のあらゆる点に伏線がちりばめられ、それが終盤キレイに回収されていく。タイトルも非常に秀逸で、無駄な要素はまったくない。特に「色のついた飲み物」のくだりは抜群のセンスである。
・意味深に描写されたお堂とその中の地蔵はポイントになるだろうと気を払ってはいたが、オカルト的な導線になるとか、祠の中に何かが隠されているとか、そういう想像をしていただけに、地蔵そのものがロゼッタストーンとは思い当たらなかった。ストーリーはまったく違うが、当方はこの話から古畑任三郎シリーズの完結編『今、甦る死』を連想した。あちらは真相が明らかになるある種さわやかなラストだったが、こちらはすべてが闇に葬られるバットエンドである。
・誤解をおそれずに言うが、このストーリーはサスペンスホラーといって差し支えないものと思う。本作の中で唯一、語り手が無事では済まないことを予見させる終わり方のせいかもしれない。というか最後の一文が怖すぎる。当方はホラーにはかなり耐性がある方だが、直接的な描写がまったくないのに、背後に感じる情念だけでぞっとしたのだからすさまじい。自分が大切に思う何かのために一線を超える人間は、かくもこんなに恐ろしいものかと、読み終わって何とも言えない気分になった。
Posted by ブクログ
「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、
静かに刑に服したが。。。
鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、
恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、
美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、
ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、
「夜警」「関守」の全六篇を収録。
史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。
山本周五郎賞受賞。
********************************************************
短篇集。
どれも読みやすくて面白かった。
最初の「夜警」。
事件とかは普通やねん。
旦那の嫉妬が日に日にひどくなっていって命の危険が。
ただ、この夫婦の事件ではないねんな、この小説は。
よくよく読むと、警察官に向いていない人の話やねん。
そちゃそうよな。なりたいとできるは違う。
警察官だけじゃなく、この仕事向いてない、できひんなんてたくさんある。
やってみて初めて気づくのはまだいい。
自分で気づかへんのがかなりやばくて。
しかも、拳銃を扱う警察官ともなれば、
向いてないのに、ずっと警察官の仕事に就かれても。
それを短篇でわかりやすくミステリーとして盛り込む。
すごい面白かった。
あと「万灯」も面白かった。
ここからどう事件が起こるのかと言うぐらい、最初はビジネスマンの話。
これがまた、引き込まれるぐらい読みやすい。
むしろ、こんな仕事ができるなんてすごいなって感心。
それが、あれよあれよと言う間に殺人事件が起きて、最後は自業自得に。
しかも、最後の展開が途中で出てきた内容をうまく伏線回収。
事件は目の当たりにすることはないけど、
それまでの話の流れは、自分もその場にいる感じで面白かった。
Posted by ブクログ
それぞれ独立した短編集。
主人公はベテラン世代の男性ビジネスマンが多く、時代も自分が知らない昭和がほとんど。
令和では身近にあるスマートフォンやSNSといった単語、ワークライフバランスを実現しようとか多様性が大事だとか、そういう思想は一切ない。
なのに、なんの違和感もなく物語に入っていける不思議なリアルさが絶妙で、ちょっと怖い。
展開が広がる前に、すでにそういう怖さがあるのに、読み進めるごとに物語そのものの怖さが加わって、ラストまでずっと緊張は上がりっぱなしだった。
この物語に共通する怖さは、目的を成し遂げるために、とんでもないことをしてしまう人間の欲深さ。
真相には、いつもじわじわと辿り着く。
このじわじわさが、たまらなく依存性がある。
Posted by ブクログ
ミステリー短編集。どの作品もそれぞれ独立して面白さがあり、短編集ながら読み応えのある1冊だった。
その中でも東南アジアの資源開発を題材にした「万灯」が好みだった。2人を殺害して、警察にはバレていないが天罰かというような結末を迎える主人公(犯人)。物語の中でも最後のオチに繋がる伏線がパラっとまぶされていたが、最後までそれが伏線だとは気付かず、見事でした。
主人公も舞台も時代もバラバラな作品だったが、惹きつけられるように読んだ1冊。
Posted by ブクログ
初、米澤穂信作品。
渇いた印象を受ける文体だなと思った。
そのドライな世界観が短編にマッチしていて、読む手が止まらなかった。
全体的にビターなエンドなのも文体に合っていてよかった。
柘榴が生理的に気持ち悪となったけど、その気持ち悪さが癖になって満願の中では一番好きかも。
Posted by ブクログ
米澤穂信さんのミステリー短編集。私は「万灯」が一番ゾクゾクとして好きだった。最後の結末までをあえて書かないところが、この後どうなるんだろう…と考えさせられて面白かったし、「そしていま、私は裁きを待っている」という始まりがかっこよかった。
そもそも殺人を依頼した現地民はチャイを飲ませて病気に感染させることも計画の範囲内だったのでは…と思ったり。
Posted by ブクログ
✩4.5
面白そうでずっと読まずに置いてただけある、めっちゃ良かった
私的推しは最初の「夜警」と中盤の「柘榴」
夜警の若者、私もミスを上手いこと隠したいと思っちゃうけど、そこまで考え及ばへん
Posted by ブクログ
ミステリー小説でおすすめとSNSで見て初めて短編集に挑戦
舞台が昭和のが多い。
殺人だけではなく、まさにヒトコワを感じれる内容であった。
短編集はあまり好みではなかった