あらすじ
「聖書は信仰をもつ人が読むものだ」。世界一のベストセラーとは聞いても、どこか近寄りがたさを感じてしまう書物『聖書』。本書はその聖書を、広く人びとに開かれた一冊の本として読む案内書である。特定の教派によらず、自主独立で読む。聖書学者である著者が、自身の経験と思索をもとに提案する「わかる読み方」。
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Posted by ブクログ
キリスト教、ユダヤ教、イスラム教などの、中近東の文化に触れていないと、
聖書を読んでも理解できないかもしれない。
日本人の多くが、聖書を読む前に、準備運動として読むと、理解するきっかけが生まれるかもしれない。
子どもの頃から、聖書は読んでいたが、本書は大人になって、聖書を読み直すきっかけになった。
Posted by ブクログ
宗教書というのは、仏典でも聖書でもそうですが、怪しい。って思いませんか?
科学万能の時代ですよ? どうしてもあら捜しの対象となったり、「あり得ない」奇跡の内容に、白けてしまったり、信者ってこれを100%信じているの?みたいに思ったりしませんか?
世界の約3割が信じるというキリスト教にあっても、「聖書の一字一句すべてが神の霊感によって書き表されています」とか言う人を見ると、あ、違う世界の人なんだ、いい人かもしれないけど、まあ分かり合えることはあるまい、とか、自分から扉を閉めたくもなります。
にもかかわらず、やっぱり気になります。
非現実的とか、話の筋に統一感がかけているとか、現代科学と矛盾しているとか。そういう齟齬は信者だってきっと感じているんではないのかな、と。実際の信者はどうやって聖典と現実を調停しているのか。
そうした疑問に答えてくれるのが本書。
そのものズバリのタイトルですが、どうやって聖書を読むか、という話です。
現実的な感覚でおかしい、あり得ない、的な部分をじっくり受け止めて答えを出してくれる本です。
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構成は結構シンプルです。
第一章で、学生から集めたという聖書の分からなさ、不明点、読みづらいところを紹介し、聖書学者として解説しています。
第二章では、言わば聖書の解釈学ですが、どのように『読む』べきかを解説しており、これが非常に役に立ちました。セクションの見出しを紹介しますと、
1.キリスト教という電車
2.目次を無視して文章ごとに読む
3.異質なものを尊重し、その「心」を読む
4.当事者の労苦と経験に肉薄する
5.即答を求めない。真の経験は遅れてやってくる
とあります。
なかでも、1.にあった「基本文法」説は面白かった。これは新約の話なのですが、神の先在からキリストの受肉、・・・再臨・終末、とキリスト教のストーリの「流れ」を12に区分し、各福音書や文章がその一部を強調していたり、細部が異なる同類のストーリがやはり「基本文法」に沿っていることで、読者が統一感を感じられるというもの。
また4.も興味深かったです。これは言わば聖書の「行間を読む」ということを勧めているのかもしれません。聖書とは弟子たちの残した言行録であり、その直弟子たちの個別の経験と反省、あるいは歴史的背景があって書かれています。あるいはその筆者のバックグラウンドがあって書かれているとするものです。いつ頃書かれたのかとか、真の筆者の生きた時代などを大まかに特定することで聖書の記述の意味合いを浮き彫りにします。
そして最後の5も含蓄があり良かった。聖書の読みづらいところ、これを「躓き」ととらえ、そここそが読者にとって問題があるところ、という理解です。とくに新約は一般的な道徳倫理的な話も多いわけですが、個人的にいまいち納得しかねるところもあろうかと思います。そうした倫理がイエスによって叫ばれた理由・時代背景などを考えてみることは、新たな自己認識につながると思います。
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そのほか、第三章で、外伝を含め、まとまりごとに概要をサマってくださっています。
この章は聖書そのものに格闘するときにきっと役に立つはずだと思います。
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ということで聖書の読み方、という本でした。
聖書そのものに挑む前、挑んでいるとき、挑んだ後の再読、どのタイミングでも役に立つ書籍だと思います。
私も来月くらい、本書を頼りに、聖書そのものに挑んてみたいと思います。