あらすじ
そのめざましい活躍から、1980年代には推理小説界に「新本格ブーム」までを招来した名探偵・屋敷啓次郎。行く先々で事件に遭遇するものの、ほぼ十割の解決率を誇っていた――。しかし時は無情にもすぎて現代、60代となったかつてのヒーローはある事件で傷を負い、ひっそりと暮らしている。そんな屋敷のもとを、元相棒が訪ねてきた。資産家一家に届いた脅迫状の謎をめぐり、探偵業の傍らタレントとしても活躍している蜜柑花子と対決しようとの誘いだった。人里離れた別荘で巻き起こる密室殺人、さらにその後の屋敷の姿を迫真の筆致で描いた長編ミステリ。第23回鮎川哲也賞受賞作。/解説=村上貴史
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Posted by ブクログ
新しい、本格ミステリー。探偵を俯瞰的に見ると、行く先々で起こる事件に突っ込み入れたくなるけど、その背景や家庭事情や悩み含めて人間らしい懊悩がいい。新旧探偵の共演も面白い。
ロジック立てる段では、なるほど納得そうなのか!という美しい論展開ではない。話の魅力をキャラクターに振った結果か?
余談だが、p240ページからポケモンユナイトのBGMとともに読んだが、神がかり的なコラボに視覚と聴覚と思考力の臨場感高い。
Posted by ブクログ
ミステリを読んで、名探偵の孤独というようなものを感じることはあまりない。何故ならば、大体において、名探偵という人種は、一般人に比し突き抜けた思考回路を持っており、そんなことは意に介さないように振る舞うから。
でも、一人苦悩する探偵が少なからずいるのも確かだが、それが自分に課せられた役割と割り切り、前へと進む。
しかし、その存在そのものが犯罪を誘発しているなどという誹謗中傷を名探偵が受ける作品は目にしたことがない。それはあまりにもひどい妄言であるが、それは名探偵に対する痛烈なアンチテーゼでもある。
往年の名探偵・屋敷啓次郎はそのような誹謗中傷を受けてきた。そして、次世代の名探偵・蜜柑花子は、啓次郎を敬愛し、彼に私淑する。この対照的な二人の探偵が事件解決を競い合うのかと思いきや、然にあらず。
名探偵が直面する栄光と挫折、そしてリスク。その厳しいまでの現実と、その壮絶な生き様がかつてない探偵像を示す作品。
これまでミステリを読んで感じたことのない感情を覚える。そういう意味では私にとっての新たな地平線が開けたような気がする。
探偵の安息の地はどこにあるのだろうか?事件が解決しても心休まらない悲しい存在のように思えてきた。
いずれにしても、啓次郎から花子へと、確かにバトンが手渡された。名探偵の矜持とともに。
Posted by ブクログ
過去の名探偵とその相棒並びに現代の名探偵がそれぞれの思惑の中で挑む事件。その真相が最後に明かされた時には驚かされました。
最後に七瀬が父親に伝えたかったことは何だったんでしょうね。