【感想・ネタバレ】塑する思考のレビュー

あらすじ

ニッカ・ピュアモルト、明治おいしい牛乳、ロッテ・キシリトールガム、NHK Eテレ「デザインあ」のデザイナーは、ごく日常と接点を持つデザインを通じて、思い、感じ、考えた――。「分からせたがる」愚と「分からなさの魅力」について。あえてデザインしないのも、みごとなデザインであることについて。そして、デザイン・マインドとは気遣う心そのものであり、英語だ道徳だと騒ぐ前に、デザイン教育こそ、について……。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・元電通のアートディレクター佐藤卓の著書
・「分からない」から全てがはじまる。ニッカウィスキーの自主プレゼン
・柔らかさには2通りあり、弾力性と塑性。外部から力が加わった後のあり方が違う。塑性は粘土のように、力を加えたら戻らない。
・自分の意識がどこから来るのか、その基礎となる自分すら分かっていない中で、自我や自己を固めるよりも、その場に応じて柔軟に変えていく方がよい。
・発想とは、ある目的のために今まで繋がっていなかった事物同士を繋げる試みである。
すでにあるのに気づかずにいた関係を発見して繋ぐ営為とも言える。
・あらゆる仕事の基本は「間に入って繋ぐこと」
・明治牛乳のパッケージ。技術者の牛乳「そのまま」を味わって欲しい想いから「デザインをできるだけしないデザイン」の方向性。
・サーフィン。どれだけ海に通っても、なかなか上達しないが、波に乗り自然と一体になる感覚を味わうだけで充分すぎる。
・サーフィンはあまりに多くのことを教えてくれる。自分の無力さをまざまざと見せつけられ、自分と環境との関係を把握する力も鍛えられる。大きな波が立っている時の海は河のように流れているので、どれだけ自分が知らぬ間に流されているのかを気づかずにいる場合がよくある。ところが岸の景色を冷静に見ていれば、すごいスピードで流されていると気づく。
常に冷静に、できるだけ客観的に自分の置かれている状態を把握していなければ、たちまち危険な状態に至る。

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2023年04月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中盤にあるような、クールミントガムや明治おいしい牛乳、ニッカウヰスキーのデザインを思考プロセスと併せてひも解く部分は読みごたえがあり面白い。佐藤さんのデザインは、一言で言うならオリジナリティの探究だと私は理解した。どうオリジナリティを出すかの研究ではなく、あるものだとして対象を多くの視点から観察することで隠れたオリジナリティを見つけだす探究から、フォルムや表面のアウトプットに繋げていく。今の時代だと良くも悪くも表面的なものに成り下がった引き算のデザインが多いが、真の引き算のデザインはおそらく著者のような思想を持って取り組まれているモノを指すべきだと思う。

反面残念なのは、全編通し細かい部分で思い込みや極度に単純化された知識を元に論理を展開している点が多かったことだ。出典の記載もなく、信頼して読めない印象を持つにいたる。具体的には、進化論の誤用やカロリーベースの自給率で日本はもっと貯水機能を持つべきだ等と批判につなげているところ等で、後者に関してはチェリーピッキングの代表事例のような展開だ。比較対象国との年間降水量の差や、小麦など日本の土壌に適していない穀類がカウントされやすいカロリーベースで自国を批判しつつ重量/金額ベース自給率といった指標には一切触れないのは主観的と言わざるを得ない。また自国の自給率が40%だから単純計算60%他国の貯水機能に頼ってしまっているとし、だから(発言の真意は皆で考えたいとのことだが)自国でもっと貯水機能を持つべきなのだと言うが、これに関してはもはや何から突っ込んでいいのか、話にならないレベルで論理破綻している。

私は何も偏った言動を慎んでほしいとは言うつもりはない。しかし情報の精度に注意を傾けられないのであれば教育に関わらないでいただきたい、と思う。著者の言う未来を考える場を持つためにはまずフラットな視点で一次情報にあたり適切な発信を努めることからすべきではないだろうか。

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2024年09月26日

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