あらすじ
年間10万件を突破し、今なお児童虐待は増え続けている。困窮の中で孤立した家族が営む、救いのない生活。そこで失われていく幼い命を、なぜ私たちの社会は救うことができないのか? 日本社会の家族規範の変容を追いながら、悲劇を防ぐ手だてを模索する。
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Posted by ブクログ
厚木市のシングルファーザーのネグレクト事件~現代家族の孕む危険性まで
付録として掲載された児童精神科医との対話
「人と関われない不幸を虐待と名付けてバッシングするだけではダメなんですね」
「今は虐待という言葉が一般的になり、一方的に親が悪いというイメージが広がりました。親である以上、子供をしっかりと育てなければという圧力はとても強い。愛情と責任さえあれば、子供は育つという一種の思い込みがあります。うまく育たないと、愛情か責任感が欠けた親だと言って責められる」
社会と繋がれない孤独な親、いろいろ考えさせられる
いつか改めて読み返したい
Posted by ブクログ
「完璧な」子育てを求める社会とその社会規範を内面化した親たち。能力や環境によってそれが不可能になると虐待となってしまう場合がある。
困った人が気軽に助けを求めることができない社会。
支援する制度があってもそれに頼ることを知らない、知っていても頼ろうとはしない社会不信の親たち。
弱さを見せても大丈夫だという信頼をもてる社会にする。
第1章 ルポ 厚木男児遺体放置事件
1 作られた「残酷な父親」像
2 助けを求めることを知らない親たち
第2章 「近代家族」という呪縛
――二つの虐待事件を追って
第3章 国家と家族のあいだで
――「満州女塾」再考
第4章 社会につながれない「ニューカマー」たち
――川崎中1殺害事件の深層にあるもの
第5章 育児は母親だけの義務か?
――母性から降りる、共同体で支援する
付録 誤解される「子どもの精神障害」
――児童精神科医・滝川一廣さんとの対話
終章 家族はどこへ向かうのか
――虐待予防の現在、そして新しい家族の形のために
Posted by ブクログ
多くの児童虐待事件を取材してきたルポライターが、これまでの取材をもとに虐待や暴力、家族、社会のかかわりなど考察。以下、備忘。
・虐待する親も、人並み以上に「良い子育て」をしようと努力した時期がある。
・自らは子ども時代に虐待を受け、あるいは親の精神疾患などで結果的にネグレクトを受け、子育てモデルを持たない。
・困難に直面したとき、人は公的支援を含め環境調整をして乗り越えようとするが、子ども時代から暴力を受け、誰にも助けられず育つと、大人になってからも他者に頼ることができず、我慢、逃避、暴力に。
・将来を見通して行動する力が弱い。
・「満州女塾」の言及も。満州開拓民の花嫁として送られたが、戦局悪化で男性は兵として南下、残された女子供がロシア、中国の暴力と性暴力の標的に。帰国後、国家による堕胎。衝撃。
・川崎の中一殺害主犯は母がフィリピン人。フィリピン女性へのDVと子どもへの教育不足が社会的不適合を生む。(今後の在留資格緩和政策は家族への教育支援充実必要)
・人と関われない不幸を「虐待」と名付けてバッシングするだけではだめ。(滝川一廣医師)
・「新しい社会的養護ビジョン」。親への支援、カウンセリング。