【感想・ネタバレ】京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへのレビュー

あらすじ

京都の大学の散歩サークル「加茂川乱歩」の遠近倫人の周りには、つねに謎が寄ってくる。同じサークルの謎解きが大好きな理系女子・青河幸の気を惹くため、奮闘するも、目の前の謎は手強いものばかり。

※2014年10月2日発売『クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ』を修正・改題のうえ、文庫化したものです。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

気軽に読める連作短編……なんてつもりでいたら、最終章でけっこうな衝撃が

三号館の存在、夢かうつつかあやふやなままでいくのかと思っていたら、こんなにもがっつりと実在側として描くなんて!
ホントにびっくりしました

え、そっち!?そっちの方向で舵を切るの!?
三号館の目くらましのための偽プレハブ棟の存在が推理の根拠として書かれてるし、現実世界での蒼馬さんも登場しちゃうし、えーー!!??って

でもそうなると『ペイルライダーに魅入られて』での面浦先輩との対決で使われたアブサン、麻薬効果で何でも言うことを聞いてしまうという魔法のような特製アブサン、あのシーンの「三号館という場所でならなんでもありかな」と思わせる心理に揺らぎが生まれてしまう……
(現実に軸足を置いた視点で考えてみると、アブサンを飲まされた実感のなかった遠近くんこそが正常で、フラフラで帰っていった面浦先輩は思い込みなどから来る催眠状態にあった的な解釈にスライドすればいいのかな?)

あと青河さんとの関係をぶん投げて終わったのも結構衝撃でした(笑
あそこまで蒼馬さん全開のラストシーンになるなんて

お酒絡みのお話で「蒼馬美希(ソーマ神酒)」ってのは上手いネーミングだななんて思ってたら、作中の人物がそのまま名前解説まで始めてちょっと笑っちゃいました
作者さんも気に入ったネーミングだったんだろうなー

0
2024年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

● 感想
 円居挽らしい作品。京都,それも京大が舞台。京大の新入生が,同じサークルの女性に恋をするという青春モノっぽさと,京大の中に存在する謎のバー三号館での謎解きがメイン。しかし,いずれも設定が練りこまれていない印象。個々の短編の謎は,いわゆる日常の謎系。サークルからの美人新入生の消失,気が付くと隣に青河が座っていたといいう謎から始まり,水族館での二人の消失,青河の転落事件,そして,ミステリ研の放火の話となっている。
 謎解きの真相も,サークル会長の二股で,同じプレゼントを使ったアリバイトリック,周囲にいた人が協力して目印になる人を移動させていたというトリック,水族館の従業員だったというトリック,第1発見者が犯人というトリックとモンティ・ホール問題をテーマとしたちょっとした掛け,そして,プレハブを1つ追加して場所を錯覚させたというトリック。最後のトリックこそ,それなりに面白かったが,ミステリとしてはちょっと小粒。円居挽らしい強引なストーリーは,大人の鑑賞に堪えうるものでもない。個人的には,逆転裁判的なノリのこのめちゃくちゃな筋書きは嫌いではないが…。トータルのデキは,円居挽が好きという点を加点して★3で。

● メモ
● 設定
 主人公は遠近倫人という京都大学の新入生。京都大学の公認で,京都市内を歩き回ることを目的とする「賀茂川乱歩」というサークルに所属している。
 同じサークルの青河幸という女性に恋をしている。
 遠近倫人は,京大のキャンパス内のどこかで営業している「三号館」という「どんな悩みでも解決するというバー」に謎を持ち込むことになる。三号館のマスターは蒼馬美希という女性
● クローバー・リーフをもう一杯
 「賀茂川乱歩」というサークルで人気のあった「灰原」という美人の新入生が姿を消した。遠近倫人は,青河幸と一緒に灰原が四葉のタクシーに乗った場面を見るが,そのまま姿を消し,新歓コンパにも姿を現さない。灰原の連絡先の欄は,空白になっている。灰原はどのようにして,どこに消えたのか?
 遠近は,三号館に迷い込み,クローバーリーフというカクテルを飲む。そして,謎を解く。
 真相は,賀茂川乱歩の会長である大溝が二股を掛けていたというもの。副会長の千宮寺という女性と付き合いながら,灰原と付き合おうとして,四葉のタクシーを利用したトリックを使った。千宮寺と灰原に同じカルティエの時計を送り,サークルにストーカーがいるとして,灰原をサークルから遠ざけた。
 2つのカルティエの時計を使ったアリバイトリックはそれほどのものでもないが,四葉のタクシーの存在等,伏線がきっちりしておりそれなりに楽しめる短編
● ジュリエットには早すぎる
 歌舞練場で,遠近の隣に座っていなかったはずの青河が,気が付いたら隣の席にいた。その謎を解くために,遠近は再び三号館に。真相は,遠近と青河が接近するようにと,千宮寺と東横が仕掛けていた。川床での食事も遠近と青河が二人になるように仕掛けていたが,遠近はそれをよしとしない。その後は東横と千宮寺が付き合うことになる。 
 トリックは,遠近をトイレに行かせて,目印になる人を移動させていたというもの。トリックはチープだが,円居挽らしく伏線はきっちりしている。ミステリというより,青春小説として読むべき作品か。青春小説として読めば,やや青臭いがそれなり
● ブルーラグーンに溺れそう
 水族館で出会った藤ミーナという女性と,その女性にぶつかった男が消えた。
 真相は,藤ミーナには右目の視力がなかったというもの。そのため,小学生がぶつかったことに気付かなかった。藤は,自分の右目の視力がないことを隠すために,ダミーの男性にぶつかったことにし,あり得ない方向に逃げたと嘘の証言をした。藤はイルカショーに出演する人物であり,従業員であることから,専用の通路を利用して隠れたので,いなくなったように見えた。藤は,イルカのトレーナーと一緒にいる姿を東横に見つけられる。
 謎としては極めてチープ。今回は伏線もやや弱い。小説としてもさほど面白くない。イマイチ
● ペイルライダーに魅入られて
 かつて,三号館の常連だったという面浦という男。法学部の4回生。この男が,再び三号館に行くために,青河が倒れるという悪意のある謎を用意する。面浦は,遠近を騙し,一緒に三号館に行き蒼馬にペイルライダーというオリジナルカクテルを注文する。
 相手にいうことを聞かせるというカクテルとモンティ・ホール問題がテーマ。トリックは,ペイルホースというカクテルを1つも作らず,全て,ペイルライダーというカクテルだったという点。全てペイルライダーなので,当然,面浦はペイルライダーを飲む。蒼馬も遠近も飲んでいた。
 トリックありきで後から物語を作ったという印象の作品。小説としてのデキはイマイチ
● 名無しのガフにうってつけの夜
 三号館が火事になり,遠近は放火の容疑者になる。御園生というかつて三号館の常連だった教授が登場。放火の容疑者となった遠近は青河と捜査。ミステリ研で瓶賀という女性に出会う。捜査の結果,トリックに気付く。トリックは,7つあるプレハブが8つに増えていたというもの。犯人は,自分の名前のボトルを盗み出そうとしたが,停電で電気が付かなかったので火を付けた。しかし,その部屋は,となりのミステリ研の部屋だった。夜盲症で携帯を持たない人物。御園生教授が犯人だった。
 三号館のマスターは蒼馬美希の正体は,サークル活動の動向を知ることができた,学生課の職員だった。 

0
2021年06月20日

「小説」ランキング