【感想・ネタバレ】アポロンの嘲笑のレビュー

あらすじ

東日本大震災直後に起きた殺人事件。原発作業員として働いていた被害者と加害者の間に何があったのか? 逮捕された容疑者の加瀬は、殺された男の親友だった。ところが彼は余震の混乱に乗じて逃走。福島県石川警察署の仁科は加瀬を、そして彼の生い立ちを追う。やがて、加瀬がある場所へと向かっていることが判明。彼の目的は何なのか? 浮上する驚愕の事実とは? 怒涛の社会派サスペンス!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

クライマックスはまるでブルース・ウィリスの『アルマゲドン』。
それにつけても純一の身勝手さよ。邦彦に託したものの大きさを思えば、刺されて死んでしまうことのなんと楽なことか。信頼と守るべきものを得た歓びの代償はあまりにも大きく、邦彦の人生の悲惨さにやり切れない思いが募る。

***

改めて放射能の恐ろしさと、そこで命を切り売りしながら働く末端の作業員の実情に震えた。実際、国の基準をきちんとクリアして稼働していても、想定以上の地震や津波によって一瞬のうちに多くの命を脅かす存在となってしまう原発。現在は、3.11以前以上の厳しい基準に則って稼働していると聞くが、南海トラフ地震、首都直下地震など、近い将来発生すると考えられている地震を思えば安心などしていられない。

国のエネルギー基本計画では、廃炉に置き換える形での原子炉新設が認められており、それだけ聞くと、国内の原子炉の総数は減りこそすれ、これ以上増えないように思える。しかし、廃炉に時間がかかるため、敷地内でなら同時進行で新設できる。つまり、結局は危険を孕む原子炉の増設を現在でも認めていることになる。さらに世界的にみても、電力を大量消費するAIブームが、廃炉作業中の原発の再稼働を促しているというから驚く。そんな中で原発に頼らず、となると、世界的な天然資源の値上がり、脱炭素の動きに伴う再生可能エネルギー発電促進賦課金の値上がりで、電気代金の高騰はますます加速する。脱原発で電気料金の負担が日本の3倍以上のドイツのように、エネルギー貧困層が日本でも急増するだろう。

3.11以降、あれほどの惨劇の後で、脱原発は緩やかなりとも進んでいるものと、勝手に思っていた。あれだけのことがあったのだから、あれほど非難の声があったのだから、なんとなく、ちゃんとしてくれるはず。熱しやすく冷めやすい国民性、と言われるものにすっぽり私も収まる。政治家や企業が、のらりくらりの対応でやり過ごすのも、それを承知の上でのこと、と捉えるのは偏見に過ぎるか。

もはや今日の社会を持続させるだけの安全・安定した電力供給とお手ごろな電気料金負担は両立し得ない。何を優先するべきか自ら判断をし、国や企業の動きをしっかりと注視し、声を上げ続けなければならないのだと思う。

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2024年10月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東日本大震災と原発の事故の惨劇の中、発生した殺人事件に焦点を当てた作品。邦彦の逃走劇と仁科が真実を追求していくという流れでストーリーが進んでいく。邦彦が最期まで果敢に立ち向かう姿に驚いた。生命の危機に瀕するシーンが何度も出てくるが何とか乗り越える姿は超人すぎるだろと思ってしまった。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

爆弾云々の件は、フィクションなので、冷静に読めたけど、それ以外の震災の描写、逃走犯の生い立ちは生々しく読んでいて辛かった。
でも、こういった自己犠牲をもってでも為すべきことをやり通すって話には弱いのです。
終盤は込み上げるものがありましたよ。

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2025年01月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

東日本大震災直後に起きた殺人事件。容疑者の加瀬は被害者の家族と親しかった。逮捕後、護送される途中で余震があり、その隙に加瀬が逃亡。何処へ向かったのか ―― 。

阪神淡路大震災時に両親に守られ奇跡的に助かった加瀬でしたが、その後はけして幸せではありませんでした。唯一の肉親の叔父には労働力を搾取され、学校ではいじめで暴力を受けていました。高校を卒業して就職すれば会社が倒産して職を失い…という、何のために助かったのか、助けられたのかと思うような人生だと思います。

被害者の純一もまたついてない男でした。交際していた女性の元彼が性質の良くない男で、純一はつきまとわれ金を巻き上げられ散々でした。そしてお酒を呑んだ時、その男を殺してしまったのです。

加瀬が前科者になった純一を助けて以来家族のように親しくしてきたのに、どうして?

逃亡した加瀬の目的が明らかになりますが、何故彼がその役を負わなければならなかったのか、とてもつらかったです。

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2024年09月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

この作品がフィクションであることを理解しつつ東日本大震災後の政治家や東電の混乱、それによって起きた日本の危機を思い出しながら読み進めた。あれから十数年が経ったが、東京にいながらもあの時の恐怖や混乱は忘れられない。
そのため読み進めていく中でも非常に重たい気持ちになりながら、あの時に同じような事が起きないとも限らなかったのだと改めて国にとって重大な危機であったのだと認識した。

加瀬が人知れず英雄になったことや純一がテロに手を貸してしまった行などややご都合主義な面があった事も否めない。しかし最後に助からないと分かっていても加瀬が幸せになって欲しかった

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2024年08月25日

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